A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第41話


「え? 通行止め?」

ジェイヴァスを待っていたのは前途多難な状況だった。

腹ごしらえとばかりに酒場に入り、やはり肉が食べたいと肉料理を注文。

そして料理を持って来た店員の男に北の遺跡について聞いてみる。

あいにく冒険者の姿が見当たらなかった為、聞けるのが店員位しか居なかったのだ。

そして、その店員からもたらされた情報がこれだった。

「あー、北の遺跡ね。あそこは色々冒険者が行ってるけど、何でも魔術による封印がされているみたいで

国が今は解明調査で介入しているらしいんだよ。しかも最近、その近くの山道で落石があったらしくて遺跡に

向かう事が出来ずに通行止めになってるんだってさ」


通行止めと言っても1日や2日で処理出来る様な規模では無い様だ。

ちょっとした山崩れの規模になってしまったらしく、今はこの町から騎士団員や臨時雇い上げの傭兵等が派遣されて

総出で撤去作業に当たっているらしい。

地盤は決して緩く無かったのだが、そこで見つかったその遺跡の発掘作業を急ピッチで進めて行った結果として

山のバランスを崩してしまう程の掘削作業になったらしい。

しかも無理に工事を推し進めたせいもあるので、幾ら内側から補強しても何時かはこうなるのでは無いかと懸念されていた

矢先の出来事だったとか。

「犠牲者とかは出たのか?」

「いいや。夜中に起きたらしいから幸いにも誰も下敷きにはなって無いし巻き込まれた人間は居ないってよ。ただ、このペースだと1週間はかかるだろうね」

「1週間……」


思わぬ所でこうして足止めを食ってしまう事になったジェイヴァスだが、ここで良く考えてみるとそれ程デメリットばかりでも無い事に気が付いた。

(ここの所結構バタバタしてたし、俺はこの世界について余り知らない。それにこの国についても良く知らねえから、色々と調べ回ってみるチャンスだろうな)

研究所が設置されているので、今までの町と比べると大きな町と言うイメージのある現在滞在中のこの場所だが、余りウロウロする事も出来なさそうだ。

(ただなぁ……あの連中が未だに俺を追って来ているだろうし、この町に向かったって言う情報も何時かはばれるだろうな。

しかも騎士団から研究対象としてこの町に連絡が来ているのであれば、騎士団としても俺を研究所まで連れて行きたい筈だろうよ)

町の入り口の警備兵はEU圏と同じくフリーパスなのか、はたまた変装しているせいなのか特に目を付けられる事も無く町に入る事が出来たのは良かった。

だけど、ここでこのまま足止めを食らいっぱなしと言う状況になってしまうと色々と目を付けられるかも分からない。

勿論そんな目立つ行動は取らない様にしたいジェイヴァスだが、もしあの連中が自分を見つけてこの町の中で揉め事に発展したら……。

(その時は間違い無く、また騎士団の世話になっちまうだろうな)

それだけは避けたい。こんな所で時間を食う訳には行かないし、色々な問題が解決していない今は自分の身体を実験台にされたくは無い。


確かに自分の身体の事はジェイヴァスにも気になる。

だけど、それよりももっと気になるのは自分が果たして地球に無事に帰る事が出来るのか、と言う事だ。

この世界に来て、ジェイヴァスは色々考える事があった。

あのケルベロスと戦った時、武器が無ければ人間なんてちっぽけな存在だと痛感した事。

それに関して、地球で軍が所有しているミサイルやランチャー等が改めてどれ程の威力なのかを思い知った事。

それから、馬車で移動するとなると車や飛行機等がある地球とは違って何日間もかかってしまう事から、地球のテクノロジーの凄さには

舌を巻いちまうもんだぜ……とも思うジェイヴァス。

(この世界は色々と不便過ぎる。魔法とかって便利なものなのかな。俺は使えないからその凄さがまるで分かんねーけどよぉ……)

それに、やっぱり地球は自分の故郷なのだ。

ここは自分の故郷じゃない。ロシア軍こそが、そしてロシアこそが自分の帰るべき場所なのだ。

それだけはジェイヴァスにはどうしても譲れない。


(この世界をもっと知ってみる事で、何か便利な事が見つかるかも知れねえけどな。でもやっぱり地球の便利さにはかなわねーよ)

住み慣れた場所がやっぱり良い。

だけど今の状況ではこの世界で生活の糧を築くしか無さそうなので、何か自分の生活をしてくれる物を探す事、そして……。

(食ってくなら働かねえとな)

生きて行く為には働かなければいけない。

その為にはどうすれば良いのか?

(俺はあいにく頭がそんなに良くねえからな。だから力仕事とかだよなー)

身体を動かすのが好きだし、軍に所属して前線で戦った経験があるからこそそう言う関係の仕事の当てが無いかと言うのも見つける必要があるだろう。

そうやって働き口を見つけ、働く内に何か地球に帰るための情報が得られる時が来るかも知れない。

(まぁ、最初は北の遺跡とやらに向かってからだろ)

金にはまだ少し余裕がありそうだし、その北の遺跡の調査をしてからでも遅くは無いかなと思いつつジェイヴァスは運ばれて来た肉料理に手をつけ始めた。


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