A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第20話
遺跡の入り口が見えて来たのはすぐの事だった。
若干上り勾配になっている一本道を進み、うっそうとしている森の中を抜ければもう目の前だったからだ。
年月が経過して至る所にひび割れや汚れがあり、既に山に食われかけていると言っても過言では無かった。
そんな遺跡が何本もの柱の間を抜けた1番奥の場所でひっそりと迎えるのは、当時のこの遺跡の
豪華さの面影を残している部分らしい赤茶けた両開きのドアだった。
(ロックがかかっているらしいけど、どうやったら開くのかはまだ分からねえのか……)
御者の言っていたその情報が正しいとするのなら、自分もこの両開きのドアを開く事は出来ないと言う事になる。
そう考えて、物は試しとばかりにジェイヴァスはドアの取っ手に手をかけてみた……その瞬間!
「うぉ……っと!?」
長い年月の中で老朽化していたのだろうか、取っ手に手をかけた瞬間にバキッと言う音がしてその取っ手が壊れてしまった。
(何だよ、びっくりさせやがって)
取っ手が壊れた位で、ドア自体は押すか引くかすれば開いてしまいそうである。
だがその時、ジェイヴァスはあれっ? と言う疑問の感情に気がついた。
(……待てよ? 確かこのドア、まるで姿が見えないみたいに手がすり抜けちまうって話じゃ無かったか?)
馬車の中で、御者から確かにそう情報を聞いたジェイヴァスは一気に警戒心を強める。
実際の所、普通に取っ手に触る事が出来たばかりかその取っ手を破壊してしまったのだ。
(まぁ待て……このドアに触る事が出来ないのかも知れねーだろ?)
自分自身にそう問いかけつつ、ジェイヴァスはドアをグイっと力強く押すモーションに入った。
すると……。
「おっおおっ、おっ!?」
すり抜けたのでは無い。
普通に、ごく普通の感覚でドアに手がぶつかってそのままグイっと奥に向かって錆び付いた音を立てながら開いてしまったのである。
「な、何でだよ?」
思わずそう呟いてしまう程に呆気無く開いてしまったその両開きの扉。
考えられるのはあの御者が嘘をついていると言う事。
(あの馬車のヤロォ……騙したな?)
ドアに触る事が出来ただけでは無く、呆気無く開いてしまった所でジェイヴァスは心の中で悪態をついていた。
(良くもまぁ、あんな王宮魔術師がどうのこうのだの忘れ去られた遺跡だのって……くそ、今度会ったら覚えてやがれってんだ)
とにかく、開いてしまったのであれば中に踏み込む事が可能だ。
せっかくここまで来たんだし、中を見てみるかと言う事でジェイヴァスは生物の気配を探りながら慎重に進んで行く。
(昔の俺だったら後先考えずに突っ走っていたもんだが、やっぱり人間は歳を重ねると落ち着きが出るのかねえ?)
自分で自分の事をそう分析しつつ、ジェイヴァスは突っ走り過ぎない様に遺跡の中に踏み込んでブーツの音を
コツコツと高く響かせながら進む。遺跡の中は明かり取りの窓が至る所に設置されているので、最初のあの
山の上の場所で発見した暗い穴の中の様にスマートフォンの明かりに頼らなくとも進んで行ける様になっている。
しかし、それは太陽の光が出ている時間帯限定の話だろうとジェイヴァスは考えていた。
(夜になる前にここから出なきゃ、真っ暗で何も見えなくなりそうだぜ)
まだまだ日没までには十分な時間がありそうだと、窓の外に見える景色を見ながら遺跡の奥に進む。
と言ってもこの遺跡は森の近くにあるせいかそこまで広い場所では無い様で、奥の方には2つのドアがあるだけだった。
(左と右のドアか……最初のあの場所を思い出すぜ)
スイッチを押した瞬間、色々なトラップが自分を襲った事は記憶に新しいのでジェイヴァスは思わず足取りが止まりかける。
だけどドアの先には一体何があるのだろうかと気になるのもまた事実なので、用心しながら進むに越した事は無い。
(こんな遺跡みてーな場所、地球に居た時だって俺にはまるで縁が無かったからなー)
地球には色々な遺跡があり、アンコール遺跡の様にそれこそ世界遺産に登録されている場所も存在するが、
この世界でもここと同じくまだまだ色々な場所に色々な遺跡があるのだろうかとジェイヴァスは疑問を覚えつつ左のドアに入る。
ドアの向こう側は、ジェイヴァスのイメージとは若干違うものになっていた。
(……ありゃ?)
その部屋には大きな吊り階段がかかっており、まだ2階部分もあるらしい。
吊り階段の周辺には特に何も無い部屋の為、まだここに用は無い。
(となると、もう1つの方のドアに行ってみるか……)
今度は右の方のドアへと足を進めるジェイヴァスだったが、そこの部屋も吊り階段の部屋と同じく狭い部屋である。
違うのは吊り階段が無い代わりに行き止まりになっており、絵画や装飾品が埃まみれの状態で置かれている部屋だった。
そして食料の類も保管されていたが、ジェイヴァスの本能がそれ等を見て警鐘を鳴らす。
(いや、これ食えって言うのは無茶だぜ)
死んでしまったら元も子も無いので食料品の類はすぐに諦め、他に何か使えそうな物が無いか探してみる事にした。
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