A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第15話


絶命させた男の亡骸を見下ろした所で、はたとジェイヴァスは思いつく。

(あっ、こいつの服を奪って変装すれば良いのか)

この絶命させた男の服は、紛れも無く今の自分が着ている服と違ってこの世界のものである事に間違いは無い。

だったらこの臭いのついた軍服を着続けるよりも、遥かに安全に逃走する事が可能だ。

そうと決まれば……と、路地裏である事も幸いしたのでジェイヴァスは男の死体を

もう少し路地の奥に引きずって行き、そこで素早く男の服を剥ぎ取って行く。

(サイズは……んー、ちょっとでけーか?)

それでも着られない大きさでは無いので、軍服を手早く脱いで死体から剥ぎ取った服を着込んで行く。

(着方はこれで大丈夫かな?)

こう言う格好の服装なんて全然地球で縁の無いジェイヴァスは、着方をチェックしつつ何とか変装する事に成功した。


だが、この後にジェイヴァスは予想だにしない出来事にまたもや遭遇する事になってしまう。

それは男が身につけていた胸当てを身につけようとした時に起こった。

(防具もこの際だから頂いちまおう。緊急事態の時に役に立つかも知れねえし)

装備があるに越した事は無いからな、と思ってジェイヴァスがその胸当てを手に取り、取り付けの為に

いざ自分の胸に押し付けた……その時!!

「……ぐぅあ!?」

いきなり胸全体に広がる痛み。静電気の痛み等とは比べ物にならない位のショックがある程の痛みだった。

それに伴って激しい光と大きな破裂音が路地裏に響き渡る。

「なっ、何だぁ……!?」


いきなりの出来事に呆気に取られるジェイヴァスだが、気を取り直して一体何が起こったのかを調べる為に

地面に取り落としてしまったその胸当てに近付いてみる。

(……さっきと別に変わった所は無いけれど……でも、あの痛みと光と音は尋常じゃ無かったぜ)

とりあえずもう1回装備しようとしてみれば何か分かるかも知れないと思い、再度ジェイヴァスは胸当てを

胸の前まで持って来る。

だが、再度試してみても結果は同じく痛みと光と音が発生するだけで変わらなかった。

「ぐぅ……っ、な、んだよこれっ……!!」

原因は全く不明。しかしジェイヴァスには分かった事が1つだけある。

どうやら、この防具は自分は着けられないと言う事らしい。

(こりゃー駄目だな……)

仕方が無いので防具は諦めて他の服を手早く身に着けてから、さっさとこの路地裏から立ち去る為に動き出そうとする。


だが、そんなジェイヴァスの目に入る物があった。

(あ……槍は持って行くか)

武器があれば少しは安心出来るだろうと思い、男が持っていたその槍を手に取って持ち去ろうとした……が。

「ぐぅっ!?」

槍の柄を握ったその瞬間、さっきの胸当ての時と同じ様に光と痛みと音がジェイヴァスに襲い掛かった。

余りの痺れと痛さに、ジェイヴァスは槍を落としてしまう。

(こっ、これも駄目か……!?)

もしかして、こっちの武器は触ると駄目なのか……? と思いつつツンツンと槍の柄をつついてみるが、今度は反応が無い。

(……あれ? 今のは一体何だったんだ?)


この武器は一体どうなっているんだと言う疑問を持ちつつ、ジェイヴァスはつついても問題無いのであれば触ってみても

やっぱり問題無いだろうと言う事でもう1度槍を握って持ち上げるが……。

「うぐぅあああ!!」

凄い音がしてまたもや衝撃がジェイヴァスを襲う。まるで意味が分からない現象である。

(な、何だこれ……意味が分からねえ!!)

更に4回も音や光を出してしまったせいで、自分がやって来た路地の出口辺りからバタバタと慌ただしい足音が聞こえて来た。

「くそっ、ヤバイ!」

こうなればさっさと退散するべきだったかと自分の行いを悔やみながら、ジェイヴァスは武器も防具も諦めて服を奪って退散する事に。


臭いのついた軍服は捨てて行こうと思い、さっきまで自分が隠れていたゴミ箱にグルグルと丸めて放り込んで

立ち去ろうとしたのだが思い止まった。

(いや……待てよ。この軍服はまだ何かに利用出来そうだし、もし俺がこの先何かのショックでこの世界が好きになったとしても、

地球に帰りたいって言う気持ちを忘れない様にする為に持ち続けていた方が良いな)

一見利用価値が無さそうな物でも、何かの時に意外な形で役に立ったりする事があるのだ。

それに、この場所に自分の軍服を残しておいたらあの連中がゴミ箱の中から発見しないとも限らないのでやっぱり持ち去るのが

良いだろうとの判断で、男が背中に背負っていた麻袋を奪い取ってその中にガバッと突っ込んだ。

いきなり来てしまったこの変な世界でやってしまった殺人。

しかし、右も左も分からない上に頼れる人間も居やしない。

むしろ今の状況では敵しか居ない様なこの状況で、生きて行く為にはこうでもするしか無いのだとジェイヴァスは強引に自分を納得させる。

(軍人だとかそんな事以前に俺だって人間だ。ええと……えん……何とかって言うこんな世界でむざむざ死んでたまるかってんだよ。さっさと退散だ!)


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