A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第59話


辿り着いた遺跡の最深部。

そこで盗掘団のリーダーであるフランコと、彼の最愛の存在でもある副リーダーの女は、あのジェイヴァスとか言う

魔力を感じられない男から奪い取ったバッジを片手に1つの壁画の前に立っていた。

バッジをあの碑石の窪みにはめ込んでみると碑石が崩れ去り、この通路が現れたので2人は進んで来たのである。

警戒しながら進んでいたが特に何かトラップがある訳でも無く、こうして壁画の前に無事に立つ事が出来ている。

だが、壁画の前で2人は呆然としている。

何故ならば、この壁画には思わず笑みがこぼれて来そうな事が描かれているからだ。

と言うのも、さっきの碑石と同じくバッジをはめ込める窪みがあったのでそこにバッジをはめ込んでみた。

するとそのバッジがオレンジ色の光を出し初めて壁画全体に光が広がり、2人にも読む事が出来る文字が

壁画にびっしりと浮かび上がって来たのだった。


その内容は驚くべきものだった。

この世界の地下深くには古代の戦争で使われていた多くのテクノロジーを駆使した兵器が封印されており、

その場所までしっかりと記載されている。

もし、これを使えば世界を掌握する事も可能になるのでは無いか?

そんな思いが盗掘団の2人に浮かび、自然に笑みが顔に張り付く。

「……なぁ、どう思う?」

「そりゃもう……ふふ、盗掘団のリーダーじゃ無くて世界のリーダーになれるかも知れないのよ!? こんなチャンス、

絶対に逃す訳にいかないわよ!!」

「全くだぜ、はっ……ははは、はーはっはははは!!」

興奮する副リーダーの女の横で、フランコの高笑いが地下通路に木霊する。


しかしその笑い声を聞き付け、何者かの足音が聞こえて来た。

「……!?」

その足音に高笑いが止まったフランコの前に現れたのは、全く予想外の人物だった。

「……っ、お、お前は!?」

自分の部下の手によって死に追いやられた筈の男が、何故ここに。

その理由はここに駆けつけた金髪の男、ジェイヴァスの口から直々に語られる事になる。

「部下は全員死んだぞ。もう諦めるんだな!!」

「なっ、お前はあの全員を……!?」

「そうじゃ無かったら俺はここに居ねえよ。ロシア軍なめて貰っちゃ困るんだよ!!」


そう言われても、ロシア軍の事を知らない2人にとってはジェイヴァスが強敵と言う事位しか分からない。

それでも、この魔力を感じない強敵がここまでやって来たと言う事であれば今度こそ息の根を止めるしか無いのが

2人の心で共通していた。

「はっ……あの落石を俺の部下総出で撤去して時間を稼ぎ、ここに駐屯していた騎士団を皆殺しにして騎士団の振りをして

悠々と遺跡調査が出来る筈だったのに、まさかお前如きに振り回されるとはな」

「そりゃーこっちのセリフだよ。何度も何度もしつこく俺を追い回しやがって。挙句に俺が命がけで手に入れたバッジも奪いやがってよ」

ジェイヴァスの怒りのセリフに、女は何処か余裕のある口調でこう問い掛けた。

「なら、ここで貴方の命も奪って全て終わりにするって言うのはどうかしら?」

「ほー、そーかい。だったら俺も手加減なんかしねえよ!」


売り言葉に買い言葉でジェイヴァスは女に返答し、ラストバトルが始まった……その瞬間。

壁画がより一層強く光り輝いたかと思うと、その光の中から勢い良く何かがジェイヴァスの元に飛び出て来た。

「うお!?」

上手くジェイヴァスがキャッチしたそれはどうやら同じバッジ……の様だが、オレンジのあのバッジよりも更に大きな物だった。

「お、おお……!」

まるで新しい遊び道具を見つけた子供の様に目を輝かせたジェイヴァスがその大きなバッジをしげしげと見るが、当然フランコと

副リーダーは納得が行かない。

「おいちょっと待ててめぇ、せっかく俺がこの壁画から出した物を横取りされちゃ困るんだ」

「はぁ? ここ開けたのは俺だし、元々そこに埋め込まれているバッジも俺が持ってたんだよ。横取りしようとしてんのはそっちだろ」


フランコはジェイヴァスがバッジを渡す気は無いと判断し、斧を構えてにやりと笑みを浮かべた。

「ああ、そう。なら……力づくで奪い取るだけだぜ!」

この狭い通路の中で1vs2、しかも武器を持った相手2人とのバトルが始まる。

ジェイヴァスにとって決着をつける時だ。

まずは因縁の相手である槍使いの女が向かって来るが、壁に埋め込まれたライトのおかげで槍の動きが良く見える。

そんな彼は突き出される槍を見たその瞬間、ふとある出来事を思い出した。

(……あ)

これ、もしかしたら行けるかも知れない。


そう思ったジェイヴァスは突き出される槍を回避し、女の懐に飛び込みつつ槍の柄を自分の手でぎゅっと握り締める。

すると次の瞬間、まばゆい光と大きな破裂音と痛みがジェイヴァスに襲い掛かる。

「くっ!」

「きゃあっ!?」

ジェイヴァスにとっては、あの槍使いのヴィスとの一連のやり取りで経験済みのその不思議な現象はこの女にとっては

初体験らしく大きな隙が出来る。

それを見て、ジェイヴァスは自分の武器を懐から取り出して全力で女の頭に振り下ろした。


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