A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第36話


(よっしゃ、もうそろそろで打ち止めらしいな!!)

ジェイヴァスは目に見えて数が減ってしまった集団を見ながらほくそ笑んでいるが、そこに油断が生じているとも取れる。

だったら一気にカタを付けてやるぜ、とばかりにジェイヴァスが他の騎士団員達と戦う男の1人に向かって

駆け出そうとした……その瞬間だった。

後ろの方からゾワッとする様な、肌に突き刺さる様な気配とでも言えば良いのだろうか?  そんな異様な気配を感じた

ジェイヴァスは、咄嗟に後ろを振り向かずに感覚に身を任せるまま、一瞬の判断で横に飛んで地面を転がった。

(なっ、何だ?)

上手く受け身を取って起き上がるジェイヴァスがその視線の先に見た光景は、まさに地獄絵図が出来上がる瞬間だった。

後ろから突然やって来た、円を描いて巨大化しながら直進して行く炎のトルネードに巻かれた騎士団員達が断末魔の

絶叫を上げる間も無く、一瞬で炭になって行く光景だった。


「うお……!?」

その余りにも異様な光景に唖然とし過ぎて目を逸らす事が出来なかったものの、すぐに我に返ったジェイヴァスは後ろを

振り向いてトルネードの発射元を探す。

「……!!」

だが、後ろを振り向いたジェイヴァスの視界に入ったのは自分に向かって飛んで来る大きなファイヤーボールだった。

これもまた一瞬の判断が遅れていたら自分に直撃して大変な事になっていたかも知れない、とギリギリでかわして

再び地面を転がったジェイヴァスはそう思っていた。

そのファイヤーボール、そしてさっきの炎のトルネードを放って来ているのは遠くの方に居る女の魔法使いの様であった。

(あいつかっ!!)

自分達のバトルフィールドから外れた場所から遠距離射撃の要領で、上手い具合に狙い撃ちをするタイミングを計っていたらしい。


そして魔法の事なんて一切何も知らないジェイヴァスでさえも、先程の大きな炎のトルネードはかなりのテクニックを

必要とする魔法である事に薄々気が付いた。

(さっきのは余り多用出来ねー様な魔法っぽいな。だったら次のあの魔法が来る前にさっさとぶちのめさねーと、

こっちがあの魔法でやられちまうぜ!!)

和解出来そうに無い相手の場合は殺すか殺されるかのやり取りがスタンダードな戦場の世界。

これはジェイヴァスが前線に出ていた地球でも、それから今の異世界においても戦場と言うバトルフィールドである以上何ら変わりは無い。

(男だろうが女だろうが関係ねえ、戦場に出る以上、生きるか死ぬかの世界なんだぜえ!!)

この世界に来てから、男も女も等しく自分に危害を加えて来る様な連中は最初のあの槍使いの女とあの酒場の時を除いて

全員潰して来たジェイヴァス。


それに地球に居た時だって、戦争と言うフィールドで活躍した歴史上の有名人は男が大多数であれど、女だってラインナップされている。

あの世界的に有名なジャンヌ・ダルクを始めとして、ロシアでも「スターリングラードの白薔薇」と呼ばれた伝説の女パイロットの

リディア・リトヴァク、ナチスの兵士309人を殺害し、アメリカ大統領に招かれた程の腕前を持っていた達人スナイパーのリュドミラ・パヴリチェンコ等、

女も場所と適性がマッチすればこうして十分に戦えるのだと言う事をその実績が証明していた。

世界は違えど、この魔法使いの女もあの槍使いの女や弓使いの女と同じ様に、自分に適性があると判断してこの道を選んだのだろうと

思いながら、ジェイヴァスは目の前の女に立ち向かう。

が、今まで以上に気を付けなければならない敵であるとも直感的に感じていた。

(油断出来ねえ!)

魔法なんて地球に存在しないし、そもそも興味すら無いジェイヴァスは魔法の類をこの世界に来て初めて生で見て覚える事になった。

その時は感動を覚えたものだったが、今では目の前の魔法使いの女に対して驚きと恐怖とちょっとの対抗心がある。


(魔法はこうして使う事も出来るんだな。威力がでけぇのになればさっきみたいにミサイルの如く一撃で目標を粉砕する事も出来るって訳か。

だが、魔法にだって弱点はある筈だ。地球の軍人を、そして地球の格闘技や武術をなめて貰っちゃ困るんだよ!!)

自分だって軍人として生きて来たし、その前はサンボの世界で格闘家として生きて来た。この世界の人間にだってかなわない筈が無い。

(あの時みてぇに集団で一斉に掛かって来られなければ、俺にだって勝機があるかも知れねぇぜ!)

ジェイヴァスはその思いと、今までに戦って来た異世界の人間やモンスター達の事を思い出しながら魔法使いの女に立ち向かう。

相変わらずファイヤーボールを繰り出し、なかなか寄せ付けようとしない女。

右に左に撃ち出されるその攻撃を回避しつつ接近を試みるも、なかなか女との距離が縮まらないジェイヴァス。

(もたもたしてると増援が来るかもしれねえな)

さっきの大きな炎のトルネードの魔法で、魔法使いの女は味方を巻き込んで護衛の騎士団員達を殲滅してしまった。

なので、今ここに立っているのはジェイヴァスと女だけだったのだ。


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