A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第51話
「そう言えば、不思議な事と言えば前にこんな事が無かったか? 俺のこの魔道具をあんたが
腕にはめようとした瞬間に、変な音と光が出た記憶が俺にはあるんだが」
アンリが思い出したその出来事に、レナードの顔つきも若干変わった。
「……ああ、そう言えばありましたね。魔道具……と言う事は、魔力が私の身体の中に無い事が
その奇妙な音と光が出現した事に何か関係があるのでしょうか?」
「俺に聞かれても困るが……でも、その可能性は否定出来ないかもしれないな。魔術が今あんたに
何も効果が無かったのと同じ様に、魔道具が装着できないのも魔力の有り無しが影響あるのかも」
今考えた所で、この場に居る全員がすぐに結論を出せる問題では無さそうである。
魔術が使えないどころかその存在をレナードが認識する事すら出来ないと分かった以上は、
もうこれ以上魔術に関して追求する必要も無くなった様だ。
「仕方ありませんね。城下町に行く前に、少しだけ身体を動かしても良いですか?」
「ああ、朝の運動なら少しだけ良いぞ」
時間は別にあるから大丈夫だと許可を出したアンリだったが、ふとレナードの運動で見てみたい事があったのを思い出す。
「そうだ、プロレスでも武器を使うんだろう?」
「えっ、まぁ確かに多少は使用しますけど……」
「だったらせっかくだから、あんたの武器の扱い方を見せて貰いたいな」
「私の武器の扱い方を……ですか?」
正直に言うと、レナードは武器術そのものを習った事は1度も無い。
武器術を習った事は無い、と前置きした上でそれでも良いならとアンリに提案してみた所、それでも良いとの
事だったので武器を幾つか持って来て貰う。
用意されたのは一般的なロングソード、ロングスピア、短いバトルアックス、ロングボウ、魔術師用のステッキ、そして……。
「あ、あれっ? これは……銃ですか?」
黒光りするシルエット。リボルバーなのかオートマチックなのか区別が微妙なフォルムをしているのだが、地球に居た時から
職業柄見覚えがあり過ぎる位の「それ」は間違い無くハンドガンであったのだ。
「ああ、そうだが。前に色々と種類の説明を文献の話と一緒にしたよな? それだよ」
「以前おっしゃっていたあの話ですね」
古代の兵器と言う事で復元に成功し、今はこうして実用化しているこの世界での銃。
それが目の前にあると言う事で、無意識の内に少しだけレナードのテンションもアップして来ている。
まるで、今だけ地球に戻って来た様な気持ちを感じさせてくれたからであった。
そんな気分になっていたレナードに、それじゃあさっそくとばかりにアンリが声をかける。
「銃に限らずどれでも良い。色々使って見せてくれないか」
「分かりました。それではせっかくなのでまずはこの銃から……」
内心では少しワクワクしながら、レナードは目の前の地面に並べられている銃を手に取った……その瞬間!!
「ぬあっ!?」
「ぐぅ!!」
また、起きた。
またあの時と同じく、それも何の前触れも無くいきなりレナードに襲い掛かって来た、奇妙な音と光とそして痛み。
その場に居る全員が絶句してしまう程の強烈なインパクトを残し、レナードの手から零れ落ちたその銃はガシャンと
音を立てて土の地面に転がった。
「な、何をした!?」
「い、いえ私は何も! 何もしていません!!」
「嘘をつくな! 何もしないで、そんな事が起こる訳が無いだろう!?」
「本当なんです! 本当に私は何もしていません!」
突然の出来事に魔術師達だけでは無く、冷静な筈のレナードまでパニック状態になりながら激しく口論を繰り広げる。
だが、そこに割って入ったのは驚きながらも少し離れた場所で今の状況を見ていたアンリだった。
「待てお前達。俺はこの男が言っている事が嘘では無いと言う証人になるぞ」
「アンリ師団長まで……何をおっしゃるのです!?」
「前に俺、同じ現象を見た事があるんだ。この魔道具でな」
食ってかかる魔術師の1人に向かって、アンリは手首の魔道具を見せつつ自分の過去の体験を話す。
「魔道具が……!?」
「そうだ。信じられないと言うのであれば、悪いけどもう1度試してみてくれないか」
「は、はい……」
結構なショックがあるから余りやりたくないんだけど……と思いつつも、疑惑を晴らす為には口で説明するよりも実際に
見せた方が納得してくれると思って、レナードは再びあの時と同じくアンリから受け取った魔道具のリングを腕にはめてみる。
そしてその瞬間、レナードとアンリにとっては3回目となる超常現象が襲い掛かった。
「うぐああっ!!」
「ほ、本当だ……」
「これで証明出来ましたね。もうよろしいですか?」
だが、今度はアンリからこんな疑問が口をついて出た。
「なぁ、今の現象が起きたのは今の所は銃だけだよな?」
「そうです。ま、まさか……!?」
物凄く嫌な予感がしたレナードのそのセリフの先は、アンリが先に言ってしまう事になった。
「そのまさかだ。他の武器も試してみてくれないか」
「そ、そんな……!!」
「もしかすると、1つ位使える武器が見つかるかもしれないだろう?」
「う……」
何だか上手く丸め込まれた様な気がするレナードだったが、もうこうなったらとことんやってやると決心して地面に並ぶ残りの武器を見つめた。
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