A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第13話


(……死んでいる)

もうすでにその女……自分があの爆発事件の時に見かけた、やけに落ち着き払っていた様子の

女の死体を見下ろしてリオスは胸を痛める。あのメイドの時と言い、目の前で人が死んでいるのを

見ると心に来る物がある。

というのも、あの血の臭いの元はこの女の死体だった。心臓をナイフで一突きにされており如何見ても即死状態。

そして、その前にこの路地裏から出て来た人間に思い当たる節があった。

(まさか! ホルガーが……?)

路地裏から出て来たのは彼1人。この女の死体ともすれ違っている筈だし、関係が無いとは言い切れない。

いや、大いに関係がありうると見て良いだろう。

(これは重要参考人として見ておく必要がありそうだ)


だがその時、女の死体のそばにキラキラと何やら煌めく物が落ちているのを発見。

(……何だ、これは?)

その欠片を白い手袋をはめた手でリオスは手に取る。直径およそ1.5cmのいびつな米粒の様な形をしている

何かの鉱石の様な白みがかった灰色の……石?

(気になるな……)

リオスはその欠片をポケットに入れ、足早に大通りへと向かう。

そして大通りに出たりオスは騎士団に女の死体の事、ホルガーを見かけた事、最後に奇妙な欠片について報告する。

すると欠片の正体が分かった。

あの女の死体のそばに落ちていた欠片は、町の外に存在している昔鉱山だった場所で採れる事のある鉱石の欠片だという。

今でも残っている鉱石を求めて発掘作業に行く者も居るのだとか。

何でそんな欠片があの女のそばに落ちていたのかまではリオスも知る所では無いが、騎士団にとってはホルガーの存在と

共に重要な手がかりになるのだろう。

謝礼として西の町までの少しの路銀をくれた為に、リオスの不安も少しだけ解消された。

この路銀があれば今は一安心の様である。


そうしてリオスの不安も無くなった所で食料を必要な分だけまずは町で買い込んでから意気揚々と町の外へ出るが、

どうやら荷馬車などはまだ見当たらなかった。丁度タイミングが悪かったらしい。

(ちっ……出来れば荷馬車の手伝いをするから西の町まで乗せてくれる……様な事を期待していたんだが、そうそう上手くは行かないか)

流石に何でもかんでもご都合主義で物事が上手く行く、と言う訳では無さそうだが、良い持久力のトレーニングと運動不足の

予防に繋がるかも知れない。 なるべくポジティブに物事を考える事が戦況の好転に繋がる事もある、とリオスは教わって来た事も

あるだけあって、何時しか自然とそんな考えをする様になった。

(だが……結局の所はやはり事前の下調べや準備があってこその戦いだ。そして油断も禁物。相手がどれだけの戦力なのか、

敵の本拠地はどれだけのものなのか、そう言った事を事前にしっかりと調べ上げて策を練る事は、軍人としては基本中の基本だからな)

もともとのクールな性格もあいまってか、事前にしっかりと計画を立ててから行動する様に何時もリオスは心がけている。

しかし、それでも慣れないこの異世界と言う場所にプラスしてこうしたタイミングの悪さ等と言う様に運の要素も絡み合って来る為に、

その都度臨機応変な対応が必要になる。


だが、そこでふとリオスの足が止まる。

「ん? 待てよ……?」

ポツリと呟く。そう考えてみると、今の自分の行動は正しいとは言えないだろう。

食糧を買い込んだのは良いが、ここは荷馬車達の情報を集めて、もし乗せて行ってくれそうな馬車の情報があれば

それを利用した方が楽に辿り着けるのでは無いか。

(くそ、そうならば食糧を買い込んだのは間違いだったか……!!)

優柔不断と言ってしまえばそれまでだが、後悔先に立たずとも言う。

ひとまず町の人間たちにもう少しだけ……早くこの町から出たいのは山々だが、もう少しだけ情報収集するだけだから……と

リオスは再度町の中へと戻って情報を集める。

すると、荷馬車達が集まる場所で何と荷物の積み下ろしを手伝う代わりに乗せて行ってくれると言う馬車を見つける事が出来た。

ただし、荷物の中身に関しては何も聞かない事。これが条件だ。

別にリオス自身は西の町まで乗せて行ってくれればそれで良かったので、荷物の中身に関しては食料だろうが雑貨だろうが

何だって良いと荷馬車のオーナーに告げて交渉が成立。 何でも探してみて、何でも頼んでみるもんだなーと妙にリオスは

世の中の流れに感心しながらこれで何とか西の街へ行く為の手段が出来たと微笑を浮かべながら荷物の積み込みの手伝いを始めるのだった。


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