A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第18話
「そうだ、お前の言っていた違和感を使えば良いな」
「えっ?」
キョトンとしたリーダーの右腕……最早副リーダーと言っても良い立場の女に対して、
リーダーは「待った」の意味を込めて右手の手のひらを女に向ける。
「待て、この捜索方法は俺達だけじゃあ無理だ。一旦部下達を全員集めて、それから話そう」
その方が効率も良いしなと女に言ってから、まずは町の至る所を散策している部下達を集めに歩き出すのだった。
(私の違和感……あ、もしかして!)
歩き出したリーダーの背中について行く副リーダーの女が、以前のリーダーとの会話で話していた
その違和感とリーダーの提案を頭の中で結び付ける事までそう時間はかからなかった。
「……と言う訳だ。遺跡でお前達にこれを話しておけば良かったな、すまねえ」
部下達を集め終わり、更に町の人間に聞き込みをした結果辿り着いたこの宿屋のマスターを文字通り締め上げて、
自分達の追いかけるターゲットがここに泊まっていたと吐かせた盗掘団のリーダーは、申し訳無さそうに部下に頭を下げる。
「何言ってるんですかリーダー!」
「殺されたヴィスの仇、とってやりましょうぜ!」
「そうそう、あたいらも協力するからさ!」
決して短くは無い付き合いの、このアイクアル王国中から集まって来た男女混合のメンバー達が一斉に声をあげる。
その様子を見て、思わずリーダーは感激に目頭がジーンと熱くなるのを感じた。
「う……うおおっ、お前達みたいな仲間が出来て、俺は幸せだぜ!」
少しばかりの幸せな気分に浸った所で、リーダーはキッと表情を引き締めて左の拳を振り上げて叫ぶ。
「良いかお前等、俺の彼女だけで無くヴィスまで手にかけた憎き男を絶対に捕まえるんだ! 行き先はそこで
転がって死んでいるこの宿のマスターが吐いてくれたんだ。マスターの死を無駄にしない為にも、俺達がやるしか無い!」
そこまで声を張り上げるリーダーの隣から、今のリーダーの宣言の中に出て来たリーダーの彼女でありこの盗掘団の
副リーダーでもある女が1歩歩み出る。
「目印はヴィスと同じ格好か、あるいは上下が緑色の貴族風の服装よ。そして……」
そこで一旦言葉を切って、副リーダーの女は自分の違和感からリーダーが導き出した最大の手がかりを部下達に伝える。
「魔力が感じられなかった人間だから、そう言う人間ならすぐに見つかると思うわ。でも油断しないでね。かなりあの男は強いわよ」
魔力。
それはこのエンヴィルーク・アンフェレイアで生まれ育った人間や他の動物も絶対に持っていなければおかしいものである。
この魔力は生命の源とされている事もあって、魔力を利用した技が魔法であり、魔力を使って動かす色々な装置が
長い歴史の中で開発されて来た。
魔力は生物ごとに、それこそ身長と同じく個人差があって保有出来る量が決まっている。
この魔力は当然血液の中にも含まれており、魔法等を使って減る事はあっても血液の中にある魔力が最低限
残ってくれるので命まで落としてしまうと言う事は無い。
しかし、全くその魔力が無いと言う事例は今までにこの国ではあり得なかった事なのだ。
となれば、その魔力が感じられないと言う最大の違和感を利用しない手は無いだろうと言うのがリーダーの考えだった。
「王国騎士団にも色々と俺達に手引きをしてくれる奴等が居るからな。金さえ握らせてやればあいつ等は幾らでも動いてくれるしよ。
それに俺達にはまだまだ仲間が大勢この王国中に居るんだ。奴を捕まえるのはなかなか簡単かも知れねえな」
今ここに居る盗掘団のメンバーはいわば本隊。
分隊に該当する支部の様な場所が王国中の至る場所に存在しており、魔法の技術が発達している町「限定」ではあるが
連絡を通信テクノロジーの装置で取り合う事だって可能だ。
「でも、くどい様だけど油断しないでね。あの男と戦った私なら分かる。あの男はなかなか強いからね」
「分かってるさ。良し、それじゃあお前等気ぃ抜くんじゃ無えぞ!!」
あの金髪の男を捕まえる事に対して意気込むメンバー達が次々と宿屋の出入り口から出て行くのを見て、最後にリーダーがそれに続く。
そして、入り口のドアを抜けて外に踏み出す直前に振り返る。
「恨むなら、あの男を恨むんだな」
リーダーの部下達の手で静かに集団リンチされ、最後に彼女の槍で心臓を貫かれて息絶えたマスターに対してポツリとそう呟く。
自分達の情報が万が一マスターから漏れると厄介だし、証拠はなるべく残さないのが鉄則だ。
(とは言っても、これだけの大人数じゃあ目立ち過ぎるからな。どこかでメンバーを分けて行動しなきゃすぐにこのマスター殺しの
犯人が俺達だって足もついちまうぜ)
口封じに殺したは良いものの、死体を隠すだけの場所を見つけ出す事が出来なかった為やむを得ずその場に放置するしか無かった。
我ながら詰めが甘いな、と思いつつも今の内に出来るだけ遠くに逃げる事と足取りを掴ませない為のメンバーの分散を頭の中で
進めつつ、リーダーは自分の愛馬へと向かった。
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