A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第54話


「……っ!?」

ジェイヴァスでさえ思わず息を呑んでしまう。

予想通り2頭の馬が駆け足でここまでやって来たのだが、その馬を駆っていたのはジェイヴァスが隠れている

崖の位置からでも分かる……。

(あ、あのやろぉ……っ!?)

紫色の髪の毛をしたリーダーの男、それから副リーダーの槍使いの女だった。

そして次の瞬間、風に乗って耳に届いた見張りの兵士のセリフにジェイヴァスは自分のその耳を疑うしか無かった。

「フランコ団長! お疲れ様です!」

(はぁ!?)


今、あの兵士は何と言った?

「団長……って……」

声に出てしまう程のショック。

まさかあの男、そしてあの女は騎士団の人間だったのだろうか?

(おいおい冗談だろぉ……? この国の騎士団ってそんな……盗掘団と繋がってるのか?)

だったらますます不利になるんじゃないのかとジェイヴァスは考えたが、過去の出来事を思い返して行くと

つじつまが合わない部分が出て来る。

難しい事を考えるのが苦手なジェイヴァスだが、今の時点で出来る事はそれ位なので今までの話を1つ1つ整理し始める。

(ん? でも待てよ……? 確かあのフランコとか言う男だったか槍の女だったかそれともヴィスとか言う奴だったかは

忘れちまったけど、自分で盗掘団の一員だって言ってたよな。と言う事はフランコ「団長」だったら「騎士団長」でも

「盗掘団の団長」でも通用する訳だよなぁ……?)


とすれば、ジェイヴァスにも大体の予想がついて行く。

(本当に騎士団長の立場にある人間なのかも知れねぇが、もしかしたら騎士団と盗掘団が繋がっているって可能性もあるよな。

実際に盗掘団が金を渡して俺を捕まえる為に協力してた訳だし? 後は……)

騎士団員達が常駐しているって話だったが、もしかしたらその騎士団員達はあの盗掘団の一味なのでは無いか?

それかもしくは、騎士団員達はもうすでに殺されるか何かしていてこの地から居なくなっており、代わりに盗掘団の連中が

「騎士団員の恰好をして」ここに居るのでは無いのか?

(あの男の紫の髪の毛に黄緑の服は目立つからここからでも分かるんだが、見張り達の「動き」に集中し過ぎて「服装」までは

気にして無かったぜ、くそっ!)


もしあの盗掘団の連中であれば、特徴的なエンブレムが入っている装備を身に着けている筈だ。

だけどそれが分からない以上、色々な可能性がジェイヴァスの頭を駆け巡る。

人間の記憶なんてあんまり当てにならねーな、と思いながらジェイヴァスは様子を窺い続ける。

何時の間にかパンをかじる事も忘れて、ジェイヴァスはフランコと兵士の会話に耳を傾ける。

「調子はどうだ?」

「それがまだ全然……王宮の魔術師が最近ここに来たので進展があったかどうかを聞いてみましたが、

未だに解除の方法は掴めない様です」

「そうか……悪いな。騎士団のフリをするのもまだ終わらないかも知れないけど、頑張ってくれよ」

「心配ありませんよ。元々フランコ団長は騎士団の中でも有数の実力を誇っていた部隊の隊長だったじゃ無いですか」

「そんなの昔の話だろ。今の俺は盗掘団のリーダーだっつの」


ジェイヴァスの予想の1つは当たっていたらしい。

どうやら、あの夜営地を作り出しているのは騎士団の人間では無くて変装している盗掘団のメンバーの様だ。

(俺の予想は当たったな。けど、あのフランコって野郎は元々騎士団の人間だったのかよ)

そんな奴が盗掘団のリーダーをやっているなんて、この世界でも地球でも良くある事なのかなーとジェイヴァスは

再びパンを口に運びながら実感する。

しかし、それが分かった所で事態に進展は見られない。

今の自分が考えなければならない事は、どうやってあの遺跡に入るかと言う事なのだ。

聞こえて来た会話からしてみると、まだ全然遺跡に入れない状態のままらしいので自分が入れるかどうかは分からない。


それでも、ジェイヴァスには自分だけがもしかしたら遺跡に入る事が出来るのでは無いのか? と言う自信があった。

何故ならば、最初にあのバッジを手に入れた建物である遺跡もこの遺跡と同じく魔力のロックがどうのこうのと言う話があったからだ。

でも、その話はまるで自分には実感出来なかったのもまた事実。

(魔力がどうのって言われても、あの遺跡に俺はすんなり入る事が出来たんだから別に関係ねーんじゃ……ん?)

関係……無い?

魔法使いの女とバトルした時の、あの炎の直撃を受けた時も同じくノーダメージだった。

これ等の事を考えると、ジェイヴァスの頭の中に1つの仮定が生まれる。

(……まさか、俺には魔法が意味を成さないんじゃねえか!?)

そうだとすれば今までのその出来事全てに納得が行く。

武器が触れなかったり防具が身につけられない理由ももしかすると魔法に関係しているのかもしれないが、それはまだ後回しで良い。

今はとりあえず、あの遺跡に入れる可能性が自分にあるのでは? と言う期待とちょっとの不安で頭の中が一杯になっているジェイヴァスだったが、

食べ終わったパンが入っていた紙袋をポケットに突っ込んだ彼の目に、更に驚くべき光景がこの後飛び込んで来る事になるのだった。


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