A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第23話
(これは……?)
太陽の光を受けてキラリと輝くその物体。
ジェイヴァスは木箱の破片を手で払い除け、その物体を拾い上げてみた。
(バッジ……だよなぁ?)
六角形の形でシルバーの縁取り、表面はオレンジ色で何かの紋章らしき模様が入っている。
所々に錆が浮かんでいるものの、まだまだ使用可能なバッジ。
木箱の大きさには見合わない大きさの物体にジェイヴァスは思考が追い付かないが、何かの足しにはなりそうだと考えて持って行く事にする。
あの男から奪い取った、自分の軍服が入っている麻袋にバッジを放り込む。
ただし何らかの衝撃でバッジだけ無くしてしまっては困るので、そのバッジは自分の軍服の胸ポケットの位置に他の勲章と一緒に取り付けておく。
(こうしておけば、よっぽどの事が無い限りは無くす事もねーだろーよ)
何時また激しいアクションになるか分からない。
あのケルベロスの様な獰猛な動物が闊歩する世界なら尚更であるので、袋と同じくあの男から奪い取った
この服のポケットに突っ込む訳にもいかなかった。
(確かにジャケットにもズボンにもポケットはついているが、絶対に落とさないって保証も無いしな)
だったらより安全な方法で管理するだけだ、と考えたジェイヴァスはふと気が付く。
(ああ……俺もやっぱり軍人なんだな)
軍では規律が重視される、典型的な体育会系の縦社会である。
上官の命令には基本的に絶対服従。それは戦場だけで無く、普段の生活においても同じ事である。
分単位の時間で管理される生活スケジュールにプラスし、身だしなみも持ち物の扱い方も礼儀作法も全てだ。
入隊したての新兵は軍に馴染む為に、先輩隊員や上官の「指導」をみっちり受けさせられる。
時には理不尽極まりない要求をされたり、常識ではあり得ない行動を取らされたりもするのでそこで
耐えきれなくなり脱走する……と言うのは軍の一種の伝統的な風習とも言えなく無い。
特に、ジェイヴァスの様な前線で戦う部署なら尚更だ。
軍に入隊する動機はそれこそ様々である。
公務員で安定した生活がしたいから。
他に出来そうな仕事が無かったから。
武器や装備に触ってみたい。
親が軍人で、その影響で自分も入隊した。
そしてジェイヴァスの様に、軍人として戦う為に入隊を決める人間も居る。
部署によって違いはあれど、そう言う入隊希望の人間は等しく訓練に励む事になる。
そこでついて行けない新兵はドロップアウトして、ついて行けた新兵が先輩や上官となって次の世代の新兵に新しく色々な指導をするのだ。
軍ではチームワークが何よりも要求される為、指導を受ける側の新兵には個人の責任よりも連帯責任が重くのし掛かって来る。
1人の勝手な行動で作戦が失敗した結果、部隊がそのまま壊滅するのも良くある話だからだ。
そう言う理由で、訓練においても1人の失敗に関しては連帯責任で腕立て伏せをチームの他のメンバーまで
とばっちりとしてさせられる事があるので、こうした経験が新兵を規律ある1人の軍人に成長させる事になるのだ。
ジェイヴァスだって人間だから当然ミスもある。連帯責任で走り込みをさせられたり、逆に自分がさせてしまう原因を作ってしまう事もあった。
特に、ジェイヴァスの場合は突っ走りがちなトラブルメーカーであるが故に口よりも先に手や足が出てしまうタイプで、
ハッキリ言ってしまえば上官や同期は元より後輩達からの人気も高くない。
戦場でもその性格が災いして、危うく作戦失敗になりかけてジェイヴァスは除隊処分になりかけた事もあった。
今でも根本的な性格は変わっておらず、年齢を重ねて少しは落ち着きを見せ始めて来たとは言えども
やっぱり煙たがられている事に変わりは無いのだった。
しかし、ジェイヴァスも新兵の頃から規律だけは叩き込まれて来た為か身の回りの事は出来る限り自分でやる癖がついている。
今のバッジの管理もそうであり、物を無くさない様にする為の知恵を頭から捻り出した結果が「軍服に取り付けておく」と言う方法だった。
(さってと、お目当てのモンも回収出来たみてーだし……一旦町に戻るとするか)
他に何か売り捌けそうな物を探し、ジェイヴァスは2階の残り2つの部屋ももう1度見て回ってみる。
倉庫の方は一目見て分かる位のガラクタばかりだったが、応接室の方には高そうな花瓶とテーブルクロスがあった。
それとさっきの小部屋であのカギを隠す様に壁に掛けられていたあの絵画を取り外して、これで合計3つのバッジ以外の品を回収しておく。
(これも売れば金になるかも知れねーな)
生き抜く為にはこうでもしなければな、と思いつつジェイヴァスは遺跡の外に出ようとしたその瞬間窓の外にとんでもない光景を見てしまう事になる!!
(あいつ等……一体……?)
1階にある大きな窓の外には、明らかに武装している10人位の集団がバタバタと忙しなく走り回っているのが見えた。
そして、その集団に指示を出しているのはジェイヴァスの目から見ても明らかに、あの時斧を構えて自分の方に
向かって来た紫色の髪の男と槍使いの金髪の女だった……。
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