A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第40話
「こうして、王城に忍び込んだ賊を取り逃がしてしまった責任をアンリは取らされる事になってしまったんだ」
何処か遠い目をしながら、最初にぼやいた騎士団員がそうアンリの過去を暴露し終えた。
でも、レナードはレナードでその話を聞いて気になった点が幾つもある。
「……今のお話をお伺いしまして、少し気になった点があるのですが質問させていただいても宜しいですか?」
「ん? ああ、俺達で答えられる範囲があれば答えるけど、何が気になったんだ?」
色々と今の話の中で補足して貰わない事には、この先の旅路でレナードが困るかも知れないと自分で
考えた上での質問を3つして行く。
「それでは質問させて頂きます。まず1つ目ですが、その王城に忍び込んだと言われている賊の目的は
何だったのでしょうか? 族が王城に忍び込む位であれば、それなりの目的がある筈ですよね」
「目的に関しては俺達も何も聞いていない。と言うかそもそも捕まってすらいないから、何が目的だったのかまでは
分からないな。ただ……王城の地下のドアをこじ開けた形跡があったと聞いている」
「地下?」
地下に一体何があったんですかと言うのはレナードの最もたる疑問になった。
「地下には王国の所有している多数の機密事項があるらしい。ってか、俺等も詳しくは知らない」
「機密事項……ですか?」
「ああ。その機密事項って言うのは王国騎士団でもそれこそ師団長のアンリとかの上層部の人間でも無い限り
知りえない情報だよ。俺等は騎士学校でアンリと個人的に付き合いがあったんだけど、今はこうして勤務する場所が
違うから俺等は機密情報については何も知らないと言う事だけは言っておくぜ」
この時点で、ある程度レナードにはその賊の目的がイメージ出来る。
「その賊、もしかしたら地下の機密情報を狙っていた可能性もありますね」
それに対して口を挟んで来たのは女の騎士団員だ。
「可能性では無いわ。事実よ。その時、総騎士団長から直々に私達の様な城下町の団員全員集めて、王城の
バルコニーから何があったかを説明したのよ。だから私達も城の地下に何があるかって事は聞いているけど、
その実態までは知らないわ」
レナードはその女の騎士団員の説明を聞いて頷いて納得の表情を見せる。
「ああ、成る程。つまり、地下に機密情報が保管されているって所までしかこちらには伝達されていないって事ですね」
「そうよ。だから機密情報の中身とか、その量とか、地下のどの場所にあるどんな部屋に保管されているのかと
言う所までは私達は何も知らない。だけど、賊はそれを狙ったって話を騎士団長から私達は聞いているわ」
「そうなりますと……仮にその賊の狙いが地下に保管されている国家の機密情報だったとして、賊にとっては
その機密情報が必要って事だったと」
「僕等も最初にその話を聞かされた時はそう思ったさ。でも、結局賊を取り逃がしてしまった訳だし、
賊の考えている事は今も分からず仕舞いだよ」
確かに、人間の考える事なんて分かる訳が無いのはレナードも当たり前の事だと思っている。
自分達がこうして賊の行動理由をイメージしていたとしても、実際の賊本人からしてみればまた違った理由で
王城に侵入したのかもしれない。
とは言うものの、レナードは今は形だけでも王国騎士団で働いている身分なので実際にその賊に出会ってしまったら
敵対関係になる事に変わりは無さそうであるとも思う。
「勿論、王国側としてもそう言った賊が王城に侵入出来ない様に警備体制を強化しているわね。
王城に侵入されてしまったってだけでも警備体制の穴がありましたって言っているようなものだし、実際の話ではこの話を
聞きつけた傭兵達が国外に色々と情報を流しているらしいって噂もあるからね」
「ふむ……」
いずれにしても、この問題が王国内では尾を引いていると言うのはレナードには理解出来た。
そして国外に情報を流している者達が居るとなれば、その賊と同じ様に王城への侵入を企む輩が国外からやって来るかも
知れないとも結論付ける事が出来る。
何故なら、ここはレナードの居た世界である地球とはまるで違う世界だからだ。
科学テクノロジーが古代に存在していた様な節をアンリは匂わせていたが、それはあくまで古代の話。
今のこの世界の現代では、自分の目でレナードが見て来た通り魔法が当たり前に使われている世界である。
魔法は当然地球には存在しない。
そうなると色々と地球とはまた常識が違って来るのも容易にイメージ出来るので、まだまだ自分が知らない常識が
この世界には沢山ある筈だと睨むレナード。
(何処で何が起こって、そして何時私の身に降りかかってもおかしくない世界だ)
地球の常識は地球の常識。
この世界の常識はこの世界の常識。
気を引き締めなければ、この世界の常識に自分が対応し切れずに命を落としてしまう事も考えられる。
それだけは何としても避けたいと思っているレナードは、一旦思考を切り替えて次の質問を騎士団員達にするのだった。
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