A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第17話
「ヴィス……何でこんな事に……」
首がおかしな方向に曲がってすでに息絶えているどころか、持ち物が武器と防具以外
綺麗さっぱり持ち去られてしまっている、自分の仲間だった男の亡骸を見下ろして呟くのは、
このアイクアル王国全土を股にかけて活動している盗掘団のリーダーだ。
その横からひょいと顔を覗かせたのは、ジェイヴァスに殺されかけながらも道案内をする事で一命をとりとめたあの女だ。
「何処かから落ちて死んだ訳じゃ無さそうね。ヴィスは……誰かに殺された?」
「殺された……?」
自分の右腕的な存在でもあるその女の言葉に、リーダーはゆっくりと涙を拭いながら顔を上げる。
「どうしてそう思うんだよ?」
率直なリーダーのその質問に、女は自分の体験から考えを述べ始めた。
「ヴィスはそんじょそこらの槍使いじゃ無いわ。私の槍の師匠でもあるからね。だけどほら、私の師匠とも
あろう人間が何かで斬られたって言う傷が全く無いのよ」
「……言われてみれば確かにそうだな。首の骨を折られて即死って所か」
女の分析を聞いて冷静さを取り戻したリーダーも、ヴィスの亡骸を見下ろして自分の大切な仲間が
どうやって殺されたのかと言う事を考え始める。
「ヴィスは俺達のグループの中では随一の実力を持つ槍使いだぜ。それに、殺されたのがここだとするならば
圧倒的に槍の長さが有利な筈なのに、相手はそれをかいくぐってヴィスを殺す事が出来たって事になるよな?」
「それかもしくは不意打ちを食らったかね」
でも……とリーダーが今度はその女の分析に続ける。
「俺達はこの町では『まだ』何も恨みを買う様な事はしちゃいねえ。だったらこの町の奴等に恨まれる様な事だって無い筈だぜ」
「他の町や村で恨みを買った人間がここに居たって事になるのかしら? でもそれだったら何故、武器と防具だけを
ここに残して後は服とかの持ち物を全部持って行ったのか……って言う辻褄が合わないわよ」
考えれば考える程余計に頭がこんがらがりそうになるリーダーは、駆けつけたこの町の警備兵に事情を聞かれる為に
その場を後にして詰め所に向かう。
そこでの事情聴取では「何時もの通りに」自分達の身の潔白を証明して早々に解放される。
「はっ、お前の口の上手さはやっぱり最高だぜ」
「褒められても何も出ないわよ。それよりも、ここの警備も甘いわね。傭兵団だって事にしておいて、あの遺跡に向かう道での
目撃情報もしらを切り通せば、誰も私達があの遺跡を荒らしていたって言う証拠が無いんだから解放するしか無いわよねえ」
「そりゃそうだ。証拠を持って来いってんだよな!」
はっはっは、とリーダーは笑いながら歩くがすぐに真顔に戻った。
「……んで? ヴィスを殺した犯人の目星はついたのか?」
「ええ。でも……多分貴方も私と考えている事は一緒だと思うわよ」
「なら、俺の考えを言わせて貰っても良いんだな?」
「どうぞどうぞ」
リーダーの申し出を快諾した女に、そ快諾された立場のリーダーは犯人の予想を話し始める。
「お前が言っていた、あの金髪の男だな?」
「どうしてそう思うのかしら?」
女の疑問に対して、リーダーはあの遺跡で縛り付けられていた女を木から解放した時の事を思い出しつつ
自分の予想も織り混ぜた答えを返す。
「山の上で、お前は木に縛り付けられる前から違和感があの男にあったって言っていたな?」
「ええ、確かにあの男からは凄く違和感を覚えたわ」
「そのお前が言っていた違和感に、もしあの男が気がついていたとしたら……? そしてお前は、あの男の緑の服装は
この国じゃあなかなか見かけない様な服装でもあると言っていた」
そこまでリーダーが言うと、女はあの男のその特徴的な服装を記憶から思い返して呟いた。
「そうね。首から布が垂れ下がっていたから……少なくとも一般の人間が着る服って気はしなかった。
どちらかと言えば、貴族の人間が着る様な服だったわね」
「ならば、こうした田舎の更に田舎みたいな町なら浮くのは間違い無いな」
更に、女は自分のやられたあの戦いでの出来事からもあの金髪の男がヴィスを殺したのでは無いかと推測して行く。
「あの男は私の槍を上手くかわし、そして首を絞めて殺そうとして来たわ。そして今回も狙われたのは同じく首だから、
こうした接近戦の格闘にはかなり手慣れている人間だとも思えるわね」
「となれば、何処かの傭兵か騎士団上がりか……何れにせよ、普通の人間じゃあ無いのは分かった。
そして、ヴィスの服を奪ったのはあの服装じゃ目立つから変装の為に着替えたんだろうな」
しかし……と男は歯軋りをする。
「ヴィスの服装は在り来たりなもので、その辺りを歩いている人間でも普通に着ている服装だから、部下に
聞き込みさせた所で行方を追うのは難しいぜ、こりゃあ」
そうだとしたら、どうやってあの男の行方を追うかと言うのが課題になるだろうとバリバリ頭を掻きながらリーダーは悩む。
だがこの後、そんなリーダーの頭に1つのアイディアが閃くのだった。
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