A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第41話
「では次の質問です。今しがたさせて頂いた質問と少し内容が重複するのですが、
その賊に逃げられてしまったとおっしゃってましたね?」
「ああ、確かに逃げられた」
確認の意味でそう尋ねるレナードに、ぼやいた騎士団員が頷く。
それを見て、こんな質問をレナードは投げ掛けた。
「では、その賊が逃げた方向はお分かりになりますか?」
「方向……」
まあ分からなくも無いけど、と言う感じでぼやいた騎士団員がその時の事を自分の記憶から引っ張り出す。
「確かあの時は……その賊はそれこそ町のあちこちを逃げ回っていた筈だからな。何しろとてもすばしっこくて、
さっきも言った気がするけど騎士団員の多さと町の広さを逆に利用して目立たない様に行動してたって話も
あったけど……最終的にどっちに逃げたかまでは……」
どうも肝心の最後の部分が思い出し切れない様で、うーんと腕を組みつつ騎士団員は首をひねる。
だが、その横から女の騎士団員がこの話題に口を挟んで来た。
「ねえねえ、確かその賊って私達と同じ格好に変装してたって聞いた記憶があるわよ、私は」
「ああ……そう言えばそうだったね」
残りの穏やかそうな騎士団員もその女の騎士団員の記憶に同調する。
「変装……と言うのは、あらかじめこの町から逃げ出す目的でと言う事ですかね?」
レナードの推測に女は首を横に振る。
「さすがにそこまでは私も分からないわ。でも、変装してたってのが分かったのは騎士団員の1人が確か
あれは……あれ、ほらええと……何処だったかしら、気絶させられていた所」
「東の区画でやられてたって話を僕は聞いた覚えがあるよ」
穏やかそうな騎士団員が、女の騎士団員の記憶に補足情報を与える。
「ああそうそう、彼の言う通り、東の区画で騎士団員の1人が気絶させられて服と装備を奪われていてね。
その装備と服はカルヴィスの東の出口のそばで見つかったって話よ」
「ふうむ……」
3人の騎士団員から聞いた話を纏めてみると、だんだんとレナードの頭の中でどの方向に賊が逃げたのか、
そしてそれだけでは無くてどうやって逃げたのかと言う事まで推測がつけられる。
「3人の話を総合しますと、その賊が城から逃げ出してカルヴィスの町を脱出するまでの足取りは大体掴めるかと。
賊は城から逃げ出した後、貴方達と同じ格好……に変装したと言う事で宜しいですか?」
「ああそうだ。騎士団の制服も装備も、アンリみたいな上層部の人間で無い限り灰色の上下の制服に
銀色の胸当てと肩当てと、それから下半身にも銀色のグリーブってちゃんと一律で決まってんだよ」
ぼやいた騎士団員から装備の確認も取れて、更にレナードは確信を深めた。
「となれば、その騎士団の装備一式を気絶した騎士団員から奪い取って変装したと考えてほぼ間違いは
無さそうですね。そして騎士団員達は賊を探して町中を探し回っていた筈ですから、騎士団員の格好をして町を巡回する
振りをし、そして東の出入り口から外に出る。これで疑いの目を向けられる事無く安全に脱出が可能でしょう」
「そうね。その予想と同じ推測で騎士団としても結論が出ているわ」
だが、その女の騎士団員のセリフを聞いた後にレナードはもう1つ予想をプラスする。
「では、私からもう1つの推測がございます」
「あら、何かしら?」
「先程賊が変装した理由の推測を私がした時に、貴女は「賊がカルヴィスの町を脱出をする為に変装したのかと
言う所までは私達には分からない」とおっしゃっていましたね」
「ええ、確かにしたわね」
「では、その気絶させられて装備を持ち去られていた騎士団員が発見されたのは城の侵入があった前、もしくは後の何時の話ですか?」
新しいクエスチョンが出て来たが、これも騎士団の方で調査が済んでいるらしい。
「見つかったのは賊が逃げおおせた後だって聞いたわね。でも、それがどうかしたの?」
逆にそう聞かれ、レナードは自分のもう1つの推測を3人の騎士団員に披露する。
「城に侵入出来た理由なんですけど、もし私がその賊の立場であったとしたら事前に騎士団の装備を奪った上で城に侵入します。
騎士団員なら部外者の格好では無いですし、城に向かう理由は幾らでも作る事が出来ると思います。
そして夜になるのを待ち、騎士団員の格好をして城に侵入して地下へ向かいます」
そのレナードの予想に対して、ぼやいた騎士団員からこんな報告が。
「あー、上の方からはこんな事も言われてたっけ。俺達みたいな町の騎士団員は城に入る事は出来るんだ。
でも、地下の機密情報が保管してある場所にはアンリみたいに上のクラスの人間じゃないと入る事は許可されていない。
それでも、そこの見張りを殺す……までは行かなかったらしいけどかなりの重傷を負わせて地下に侵入した騎士団員が
居たんだと。で、それがその変装した賊だったらしい」
「つまり、賊としてもそのやり方で城に侵入したと言う事ですね」
「そう言う事になるな。俺達でも考え付きそうな事だけど、今までそうやって城に乗り込んで来た奴は見た事が無かったから驚いたぜ」
レナードのセリフにぼやいた騎士団員も首を縦に振り、話は最後の質問へと移って行く。
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