A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第13話


「どちらかと言うとあんたは理論から入る頭脳派って感じか。まぁそれは良いとして、その仮定がもし正しいものだと

したら1度調べてみる必要がありそうだな」

「そうですね。私もこんな現象が起こると言うのをこのままにしておくのは引っかかりますから」

静電気を少し強くした様な感じのショックを受けた出来事だったが、この先あの現象が何処でどの様な条件の下で

起こるかが分からない以上、迂闊にこの世界で作られた装備品に手を出す事は出来ないなとレナードは肝に銘じた。

(他にも私が触る事の出来ない装備品がある可能性は高いな。用心しなければ……)

このリングに限らず、また別の何かが装備出来ない可能性だってある訳なのでレナードは警戒しようと心に決める。

そんなレナードに、リングを腕にはめ直したアンリが違う形で提案をして来た。

「魔道具の効果を確かめて貰う事が出来なかったのは残念だ。しかし、体術の演武なら可能だろう?」

「そうですね。それではそちらに参りましょうか」


実際の所、魔道具と言う物がどんな物であるかはレナードも興味があったがこの謎の現象が起こる限りは諦めるしか無い。

だったらやれるだけの事をやるしか無い訳なのだが、プロレス技の演武を見せると言っても具体的にどうすれば良いのだろうか。

「ええと、アンリさんに技をかけるのが宜しいでしょうか?」

「そうだな。実際にかけてみてくれ。そうでなければどれだけの凄さなのかが分からない」

とは言うものの、この場所ではかなりかけられる技が限定される。

元々プロレスはダイナミックな技が多い事で知られた格闘技であり、そのダイナミックな技を活かして観客を楽しませる為の

エンターテインメントの要素が凄く強い。

今のインターネットが発達した時代においては、テレビ放映もあいまってプロレスの試合が行われない国でも楽しまれるものだ。

レナードの住んでいるヨーロッパでは「キャッチ」、メキシコでは「ルチャリブレ」と呼ばれておりレナードは本場のメキシコで

少しだけだが修行をしていた事もあり、たまにプロレスの事をルチャリブレと呼ぶ。

事実、自分を「プロレス、ルチャリブレ使い」とダブって言う事もあるがその辺りについては周りは特に気にしていない。


そんなプロレスは格闘技でもあるが、エンターテインメントとして観客を楽しませるビジネスの一環として勝敗は最初から

決まっている事の方が多いのだ。

興行会社が試合やその他のどんなレスラーがどんな戦いをするのか、それからどんな戦いが見られるのかを楽しみにしたりと言う

エンターテインメントで興行会社……プロレスの世界では団体と呼ばれているチームがイベントとして開催する事でチケット代等の

収入を得るビジネスである。

格闘技の一種である以上勝ち負けは存在する。

だけどそれ以上に観客を楽しませる事を第一に考えている団体も多く、それこそ世界的に有名なアメリカのワールドレスリング

エンターテインメント、通称WWEでは台本がある事を公言している。


勿論、これにはしっかりした理由があっての事。

ステロイドの様な筋肉増強剤を始めとする薬物が問題にされているプロスポーツの世界では、長年の非常に根深いトラブルとなっている。

その根深さもそうなのだが、他にもスポーツよりエンターテインメントで登録してしまえばその分の保険料が安く済む。

結果としてコスト削減に繋がるのもあるし、業務内容を株式上場する時に公開しなければならないと言う義務がある為

「エンターテインメント」として内容を分かりやすく説明出来る様にしたのだ。

プロである以上チケット代やグッズ販売等でレスラーや団体は収入を得なければならないのだが、アマチュアレスリングの世界では

収入を得ていない団体も勿論存在している。

学生のプロレスが最も有名な例であり、例えば地域活性のイベントの1つとして開催されたりその他にも様々なイベントで

アマチュアプロレスが開催される。

アマチュアの団体でも観戦料を支払わなければ観戦出来ないものもあるが、本場のメキシコ以外ではライセンスの制度が無いので

観戦料を支払うか否か以外でアマチュアとプロの団体を見分けるのは難しい。


プロレスの世界ではアンリの様な大柄な選手が多いが、女性のプロレスや低身長症の人間だけで行われるプロレスも存在している。

女性のプロレスは「女子プロレス」、低身長症の人間オンリーで行われるプロレスは「ミゼットプロレス」と呼ばれているが、

女子プロレスが単独で開催されるのと違ってミゼットプロレスは単独での開催がされない。

試合が無い時には小型の着ぐるみのスーツアクター等の仕事がある事からも分かる通り、低身長の身体から繰り出される

素早くトリッキーな動きや体重の軽さを利用した高いジャンプ力等で観客の目を引きつける事が出来る。

そして本場のメキシコでは本家のレスラーがやっているキャラクターを模したキャラクターも存在しているが、その本家のレスラーすら

凌ぐ人気や知名度を誇っているミゼットプロレスラーも存在するのだ。


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