A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第38話
長い時間を費やし、王都カルヴィスで国王陛下との謁見も済ませて王城の部屋の1つを
割り当てられたレナードには制限が出来た。
まずは王都から出ないと言う事。
王都の中であれば何処に向かっても良いが、その時にはきちんと報告をして護衛の者をつける事。
地球と言う世界の事について質問があった場合には必ず答える事。
この様にして条件を付けられたのだが、要するには「王都から出ない様にすれば良い」のが
大きな条件であるとレナードは解釈した。
この点に関して言えば、最初のアルジェルの町でアンリから言われた時の条件とかなり似ているので
さほどレナードは苦労しないと考えていた。
だが、快適な生活をする為にはそれなりの対価が付きまとうのもまた事実。
レナードの場合は王城に部屋を用意する代わりに、騎士団の雑用係として働くのが条件であった。
部屋で着替えを用意して貰ってそれに着替えていたレナードの元にこれ等の条件を伝えに来たアンリ曰く、
その雑用の合間合間に王都で情報収集をする事も出来るらしい。
「雑用は色々だ。騎士団の宿舎の掃除もあるし、足りない備品の調達の手伝いをして貰う事もあるし、
城下町で騎士団から騎士団の詰め所間で配達をして貰う事もある」
後方支援部隊の一員である軍人として、レナードはその条件を別に拒む必要も無かったので承諾。
こうして地球に帰る為の情報収集をやっと王都カルヴィスで出来る体制が整ったので、次の日から
早速雑用をこなしつつレナードは行動を開始した。
裏方の仕事については地球で生業としていただけあって、数日もすれば何と無くではあるもののレナードは
コツを掴んで動ける様になって来た。
だが、まだ地球に関しての情報を得られる様にはなっていない。
コツを掴んで来たとは言ってもまだ始めて数日の人間。最初から上手く働ける人間なんて経験者でもない限り無理である。
幾ら生業としていたレナードでもこの世界での仕事やカルヴィスの城下町の地理に慣れていない分、
意外と時間が掛かるミッションも多いので1日中動き回ればクタクタだからだ。
(私も歳かな…)
少し前までこの程度の仕事量なら平気だったのに、やはり年齢の増加に人間は勝てないと言う事だろうかとレナードは思った。
(いや、まだ私の身体も頭もこの世界に順応出来ていないからに違いない)
そんな筈は無いと思い直したレナードは、次の日も頼まれた仕事の1つである詰め所から詰め所への配達ミッションを
請け負ってカルヴィスの町を歩いていた。
アンリが言っていた様にこのカルヴィスの城下町は余りにも広い。
到底1日2日じゃあ回り切れる町の広さでは無い。本気で1か月位の時間が無ければ全ての町の構造を把握出来ないだろうと考える。
(アンリさんは前、王城で働いてたとおっしゃってたな? それに確か、この王都カルヴィスの生まれだとも聞いた覚えがある。
アンリさんも私がこの王都に慣れるまではしばらく一緒に滞在するって話だったから、今度はアンリさんと一緒に色々な
場所を案内して貰えれば良いんだが……)
元々アンリはカルヴィスが地元の人間なので、地元の事はやはり地元の人間が1番良く知っている筈だと見当をつけた頃に
レナードはミッションのゴール地点である詰め所の1つに辿り着いた。
「へぇ、君が王城で噂になっている魔力の無い人間か。上司から色々と話は聞いているよ」
「はるばる違う世界から来たんだって? それは良く来たもんだね」
「リーフォセリアの生活にはもう慣れたかしら?」
男女問わず、詰め所に居た騎士団員達がレナードに話し掛けて来る。
色々な詰め所を回っており、中でもここの詰め所は王城から遠い場所に位置している為か地理を頭に入れると言う目的も一緒に
達成する為に届け物を頼まれる事があった。
今回話しかけて来たのはどうやら今までに出会った事の無い騎士団員達ばかりの様である。
「それなりには慣れました。でも、この城下町はかなり広いのでまだまだ道が分からないですね」
「そりゃそうだろうな。余所から来た旅行者とかの道案内とかも俺達は良くやるんだぜ」
このカルヴィスの城下町で道に迷ってしまうのは良くある話らしいので、特に騎士団員達も問題にはしていない様である。
「今日は……ああ、これとこれか。後これ……は向こうの方に置いといてくれ」
「はい」
荷物の中身を確認して、指示された場所においてから受け取りのサインを貰って配達ミッションは終わりだ。
もう少しこの町の地理をや与えられる様々な仕事を覚えたら、その時からしっかりと情報収集に励もうと思うレナードは
以前アンリに買ってもらった紙と羽根ペンを使ってオリジナルの町の情報一覧を作っていた。
当然王城で渡されたこの町のマップもあるので今はそれを見ながら歩いているのだが、自分が気になったショップ等は
自分の手で紙に書き込んで行くのが大事だと言う考えからだ。
だが、今の今までアンリの事を考えていた事がこの出来事を呼び寄せる切っ掛けになったのかもしれない。
その詰め所において、レナードはアンリの過去を知る事になるのだった。
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