A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第55話


(……んっ!?)

ジェイヴァスの耳にまたもや馬の足音が聞こえて来る。

それも今度は1頭や2頭では無い。

明らかに10頭は下らない数の足音が、あのフランコと副リーダーの女が乗って来た馬よりも確実に速いスピードで

こっちの方に向かって来ているのが音だけでも分かる程大きく聞こえて来た。

(今度もこいつ等の増援か?)

そっと崖の陰から身を乗り出してジェイヴァスが様子を窺ってみるのだが、その目に映ったものは信じられないものだった。

そして、それはフランコと副リーダーの女も同じだった様で。

「お、おいっ!? 何だあれは!?」

「嘘っ!? みんな! 騎士団の襲撃よーっ!!」


(騎士団の襲撃?)

副リーダーの叫び声で、テントの中から次々に武装した集団が姿を現した。

そしてフランコと副リーダーも、突っ込んで来た大勢の馬と降りて来た騎士団の騎士達に対抗して行く。

もはや自分の存在に気が付くのは、この状況ではあの盗掘団の連中には無理じゃねーのかとジェイヴァスは自分自身でそう思っていた。

(これは遺跡の入り口に行くチャンスかもしれねーけど、あの乱戦の中に突っ込んで行ったら巻き添え食うだけだからもう少し様子見だ)

ここはあえて戦況を見て、あの盗掘団が全て騎士団に逮捕されてからゆっくり遺跡探索に向かっても遅くは無いだろうと判断。

ジェイヴァスは自分らしく無いその行動に、やはり世界が変わったからか自分の考えも変わったのかも知れないと再度認識しながら

騎士団と盗掘団のバトルを見守っている。


勿論、騎士団の勝利を願ってやまないジェイヴァスではあるのだが次第に何だか様子がおかしくてなって来た。

(おいおい、あいつ等結構強いんじゃねえのか……?)

武器と武器が合わさる金属音が響き、魔法や矢が飛び交う中で徐々に騎士団側が盗掘団の連中によって圧されて行く。

勿論盗掘団の方も騎士団の手によって駆逐されてはいるのだが、意外と盗掘団は統率が騎士団よりも取れている様で

騎士団を劣勢に追い込んで行く。

それにテントの中には騎士団を上回る人数の盗掘団のメンバーが待機していた様で、結局リーダーのフランコと副リーダーの女と

数人のメンバーを残して騎士団は壊滅してしまったのだった。

(嘘だろ……幾ら元騎士団員の奴がリーダーをやってるからって、現役の騎士団の部隊を打ち負かすなんてな……)

となれば、騎士団以上の実力を持っていると見て間違いは無さそうだ。


そう考えているジェイヴァスの目の前で、フランコを含めて生き残っている5〜6人の盗掘団は今しがた返り討ちにした騎士団員達や

仲間の死体を野営地の片隅に置いてある大きな荷車に次々に載せて行く。

どうやら何処かで纏めて処分するつもりらしい。

その処理作業は野営地のテントの密集痴態では行い難い様で、少し離れた場所に荷車を置いてそこまで死体を2人1組で運んで行く。

こっちに気がついている様子は見られないし、戦闘前の夕焼け空から段々と空も薄暗くなって来ているので今が目立たないチャンスだと判断。

(大丈夫、行けるぜ!)

慎重に、しかし素早く大胆にジェイヴァスは林の中へと姿を消してから大きなラインでぐるっと迂回するルートを選択。

そしてテントの近くまで来て、もう1度連中の動きを観察してからコマンドサンボ仕込みの低い体勢を取りやすい身体から

繰り出される地面のローリングでテントの陰から陰へと移動する。


(ふぅ、何とかばれずにここまで来られたな)

死んでしまった騎士団の連中には悪いが、おかげでこうして遺跡の入り口の階段を下りる所まで来られたのだ。

目の前には至る所がボコボコに凹んでいる鉄製の小さなドアが1つ。

明らかに最近つけられた様な凹み跡なので、開かない事に苛立った盗掘団の連中が殴ったり蹴ったりしてついた傷では無いかと思いながら

ジェイヴァスはドアの取っ手に手をかける。

(……はっ、やっぱな)

ジェイヴァスの予想通りと言うべきか、ドアはすんなりと開いてしまった。

(どうやら本当に、俺に対して魔法って言うのは効果が無いみたいだな)

ドアの向こうには、壁に埋め込まれている青白い光が照らす石造りの通路が奥に向かって伸びている。

地球で言う所のLEDの様な色だ。


果たしてこの先に一体何があるのだろうか?

(また、あのバッジを手に入れた時みたいに宝を守る存在が居たりするのか?)

そうだったらどんな宝がこの先に待っているのだろうか?

バッジを取り戻せていないのは悔しいが、もうここまで進んでしまった以上は後戻りなんて出来ない。

どんな罠がこの先に待ち受けていたとしても、自分の力で絶対噛み破ってやる。

自分だって世界最強の呼び声が高いロシア軍のそれも前線で戦って来た軍人なのだから、地球に戻る為の手がかりを見つけられる

可能性があるなら何処にだって行ってやる。

「……行くか」

自分にそう言い聞かせる様にポツリと呟いて、意を決したジェイヴァスは歩き出す。

閉めた筈の入り口のドアが閉まりきっていない事に気がつかないと言う、大きなミスをその場に残して。


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