A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第11話


「我が国でもその魔力を持たない人間の情報は噂されていたが、どちらかと言えば信じない人間が多かった。

何しろ、ソルイール帝国からまるで魔法の様に消え去ってしまったと言われていたからな」

何処か懐かしむ様な口調で、アンリはスーっと再び羽根ペンを動かして1つの場所で止めた。

「ええと……確かここだったな。その魔力を持たない人間が消え去ってしまったと言われている場所は」

「ここには何があるんですか?」

「ん……正確に言えばあった、だな」

「あった?」

神妙な顔つきになったアンリが頷く。

「ああ。ここにはソルイール帝国の騎士団長が秘密裏に開発していた新型兵器があったらしい。

だが、その兵器の開発は騎士団長が死亡してしまった事で頓挫していると言う話だ」


過去の話ではあるが、話を聞いている限りではそこまで昔の話では無いみたいだ。

となると、その魔力を持たない人間は兵器開発を阻止して自分の役目を果たして自分の世界に戻ったのでは

無いかとレナードは推測した。

「他にも私と同じ様な人間が居るって事ですか……」

「まぁあくまでも噂だから、話半分で捉えてくれた方が助かる。それよりも俺が気になるのは、どう言う経緯で

あんたがこの世界にやってきたんだ?」

「経緯ですか?」

経緯と言われても……と一瞬レナードは悩んだが、もうこうなってしまった以上はありのままを話すしか無いと腹をくくった。

「それではお話ししますが、意外な所からこの世界に来てしまったみたいですので驚くかもしれませんよ?」

「構わん。それは俺が1番聞きたい所だ」

「分かりました。ここに来る前、我が国ヴィサドール帝国軍は他の国と合同訓練をしていたんです。我が国含めて4カ国で」

「ほう、合同訓練か。その訓練の最中にこの世界に?」


やはり同じ軍人として気になるのだろう。アンリは若干身を乗り出してレナードに話の続きを促す。

「そうですね。しかし正確に言うのなら訓練の日程は7日程。その中の1日の訓練が終わって私は用を足しに

トイレへと向かいました。そこで個室から謎の光がいきなり出て来まして、それに飲み込まれて……気が付いたら

この町の近くにある森の中に居たんです」

「あそこの森か……」

レナードの話を聞いて、アンリはしばし考え込む様子を見せた。

「あそこには転送陣は置いていなかった筈だがな……? となれば、誰かが転送陣を作ったのか……?」

ここで、ブツブツと呟くアンリに向けてレナードからふと疑問に思った事が1つ。

「あの、転送陣って言うのは……?」


そのレナードの問いかけにパッと顔を上げたアンリは、ああ……とレナードに質問の答えを返し始めた。

「転送陣は魔法を使った転送装置だ。あらかじめ転送したい場所に魔法の陣を作っておいて、それと同じ文様を

作っておけば場所は限定されるが、世界中のあらゆる場所から移動する事が出来る」

「それは便利ですね。人間以外に転送出来るものってあったりします?」

「基本的には人も、物も、それから動物も何でも可能だ。ただし転送陣の大きさによって魔力の消費量が変わって来るし、

転送出来る量はその転送する人間の大きさや物の多さにもよってその都度変わるから、基本的にはサイズを測って

転送陣の大きさを決めるんだ」

要するにワープ出来る宅配便のシステムみたいなものなのか、とレナードは感心した。

魔法がこうして当たり前に使われているならば、もうここは地球とは違う世界であると確信。


(となれば、このアンリと言う方も魔法が使えたりするのだろうか?)

そんな疑問をレナードは直接本人にぶつけてみた所、こんな答えが返って来た。

「私は一応簡単な物であれば使う事は出来る。だが安心してくれ。魔術を使えない人間にも道具がこの世界では使われているのだ」

「道具ですか?」

「そうだ。魔道具と言って、身体能力を上げる事が出来る画期的な発明品だ」

魔道具とは聞き慣れない単語だ。

「その名前からすると、魔法の技術を使った道具と言う事で宜しいですか?」

「そうだ。現に今の私も身につけているしな」


アンリは自分の袖をまくり、手袋に半ば被る状態でつけられているシルバーの腕輪を指し示す。

「それも魔道具ですか?」

「そうだ。これがあるおかげで非常に生活には役に立っている」

若干誇らしげにアンリは答えるものの、いまいちレナードにはその凄さが伝わって来ない。

「身体能力を上げる事が出切ると言う事ですが、実際の所どう言う効果が現れるのでしょう?」

「効果としては反射神経が良くなるし、体力も上がるから疲れにくくなる。それと武器を持って戦う時に、

武器に流れる魔力に反応して持ち主の腕以上の実力を引き出す事も出来るのだ」

「ほう……」

だったら凄いドーピングパーツでは無いかと思うが、自分にもつける事が出来たら今よりももっと戦えるのではとレナードに疑問が当然湧いて来る。

「それ、私にもつけられますかね?」

「これか? それじゃあ実際につけて試して見ると良いだろう」

しかしこの後、とんでもない出来事がレナードの身に起こる!!


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