A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第13話


結論から言ってしまうと、その夜も次の日の朝も特に何事も無く過ごす事が出来た。

あの集団が自分の居る場所に何時やって来ても良い様に、ジェイヴァスは眠りにつくまで

警戒心を維持したままだったのだが杞憂に終わった結果になった様だ。

(でも、まだまだ油断は出来ねぇな。何時何処であいつ等と出会っちまうかは分からねえ)

それ以前に全く知らない世界なので、地球とはまた違った常識があるのはジェイヴァスでも大いに考えられる事だった。

(今日は町中で情報収集してみっか)

あの連中に出会わない様にすればそれで良い。

それだけに注意して、朝食を摂ってからジェイヴァスは町の中へと軍服姿で繰り出した。


(この格好じゃあ目立ち過ぎるぜ。着替えの目処も立たせておかなきゃな。仮に俺が指名手配の犯人だったとしたら、

この町しか見てねえがこんな軍服姿は今の時点で見た事がねえし)

戦場においても、目立つ目標物はそれだけで格好のターゲットになってしまうのだ。

それは人間も同じ。

そして同じだからこそ、森の中で写真を取った時にそのまま森に溶け込んでしまう位の服装を始めとして、それも軍に限らず

地球上の色々な分野でカモフラージュテクノロジーが発達していると言って良い。

だけど、この軍服しか着る服が無い以上はこの姿で出歩くしか無い。全裸やパンツ1枚で出歩くのは、追う追われる以前の

問題で人間として危険人物に該当してしまう。


(本当は夜に出歩いた方が目立たなくて済みそうだが、昨日の夕方にこの町に着いた時でさえ全然人の姿が無かったからな)

やはり夜に出歩くのは色々と不都合があるのか。

はたまたこの町の住人は早寝早起きで健康に気を使うタイプの人間が多いのか。

(でもそれを考えると、ヨーロッパの店……特にドイツとかじゃあ夜にはホテルとかバーとか以外はさっさと店じまい

するからなー……そこを考えると、この町もそう言うライフスタイルだからあんまり変わんないよな)

だったらお互い様じゃねーか、と今は遠いヨーロッパに思いを馳せつつ1人で突っ込んでしまった。

とにもかくにも情報収集が必要なのは間違い無いので、目立つ行動はしない事を大前提に、そして自分の軍服姿が人々の記憶に

強く残ってしまう前にとっとと終わらせてしまえば良いとジェイヴァスは決めて、人通りが多そうな場所へとブーツで土の地面を

踏みしめながら向かった。


人通りが多そうな場所と言っても、この町自体はさほど広く無い。

メインストリートに該当する街も、宿から少し歩けばすぐに見つかった。

今の時間帯はまだ朝が早いらしく、人通りもまだまだ少ない。

(こりゃラッキーだぜ)

軍隊の朝は早いので、ジェイヴァスは早く起きる事には慣れている。

更に言ってしまえば、非常収集や緊急出動等も想定されており睡眠は比較的浅くなりがちになるのだ。

とは言うものの、疲れている時は本能に打ち勝つ事が出来ずに眠りが深くなってしまう事もあるので一概には言えないのもまた事実だが。

そんな生活で早起きに慣れているジェイヴァスは、この人通りがまばらな時間に出て来た事で情報収集もしやすいと判断して

早速聞き込み調査スタート。


……の、筈だったのだが。

(……ついてねえ。何でこんな時にこんな場所で……)

いや、今までの情報から照らし合わせてみるとそれが自然な事であるのに違いは無いが、タイミングが悪すぎる。

事の起こりは数分前、ジェイヴァスが今隠れているゴミ箱に隠れる少し前。

宿のある場所からスタスタと歩いて出て来たメインストリートで早速街頭インタビュー調査をしようとしたジェイヴァスだったが、

自分が歩いて来た方向とは反対側から歩いて来たその人物達に目を疑う。

(……げっ!?)

その人物達は遠目で見る限りでは大体7〜8人。

そしてその中心で威風堂々と言う言葉がぴったりマッチしている様な、自信に満ち溢れている歩き方をしているのがあの時の

斧を持って走って向かって来た紫髪の男。


しかもジェイヴァスの方から見て右隣に居る仲間と思わしき人影は、間違い無くあの時あの場所でジェイヴァスに向かって

槍を突き出して攻撃して来た金髪の女に間違い無かった。

その人物達の姿が目に入ったその瞬間、地球に居た時の11月下旬の様な時季に発生しやすい静電気を感じた時の反射神経も

ビックリしてしまう位のスピードで、ジェイヴァスは近くの路地裏へと続く脇道に飛び込んだ。

そのまま様子を窺っていると、あの集団が自分の居る脇道の横を歩いて過ぎ去ろうとしている。

(ただ歩いて行くならそれで良いが、もしこっちを見られたら……)

そんな考えが頭をよぎったジェイヴァスはキョロキョロと辺りを素早く見渡す。

そうして見つけたのが大きなゴミ箱で、とっさにジェイヴァスはそのゴミ箱の中に身を潜める事にしたのである。

ゴミ箱に身を隠した事で服が汚れてしまうとか髪が臭くなってしまうとか、そんな事は命の危機と言う事実と比べてみれば

些細な事なので、ジェイヴァスは我慢してゴミ箱のフタを閉めるのだった。


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