A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第58話


別にこれは戦いに限った訳では無いが、こうした戦いの場面であればジェイヴァスには数々のテクニックの引き出しがある。

残ったこの2人を倒す為に、ジェイヴァスは頭の中で引き出しを色々と開け始めた。

(足元が駄目なら……!)

他の場所を狙って倒せるだけの組み立てがジェイヴァスの頭の中に浮かんだが、予想外の出来事が起こったり

自分が思いもしない様な対処法をされるかもしれないので上手く行くかどうかは別問題。

それでもやってみる価値はあると踏み、目の前のトールハンマーの男の動きと出方を観察する。

弓使いの女へ意識を向ける事も忘れてはいないのだが、いかんせんトールハンマーの男の相手をしていると

女に対してはどうしてもおろそかになりがちだ。


「ふっ!!」

息を吐きながら地面を転がってハンマーを回避し、男に接近するチャンスを窺うが弓使いの女がそれを邪魔しに矢を放つ。

「くぅ……っ!」

連係プレイになかなか戦況を有利に運べないジェイヴァスは、こうなればと再び地面をローリングして弓使いの女に突進。

「来ないでよ!!」

そう言いながら放たれた矢を身体を逸らして回避するも、頬にかすって血が流れ出る。

だがそんな傷なんて、今までに受けて来た色々な傷に比べればどうって事の無い本当の意味でのかすり傷なので、

ジェイヴァスは弓使いの女に全力でラリアットをぶちかます。


「ごえっ!?」

変な声と共に女は後ろに仰け反るも、ラリアットをかましたその腕を離さずにもう片方の腕も使って女の首を取った

ジェイヴァスは、トールハンマーの男が援護して来る前に思いっ切り首の骨をへし折ってやった。

「ひきゅっ……」

またもや妙な声を出して、それっきり女の目から光が無くなる。

これで残るは後1人。

体格でジェイヴァスに勝っているトールハンマーの男だが、ジェイヴァスは諦めるつもり等無い。

相変わらずの大振りな攻撃。

だけどその攻撃が当たってしまったら最後、ジェイヴァスは一気に畳み掛けられてしまう事になるだろう。

それを避ける為に、攻撃が当たる前に男を仕留めてしまえば良いのだ。


だからこそ、ジェイヴァスは男の攻撃をまず観察する。

(大振りだが、大体の攻撃パターンは読めて来たぜ!)

人間の身体に染み付いた癖と言うものはなかなか抜けないものだ。

ハンマー使いとのバトルなんて当然初めてだが、ジェイヴァスは意外とこの男の攻撃がワンパターンなのに気が付いた。

体力的に時間は無い。

再び横薙ぎに振り抜かれるハンマーだが、ここでジェイヴァスは勝負に出る。


「……はあっ!!」

掛け声と共に男の顔面に向かってジャンプ。

しかしキックの為では無く、狙いは男の肩に飛び乗る事だった。

「ぐぅ!?」

「らああああ!!」

そこから両足を男の首に絡めてきりもみ回転しながら強引に地面に引き倒し、倒れた男の首に素早く腕を絡めて

全身全霊で首の骨をへし折ったのである。

「は……っ、はぁ、はぁ……!!」

無我夢中だったとは言え、自分でも4人相手に良く勝てたなと言う今の状況が物語るこのリザルトが

ジェイヴァスには信じられなかった。


だが、まだ全てが終わった訳では無い。

何時の間にか、あのフランコと副リーダーが碑石の前から姿を消している。

……いや、正確には「バラバラになった碑石の前から」と言う表現の方が正しい。

(ど、何処に行った!?)

バラバラになってしまっていた事でそれが碑石だと気が付くまでに10秒位の時間をジェイヴァスは要したが、

それよりも重要なのはやはりあの2人の行方だった。

この部屋から姿を消した事は間違い無いのだが、周りを見渡してみても碑石が崩れた事以外で

特に変わった様子は部屋には見受けられない。

(くそっ、結局あのバッジは持ち逃げされちまったのかよ!)


とりあえず一旦入り口まで戻りながらあの2人の行方を探すしか無さそうだと思っていたその矢先、ジェイヴァスは

思いもよらないものを発見した。

(あ……)

バラバラになった碑石の下から、薄暗い通路が顔を覗かせている。

完全に真っ暗と言う訳では無くて、この遺跡の中に設置されていたあのLEDライトみたいな照明と同じ物がついている。

(恐らく……いや、間違い無くあいつ等はこの先に行った筈だぜ!)

更に地下に向かって伸びている階段は、まるで自分を奈落の底に誘(いざな)うかの様な得も言われぬ威圧感をジェイヴァスに与える。

何があるかは分からないが、この先に進んでみなければあの2人が一体何をしようとしているのかを突き止める事が出来ないままだ。


(しゃあねぇ、行くしかねえか)

1つ頷き、ジェイヴァスは地下に続く階段を降りようとする。

だが、武器を持った相手をこれ以上連続で相手にするのはきつい。

この場所は広い部屋である為にスペースを十分に使って戦う事が出来たが、この先で武器を持っているあの2人と

戦う事があればきつそうなのが目に見える。

何か自分にも武器があれば……。

そう思いながら何か無いかと軍服のポケットを探し回ると、ある物がジェイヴァスの手袋越しの手に触れた。

(ん? 何だ、これは……)


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