A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第21話
狭いこの部屋だけあって探す事の出来るスペースも限られている。
(流石に1000年以上ほったらかしだっただけあるぜ)
だがここで、そんな部屋の状態にジェイヴァスは違和感を覚えた。
(……いや、やっぱ変だぜ。1000年も経ってりゃあもっとボロボロになってても
良い筈だよなぁ? その割りには3ヶ月位掃除していない程度の汚れ具合だぜ)
屋内で雨や風に当たっていなかったから、そう言う自然現象の影響を受けなかった分
これだけの汚れ具合で済んでいるのだろうか? と考えてもジェイヴァスの心の中には疑問が残ったままだ。
(外側が山にあれだけ食われそうになっていたんだ、この遺跡の内部だって山に食われててもおかしくはねえと思うんだがな)
地球で何時の日か見た事があるドキュメンタリー番組。
内容は「地球上から人間が居なくなったら、残されている人工物はどうなってしまうのだろうか?」と
言うものだったのを今でもジェイヴァスはハッキリ覚えている。
(うろ覚えだが、確か植物の繁殖力と成長力は物凄いからいずれ地球は昔の姿の様に緑豊かな惑星に
戻って行くってエンディングだった覚えがあるぞ)
しかしここは地球では無くて、ジェイヴァスが覚え切れない何やら長ったらしい名前の異世界。
武器も防具も装備出来ない訳だから、この遺跡の今の状態だってこれで正しいのかも知れない。
もしくは、植物の成長のしかただって地球とは違う生態系の中で成長するのだとしたら勿論成長スピードも違う可能性が大いにある。
だから今の遺跡の状態を受け入れる事にして、ジェイヴァスは部屋の探索を再開する。
(んー、目ぼしい物は特に無ぇなぁ)
一通り部屋の中を探してみたが、ジェイヴァスの目に留まるのはホコリまみれの役に立たなそうな物ばかりであった。
「ちっ、何も無しかよ!」
イラついたジェイヴァスは、思わず手近に掛かっているこれまた汚れとホコリだらけの小さな絵画をグーパンチで殴り付ける。
……すると。
「……?」
殴り付けたにしては何だか感触が軽い気がする。
その感触に違和感を覚えたジェイヴァスは、その絵画を壁から取り外してみた。
「あっ、成る程な……」
ちょっとだけジェイヴァスが感心した表情になる。
何故ならばその絵画を取り外してみた裏には小さな穴が開いており、その穴の中に小さな金属製の古めかしい……良く言えば
アンティークショップでコレクションとして売られていそうな鍵が置いてあったからだ。
この鍵は一体何の鍵なのだろうか?
それを手に取り、部屋の中を再度探してみるものの特に鍵穴らしい場所は見つかりそうに無い。
(2階も見回ってみるとするか)
もしかするとそこにこの手に入れた鍵を使う事が出来る場所や物があるかもしれないと考え、先程の吊り階段の部屋へと
向かったジェイヴァスは2階へと上がって行く。
(後調べていないのは2階だけなんだよな)
まだ見慣れぬフロアであるが故に、何があるかは全く分からない。
無闇に突っ込んで行くスタイルだった若手の頃とは違い、今の自分はベテランの落ち着きを持っている筈だと
自分に言い聞かせつつジェイヴァスは進んで行く。
若さ故の過ちはそれこそ若い時だけで十分なのだ。
(本当にここの遺跡は長い間、誰も足を踏み入れて無かったにしては余り汚れていないんだよなぁ……)
確かに小物や調度品の類にはホコリがわんさか溜まっているものの、1000年以上放置されていたとは思えない位の
状態の良さで遺跡が保存されている。
さっきの鍵を見つけた小部屋の状態でそれをヒシヒシと感じた事を思い出しながら、ジェイヴァスは吊り階段を使って
2階へと上がった先で思わぬ物を見つける事になるのだった。
吊り階段を上がった先には1本の細長い通路があり、ドアが左右に1つずつと正面の突き当たりに1つ。
つまり2階のフロアは部屋数が全部で3つと少なく、1つは倉庫になっており特に目ぼしい物は無かった。
1つは客間らしき場所であり、応接セットの様なテーブルと椅子に大きな窓と何かの事務所やオフィスの部屋をイメージさせる造りになっていた。
そして最後に通路の突き当たりに存在しているドアを開けた先は、横に広い造りになっている部屋だった。
あの鍵はこの部屋のドアを開ける為に使う事が出来たのだが、問題はそのドアの先だった。
「……何だ、こりゃあ……」
思わずジェイヴァスも絶句してしまうその物体。
広い部屋の中央には明らかに怪しい大きな立方体状の木箱が1つ、怪しい紫色の光を出しながら鎮座している。
そしてこの箱の側面には鍵穴がついており、まさか……と言う考えでジェイヴァスは鍵穴にさっきのドアを開けた時の鍵を差し込んで回してみる。
するとカチャリと言う音と共に、木箱のロックが外れる音がした。
一体この中から何が出て来るのだろうか。
(パンドラの箱はギリシャ神話の中だけで十分だぜ!!)
緊張感と恐怖感と、そこにちょっとのワクワク感をミックスさせた感情でジェイヴァスは木箱の箱を思い切り押し上げた。
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