A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第29話
過去の出来事を思い出しそうなジェイヴァスだったが、そんな彼の元に料理が運ばれて来た。
空腹のジェイヴァスにとっては今すぐにでもかぶりつきたい、熱い鉄板の上で焼ける音を立てながら
肉汁の滴る何かの肉のステーキであった。
「うっひゃー、旨そうだぜ!」
思わずそんな声をあげてしまう程にその料理を待ち望んでいたジェイヴァスは、フォークとナイフも一緒に受け取る。
だが3日間も空腹の腹にいきなり物を詰め込み過ぎるのは良くない、と軍の訓練で教えられた事を思い出し、
大きく切って口に運ぶのでは無くて徐々に大きく切り分けて小さいのから口に運ぶスタイルで3日ぶりの食事にありつく事が出来た。
と、ふとここでジェイヴァスは心の片隅に引っかかっていた違和感を思い出す。
(あれ? そう言えば俺、あの時あの遺跡で炎を受けそうになったけど……)
最初に自分が現れた、あの変な場所で引っかかったドアの前のトラップの1つ。
必死に炎を避けながら、何とか解除して進んだのが今でもまだまだ記憶に新しい火炎放射のトラップ。
その火炎放射トラップを避けている時は必死過ぎて気が付かなかったのだが、ふと思い出してみるとあの時感じた
不思議な気持ちがよみがえって来たのだ。
(火炎放射だったのは分かるが、あの炎……熱く無かったな?)
普通の人間であればああ言った炎に対しては必ず感じなければいけない感触、それが「熱さ」だ。
あれだけの火炎放射を近くで見るだけでも、熱風や炎の温度で汗をかくのが当たり前の筈なのに、
ジェイヴァスは動き回った事で汗をかきはしたものの炎の熱さを感じる事は無く、その結果として炎の熱さを感じる事も無かったのだ。
その後はあの建物から脱出する前に槍使いの女と戦った事や、山を下りる途中のあのケルベロスとのバトルで色々と
満身創痍になり掛けていた……いや、なっていた為にすっかり記憶の片隅にその出来事の記憶が追いやられてしまっていたのだった。
それを考え始めてしまうと、自然とステーキを口に運ぶ手も止まりがちになってしまう。
(もしかして俺の身体……何か変な状態になってたり!?)
炎を近くにして、それで熱さを感じないと言うのは今更考えてみても明らかに異常な事だ。
何故あの時、自分は炎の熱さを感じられなかったのだろうか?
それに今、ジェイヴァスはこの食べているステーキが乗っている鉄板の熱さは感じる事が出来ている。
(あそこのあの火炎放射……俺には効かないとか?)
それとも何か別の理由があるのだろうか?
(……ああくそっ、俺の頭じゃ考えた所で分からねえ!!)
それに腹が減っていれば尚更頭の回転も鈍くなってしまいがちなので、まずはこの目の前のステーキを楽しんで食べ切る事にした。
(ああー、やっと腹も一杯になったぜ)
空腹も解消出来て満足したジェイヴァスは、とりあえず今の段階ではあの時のトラップの炎の熱さを何故感じる事が
出来なかったか、と言う議題について考えるのを止める事にした。
自分1人では考えても結論が出そうに無いし、もっとそう言う魔法とか魔術に詳しい仲間が出来た時に改めて自分の身体に
何か異変が無いかどうかと言うのを聞いてみるのが1番良いと判断した。
(さてと……後は次の目的地を何処かに設定しなきゃ何時までもこの町から出て行けないぜ)
腹ごしらえが済んだまでは良かったのだが、あの敵対集団に追われてしまっている以上は1つの町に何時までも
留まっている訳には行かないのだ。それに、あの集団が何故あの遺跡に現われたのかと言うのも気になる所だし、
馬を駆けさせて来た為にあの遺跡にはあの後2度と立ち寄らなかったので結局あの女を始めとした集団がどうなったのかまでは
ジェイヴァスには分からない.
(考え付く理由としては、あの時の馬車の御者に追いついてその御者から情報を聞き出してやって来たって事かな。俺も一旦逆戻りした訳だから
あの馬車には追いつかなかったかも知れないんだけど、そう考えてみればこの町に馬車の御者がまだ居るかも知れねえな)
馬車の御者が言うには、最初のあの町からこの町までを定期便として往復しているとの話だった。
だとすればこの町にまだ居る可能性は大きいし、それにこの町から別の町に向けても同じ様に馬車が出ているかも知れないとジェイヴァスは考えた。
(まぁ、出ていなかったら出ていなかったであの馬にはまた頑張って貰うだけさ)
乗り合い馬車であれば移動できるルートが制限されているから自由に動き回れないが、単体の馬であれば自分で自由に行動できると言うメリットがある。
しかしその反面、馬車なら馬のコンディションを気にする必要が無ければエサの心配も要らないので、自分で馬に乗って行くとなれば
休めるポイントを探したりエサを与えたりしなければならないデメリットもある。
(何かを手に入れれば何かを失うとは良く言ったもんだぜ……くそっ)
世の中は決して甘くないものだ。
そんな過酷な現実を突きつけられていたジェイヴァスのすぐ横のテーブルに、1人の人間の身体が叩きつけられたのはそんな時だった。
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