A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第35話


そしてここに打撃技やもっときつめの関節技、人体を的確に破壊する為のテクニックを盛り込んだコマンドサンボがある。

己の肉体のみで自分に向かって来る敵を殺害するテクニックが満載なのがコマンドサンボなのだが、

実の所コマンドサンボは軍の各部隊で違うテクニックを習得する事は余り知られていない。

ちなみにあの有名なロシアの格闘家のヒョードルも、バックボーンとしてサンボを習っている事で知られている。

戦場はスポーツと違ってルール無用のまさに無法地帯。

卑怯な手だろうが、姑息な手段だろうが、数の暴力だろうが、地形の利を生かした戦法だろうがとにかく勝った方が強い、それが戦場なのだ。

ただでさえ第一次世界大戦、それからロシア内戦、そして第二次世界大戦と国内の紛争だけでは無く世界を相手に

2回もその舞台で戦って来ただけあり、自分も同じ様に将来は世界で戦う時がまた来るかもしれないとジェイヴァスは思っている。


かのプーチン大統領も習得し有段者として有名なこの武術を駆使し、再度現れた因縁の集団に立ち向かうジェイヴァス。

コマンドサンボは実戦形式ゆえに、ナイフや拳銃と言った武器を持った相手と戦う事も想定して訓練カリキュラムが定められているので

特殊な動きが多い。武器を持った相手に対抗するのであれば、今の様なこうした場面では有効だ。

ちなみにスポーツとしてのサンボの試合では、押さえ込みは1試合1回限りと決まっている為に、タックルから押さえ込みに

行ったり積極的に押さえ込みを狙いに行く様な武術では無いのでここが柔道とは大きく異なる。

だが今はスポーツでは無い実戦。

試合で禁止されている立った状態での関節技や、バッジの守護者である紫色のモンスターに対して以前行った首を絞める

テクニックを始めとする絞め技全般はNG。

手首と足首の先はそれぞれルールで掴めない、相手の胴を絞める事もスポーツでは禁止、膝関節やかかとを捻るヒールホールドや

足首固めも禁止されている。

それ等の禁止技を全て解禁する事にプラスして、頭突きや目潰し等の危険なテクニックを使う事もジェイヴァスは厭わない。

逆に、そう言った禁止技でもどんどん使って行かなければ戦場で生き残る事は出来ない。

ルール無用の戦場の戦いはそう言う場所だからだ。


それでもジェイヴァスはいまいち攻め切れない。

手かせもそうなのだが、あの酒場での集団相手での敗北が今でも記憶に新しいのでなるべく囲まれない様な動きをしていた。

トラウマになっていると言えばいるのだが、ここでふとジェイヴァスは逆の発想をしてみる。

(待てよ……これは改善のチャンスじゃ無いか?)

実際、今までの自分は考えも無しにただ感情に任せて突っ込んで行く事が多かった。

士官になってからは部下を取り纏める立場として教育されて来た為にそう言う前線に出る様な機会はめっきり減ってしまったが、

根本的な部分は変わっていないとあの酒場での乱闘で実感していた。

そして、今まで自分がそうしてむやみに後先考えずに突っ込んで行った所で酒場での時みたいに袋叩きにされなかったのは、

仲間のサポートがあったり相手が自分1人でも十分な位に弱い集団だったり、運が凄く良くてやられる事が無かったからで

あったと気が付かされたのだと今になってジェイヴァスは思っている。


実際、ジェイヴァスが何時もの自分と違うと感じるポイントとしては色々ある。

(前の俺だったら、もっと果敢に突っ込んで行ってた筈だ!)

だけど今は違うとばかりに、敵が自分に向かって来た所でジェイヴァスは迎撃。

大振りでロングソードを振り上げて来た男の、鎧がついていない股間を全力で蹴り上げたジェイヴァスは、男が悶絶した所で

両手で頭を掴んで一気に首の骨をへし折る。

次に横から向かって来た二刀流のナイフ使いの女の腹をミドルキックで蹴り飛ばし、みぞおちにクリーンヒットさせて

女がたたらを踏んだ所で足払いをかける。

当然女は倒れるので、素早く女の顔を踏みつけて足の力を使って同じく首の骨を折る。

手かせをはめている状態で相手を無力化するのであれば、こうして首の骨をへし折って行く位しか出来ないのがジェイヴァスにとっての現状だ。


そして騎士団員達もやはり王国騎士団員と言うだけあって戦闘には手馴れている様子で、それぞれが剣や槍で応戦して

1人、また1人と倒して行く。この集団と騎士団員達との間で戦いのテクニックに差がある事が段々と人数差を覆し、

徐々に因縁のある集団は劣勢になって行く。

しかし、この集団の中には戦闘している場所から若干外れた目立たない位置で一発逆転のチャンスを虎視眈々と窺っている人物が居た。

ジェイヴァスも騎士団員達も自分に向かって来る相手の事で一杯一杯であり、その人物が逆転の手立てをもうそろそろ完成させようと

している事には全く気が付かないままに、ジェイヴァス側を一気に壊滅させる事の出来る秘策の準備がすでに終わろうとしていたのであった。


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