A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第14話


(……行ったか……?)

フタを少しだけ上げて、見える範囲で先程の連中が路地を過ぎ去るのを待っていた。

ゴミ箱の側面に身を隠せれば良かったのだが、あいにく荷物が散乱していたのでそれは出来なかった。

それでもあの連中と遭遇するのは回避出来た様なので、ジェイヴァスはゴミの臭いに

顔をしかめながらもホッと深く息を吐いて安心感で満たされる。

(あー、危ねー危ねー……)

だが、何処かで軍服をクリーニングして臭いを落とさなければ別の意味で有名人になってしまう事は避けられないだろう。

(くそっ、一旦宿に戻るか。そして服をクリーニングして貰って……)


色々と思考を巡らせていたジェイヴァスだったが、その時後ろからトントンと肩を叩かれる。

「……ん?」

思わず振り返ったジェイヴァスの目に、信じられない物が飛び込んで来た。

ギラリと鈍く光る槍の先端。

それを構えていたのはさっきの女……では無くてもっと背の高い茶髪の男だ。

「動くな。お前は昨日、リーダーの女に手を出したって言う野郎だな?」

「はっ? リーダーの……女?」

何のこっちゃ? と言うリアクションのジェイヴァスの茶髪の男は更に槍を突き出して来る。

「とぼけんな。リーダーの彼女にお前は手を出したって本人から報告されてんだよ。

木に縛り付けて色々やってたらしいじゃねえか」

「あ……」


木に縛り付けて、の部分でジェイヴァスは昨日の出来事が一気にフラッシュバックする。

しかし、その後の話を良く良く聞いてみるとどうやら自分はとんでもない方向に誤解されて

いるらしいとジェイヴァスは知る事になる。

「木に縛り付けて、それから顔と顔をくっつける位までリーダーの女に近づいて色々やったそうだな」

「色々……?」

「そうだ。それにあの遺跡の中でお前はリーダーの女を地面に押し倒して、服をその後に破ったって

話も彼女から聞いてんだ。誰の女に手を出したか分かってんだろうな!?」

「え……? お、おい待て、何か誤解してねえか!?」


話が変な方向に向かっているのだとジェイヴァスは気が付き始めたが、そのジェイヴァスの目の前にいる男の怒りのオーラはまだ大きくなる様だ。

「途中で怖じ気づいたかどうかは知らないが、地面に倒して服を破り、更には遺跡の外までわざわざ連れ出してやる事をやろうとした訳か」

「いや、ちょっと待て……」

「あの女もなかなかの使い手だが、お前は更にその上を行くだけじゃ無くて変態でもあったんだな。リーダーがこれを知ったら、

間違い無くお前は八つ裂きにされるぞ」

「だ、だからちょっと待て……」

「リーダーの彼女の言っている服装や見た目の年齢も一致するし、じきに仲間もここにやって来るだろうからお前はもう終わりに」

「……だから、黙れっつってんだよ!!」

喋る事に集中していた茶髪の男は、いきなり大声を出して動いたジェイヴァスのその動きに対応する事が出来なかった。

ジェイヴァスは目の前に突きつけられている槍の先端をスパッと手で薙ぎ払い、男が次のモーションに入る前に

彼の着ている上着の胸ぐらを掴んで素早い背負い投げを繰り出した。

その背負い投げをされた槍使いの男は、一瞬の内にグルンと世界が回って背中から地面に叩き付けられる。

「ぐああっ!?」

槍を握ったままで投げられてしまった男は、当然まともに受け身も取れずに叩き付けられる格好に

なってしまったので意識が少し遠のくのを感じた。


一方のジェイヴァスも、男を投げた時に槍が自分に当たらなくて良かったなと安心。

しかし安心している暇は無い。

また起き上がって来られたら面倒なので、地面に倒れて呻いている男に馬乗りになったジェイヴァスは

ガッチリとロック技をかけて男を拘束。

「おい、お前に幾つか聞きたい事がある。素直に吐くんだ」

「な、何……」

「この町は一体どの国にあって、その国のどの辺りに存在している場所なんだ。そして、この世界は一体何て言う世界なんだ?」

「なっ、世界……? それを聞いて何になぐうぁああ!?」

「聞かれた事にだけ答えろ!!」


的確な押さえ込みでしっかりと相手の関節を極めるジェイヴァスに、男は悲鳴を上げつつも答える。

「こ、この世界はエンヴィルーク・アンフェレイアだよっ!! そしてこの国はアイクアル王国だ!! この町は

アイクアル王国の北東の方にある!!」

「分かった。それじゃあ次の質問だ。1番人が集まる町や村などの場所を教えろ。そしてそこにはここからどれ位で

どうやって行けば辿り着く?」

「お……王都に決まってんじゃねえか。王都だよ! ここからずっとずっと南西の方に向かえばあるさ! 馬なら20日位で、

ワイバーンとかドラゴンを使えばもっと早く着くよっ!」

「そうか、感謝する。それじゃあ次が最後の質問だ。お前はこの後、俺を如何するつもりだ?」

その質問に、男は押さえ込まれながら自分の命取りになるセリフを言ってしまう。

「決まってるだろっ、お前をリーダーの所に連れて行って、全員で女に手を出した罰で集団暴行だ!」

「はっ、ならその前にこうするしかねえな!」

だったら殺られる前に殺る考えで、ジェイヴァスは男の首を両手で持ち上げて一気に横に捻り、首の骨を折って絶命させた。


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