A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第25話
「うおっとぉ!?」
後、およそ10メートルで街道まで出られると言った所で足元に矢が突き刺さる。
一体何処から……と思いつつ周りを見渡してみれば、街道から森に続いて来る道の丁度分岐点の場所に
1人の弓を持ったショートヘアーの黒髪の背の高い女の姿があった。
「いきなり何すんだよ!!」
「貴方ね……ヴィスを殺したって言う怪しげな男って言うのは」
「ヴィス……?」
女が口走った聞き覚えの無い言葉にジェイヴァスが首を傾げると、女はいきなり激昂した口調に変わった。
「とぼけるな!! 貴方が私の婚約者のヴィスを殺したって言うのは知ってるのよ!! あの路地裏で、貴方に殺されたって
言う槍使いよ!! その服は間違いなくヴィスの物だわ。私がプレゼントして、お気に入りで使ってくれていた服だからね!!」
女の怒号交じりの告白に、ジェイヴァスはああ……と記憶の糸を手繰り寄せる。
「あの時の男の彼氏か。でもあれは正当防衛さ。悪いけど俺だってなぁ、殺されそうになった訳よ。そんで殺されそうになるなら
その前に俺が自己防衛する。こんなのは当たり前の話だろうが」
「何よそれ……貴方には人間の感情って物が無いの!?」
さも当たり前、と言う様なジェイヴァスの口調に女の目が若干見開かれて悲しそうな顔に一瞬変わるが、それでもジェイヴァスは動じない。
「感情は痛い程あるね。だけどそれとこれとは話が変わって来るだろうが。ここは戦場だ。生きるか死ぬかの世界だぞ。
それが嫌なら家に帰って寝てれば良いじゃねえかよ」
このはき捨てる様なジェイヴァスの一言で、とうとう女のリミッターが解除されてしまった。
「そう……だったら、私がヴィスの仇を取るまでよ!!」
この女が矢を放って来たのは明らかなので、ジェイヴァスは次に矢を放たれる前に女に立ち向かう事にする。
しかし、女は腰から1つの白いボールを取り出してそれをジェイヴァスに投げつけて来る。
「ちっ!」
大きく首を横に動かしてボールを回避したジェイヴァスだったが、本当の危機はこの後に待ち構えていた。
そのボールが飛んで行った先では、当然ボールが地面にぶつかったのだが……次の瞬間そのボールが破裂したのだ。
「っ!?」
そして破裂したボールから、そのボールの色と同じ白い煙がシューっと沸き上がる。
スモークグレネードの様な物かと思いながら、ジェイヴァスはそのボールと煙に気を取られてしまった為に女の矢に反応するのが遅れてしまった。
「ぐあっ!!」
一瞬の隙を突かれて放たれたその矢をジェイヴァスはすんでで回避しきれず、左の肩に命中してしまう。
だが致命傷では無い。毒が塗られていれば別だが、特に身体に異常は見られないので戦闘続行可能だ。
「っのあアマあああああ!!」
痛みを誤魔化す様に雄叫びをあげつつ女に突進。
女は弓を背中にしまって短剣を取り出したが、ジェイヴァスにとってはそっちの方が接近戦に持ち込める分で好都合だった。
女の短剣を持つ右手を取って、全力で勢いのままに肩の痛みを感じさせない程の速い背負い投げを繰り出し、
女を地面に背中から叩き付ける事に成功した。
勿論これで終わらせる訳では無く、地面に叩きつけられてもだえ苦しむ女を見つつジェイヴァスは肩に刺さった矢を引き抜いた。
「っつ!!」
鋭い痛みがジェイヴァスの肩を襲うがそんなのに構う余裕は無く、女が起き上がって来る前にその女の身体を右腕で
グイッとロックして左手に矢を持つ。
「あの世で彼氏と仲良くしてな!!」
大きく振り被って、迷い無くその矢を女の喉目掛けて突き刺した。
「げっ……!!」
目を見開いて奇妙な声を出して少し痙攣(けいれん)した後、女はがっくりと力を無くして動かなくなってしまった。
殺しにかかって来る様な相手に手加減をしたら、それこそこっちが殺されてしまうので手加減をする必要は無いとジェイヴァスは思っている。
(殺されるのはまだまだ御免だ。死ぬならもっと平和的な方法で死んで人生を終わらせたいもんだぜ!!)
尚更戦場では殺すか殺されるかの世界である。
手合わせであれば当然ジェイヴァスも手加減だってするし、相手に合わせた動きで立ち向かうのだがこうした実戦では
時に相手が予想もつかない戦法で攻めて来る事もある。
それこそ今の女が懐から取り出して投げつけて来た、あの謎の白いボールの様に。
(この世界にも相手の隙を突く戦い方とか道具がしっかりとあるみたいだし、その辺りは少し安心したぜ)
そこまでレベルが低くない世界だと言う事に、何処か安心している自分が居るのにジェイヴァスは気づいていた。
(さってと、ここで立ち止まってる訳にもいかねえな)
それと先立つ物が無ければ……と今しがた絶命させた女の懐をごそごそと漁って、ジェイヴァスはお目当ての財布に入ったこの世界の金をゲットした。
(そこそこって所か。とにかく町に戻って身支度を整えなきゃな。それとこの肩の手当てもしなきゃなんねえし)
自分の着ているジャケットの右袖を引き破って、即席の包帯として肩を止血した後にジェイヴァスは街道へと向かって歩き出した。
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