A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第49話
いきなり何を言い出すのか、ジェイヴァスの頭では理解が一瞬不可能だった。
「魔力を持たない……? 俺と同じ……?」
「ああそうだ。お前はこの世界では魔力を持たない人間なんだ。こんな人間に出会ったのは俺も初めてなんだがな」
そんな事をいきなり言われても、ジェイヴァスは生まれてから40年間ずっとこの身体で過ごして来た訳だし、
魔力を持たない人間と言われても全く実感が無いのは至極当然の事だった。
「そ、その人間はどうなったんだ!?」
「さぁな。俺達は会った事が無えし、気が付いたら何時の間にか居なくなってたって言うし」
もしこの男の言っている事が本当であれば、自分と同じく地球からやって来たかも知れない人間がこの世界に居る可能性が見えて来た。
可能性があると言うのが分かっただけでも大きな進歩なのだが、この牢屋からの進歩は出来そうに無い。
それでも、ジェイヴァスは諦められる訳が無い。
あくまでも可能性であり、小さな情報だけしか無い今の状況でもすがり付きたい気持ちで頭の中が一杯になっていた。
その為にもまずは、この牢屋からどうにかして出る手段が無いかを必死で考える。
そんなジェイヴァスの様子を見透かしたのか、男はまたもやにやりといやらしい笑みを浮かべる。
「へっ、その魔力を持たない人間に会いたくてたまらねぇって顔してやがるな? でも残念だ。お前はこの牢屋から出た後に
俺達に殺される事になるんだよ」
ここから3つ目の質問の回答が再び副リーダーの女によって語られ始める。
「さて、それじゃ次の質問ね。貴方をこの村の牢屋に連れて来た理由だけど、もちろん今までのお返しをさせて貰う為よ。
さっきも彼が言ってたけど、私達の仲間を殺されて黙ってる訳が無いわよね」
「忠告した筈だぞ、俺は」
「そんな忠告、私達には無意味なのよ。こうして貴方を捕らえる事が出来たんだからね!!」
勝ち誇った声色と顔つきで女が高らかに宣言したが、ここでジェイヴァスの頭に疑問が浮かんで来た。
「……んん? ちょっと待て。捕らえたって言う事はつまり……どう言う事だ? 俺はあの町からこの村に行く為の馬車に
乗せて貰って、そして寝ちまった筈だぜ」
ジェイヴァスの疑問に、今度は男が溜息を吐いた。
「本当に馬鹿なんだな。少し考えてみれば分かるだろう。それとも説明しねーと分からねーか?」
「悪りーな、俺はあいにく脳まで筋肉で出来ている様なタイプなんでね。俺が寝ちまった後から全部教えてくれよ」
もうこうなったら開き直って教えて貰った方が早いだろ、とジェイヴァスは自分を馬鹿にするセリフに無駄に絡まない事にする。
「ならば馬鹿でも分かる様に教えてやろう。俺達はあの町の見張り番の兵士から、お前が馬車の乗り合い場所に行った事を突き止めた。
そしてその馬車を尾行して、御者が寝静まった所で殺す。そしてお前をそのまま馬車でこの村に運んで来たって訳さ。
御者が変わったとか何とか言っておけば怪しまれる事も無えし、何よりお前は全然起きる気配が無かったからな。油断してんじゃねーよ」
「……!」
見張りの兵士、と言う事でジェイヴァスの記憶にフラッシュバックが起こる。
あの時、遺跡までの日数と馬車の場所を聞いた町の入り口の兵士。
あの兵士が自分の情報をこの連中に流したのか、とジェイヴァスはふつふつと湧き上がる怒りを抑えつつ話の続きを聞く。
「その兵士は俺達の近くで仲間の兵士達にお前の情報を伝えてたから、俺達が知り合いだって言ってやればすぐに俺達にも教えてくれたよ。
警戒心の無さって本当に駄目だよなー? まぁ、俺等にとっちゃあ好都合だったから良かったけどさ」
はっはっは、と高笑いをして勝ち誇る男相手に、ジェイヴァスはブルブルと怒りで鉄格子がきしむ音がする位に握りしめながら自分の行いを後悔していた。
(くそっ……迂闊だったな)
リサーチ不足の結果、こうして牢屋に入れられてしまう事になったので後悔した所で今更もう遅過ぎるのだが。
となれば、この牢屋がある所と言えば……?
「まさかここの牢屋も、お前達の息がかかってたりするのか?」
そんな疑問がふと口をついてジェイヴァスから出て来たが、男は一瞬キョトンとした後にまた嫌らしい笑みを浮かべる。
「完全に馬鹿って訳でも無いんだな。少しは見直したぜ。その通り、ここは元々俺達の仲間が常駐している騎士団の詰め所だ。
騎士団の奴等も俺達に情報をくれる代わりに金を渡してやれば、さっきこいつが言ってたのと同じく色々と融通を利かせてくれるってこった」
「……!?」
フラッシュバック再び。
過去の出来事と今の状況は違うと分かっていても、こいつ等がやっている事は自分の信頼していた大隊長がやっていた事と同じでは無いか。
「……のやろおおおお!! ここから出しやがれ、出せっつってんだろ!!」
フラッシュバックで一気に怒りがマックスになったジェイヴァスの豹変にリーダーも副リーダーも一瞬驚くが、そう言われたって出してやる訳には勿論いかない。
「嫌だね。お前を出したら何をされるか分かったもんじゃねーからなぁ? ……ああ、そう言えばまだ最後の質問に答えていなかったな」
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