A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第60話(最終話)


ドラゴンスクリューで背中から地面に叩きつけられたアンリの右足を持ち上げ、うつ伏せにひっくり返しながら

右足を左腕で抱え込みつつぐいっと力を込める。

「ぐぬううう!?」

「まだやりますか?」

力を段々強くして行くレナードだが、アンリは左手で掴んでいるハルバードの柄の上でスルスルと手を滑らせて短く持ち、

レナードが居る場所を感覚だけで狙って思いっ切り後ろに突き上げる。

「ぐぇ!?」

ハルバードの柄がレナードの胸にヒット。

柄は丸いので刺さらなかったが、それでも金属の部分がドスっと衝撃がある程ぶつかって来たので思わずレナードは

アンリの足を抱え込んでいた腕から力が抜けてしまう。


勿論その隙をアンリが見逃す筈も無く、素早くゴロゴロと転がりながら身体の向きを変えつつハルバードを振るってレナードの足を払った。

「うあ!」

今度は逆にレナードが地面に倒れ込んでしまう。

アンリはそんなレナードを見つつ立ち上がり、ハルバードをレナードに向かって突き出すがレナードは足でハルバードを

蹴りつけて軌道を逸らす。

「っ!?」

ハルバードの長さに身体ごと引っ張られたアンリが若干ぐらついた所で、レナードは起き上がって素早く地面を蹴ってジャンプ。

そこから身体を空中で傾け、アンリの顔面に全力のドロップキック。

「ぐほっ!?」

幾ら身体が大きなアンリでも、頭は急所の集合体。そこにドロップキックは尋常では無い衝撃になる。


ハルバードを落としてしまいたたらを踏むアンリに対して、レナードは再び起き上がって接近。

彼の肩に手を置いて全力で自分の身体を引き上げる。

そのまま肩の上に乗ってそこから身体を半回転させ、左足を首に巻きつける形で首から地面へと引きずり倒し、

最後に掴んだままの右腕の関節を腕ひしぎ十字固めで締め上げる。

「い、ぐ、ぬぐあああああああっ!!」

「まだやりますか? 話を聞きますか?」

「わ、分かった聞く……もう良い、俺の負けだ! 聞く、話を聞くから!!」

バンバンと床をタップしたので、もう大丈夫かと思いつつ固め技を解除。

この瞬間、あの時の手合わせのリベンジが達成されたのであった。


「そう言えば、あんたは魔術が使えないんだったな」

「そうです。私は魔力を持っていない異世界の人間ですから」

壁画の前で息を整えながら、レナードとアンリは話し込む。

アンリが言うには、あの賊の男が無傷で気絶させられる魔術を兵士達に掛けて警備を突破。

『城から脱出する時に魔術を使ってくれて助かったよレナード』との一言でレナードに罪を被せて逃げようとしたらしいが、

その一言が逆にレナードの冤罪を晴らす切っ掛けになったのであった。

レナードはこの時点で気がついていたが、ハルバードを構えていたアンリは頭に血が上って気づかないままレナードに向かって来たと言う訳だった。

改めてレナードが魔術が使えない事を思い出し、やはりあの男が犯人でありレナードに罪をかぶせて逃げたと知るアンリ。

「すまん、俺が冷静になり切れなかったばかりにあの男を逃がしてしまった。しかしあの男が一体何処に逃げたのか……

これは魔術師達に頼まなければならないな」


レナードと共に遺跡から出て城に戻ったアンリは、城の騎士団員達と魔術師達に調査チームを結成させて遺跡の調査を頼んだ。

今まで入る事が出来なかった遺跡の封印を解除したと言う事で、レナードは勝手な行動をした事を責められたのもあるが

最終的には相殺と言う形で不問になった。

そして2日後、転移魔術の痕跡から男がエスヴァリークに逃げた事を知る。

「エスヴァリーク……ここから1番離れている帝国だな」

「かなり大きな国らしいですね。これではあの男を捜すのにも非常に時間が掛かりそうです」

城で身支度を整え、レナードとアンリはエスヴァリーク帝国への出発準備を終わらせていた。

この準備をする前に、疑って攻撃を仕掛けてしまったお詫びとしてアンリが地下の文献を見せてくれたのであるが、

そこでも実を言えば大した情報がレナードにはもたらされなかったのである。

やはり、自分の求めているこれ以上の情報は自分で探して自分の目で確かめてみるしか無いのだろう。


更に、レナードがこの先どう言った行動をするのかが気になるリーフォセリア王国ではその気になる気持ちを抑えきれない

人物代表としてアンリが選出される。

レナードが王国に対して害をなす行動をしない様にと、アンリを同行者にして見張らせる事に王国は決定したのだ。

レナードの方はアンリが着いて来てくれる事で幾らかの不安は消える。

この世界の事をまだリーフォセリアの、それも一部分しか知らない自分にとってアンリはこの世界の人間だから頼りになる

存在である事は間違い無いのである。

「それでは、行きましょう」

「ああ、行くか」

2人はエスヴァリークに向かう為に、ワイバーンの背中に乗って大空に飛び立った。


自分が無事に地球に帰る事が出来る様に。

レナードは自分の未来を決める第1歩を今、踏み出したのだ。


A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage 


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