A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第2話


だが、現実だと分かったからと言って一体どうすれば良いのだろうか?

(とにかく、ここでこのままボーッと立ってる訳にはいかねーだろうしな)

まずは己の状況を把握する為に、この建物を見て回るしか無さそうだ。

一体ここは何処なのだろうか。帰る為の道は何処にあるのだろうか。

そして何故自分はこんな場所に居るのだろうか?

それが分からなければジェイヴァスは合同訓練の続きを出来なくなってしまうと思い、

自分が立っている今のその場所からゆっくりと地面を踏みしめて歩き出した。


……のだが、そのジェイヴァスの足はすぐにピタリと止まってしまった。

何かの生物、それも複数の気配がこの部屋に向かってやって来るのをジェイヴァスが肌で感じたからだった。

(殺気……では無いみてえだな)

自分に対して敵対的な気配では無いのを直感的に察知し、その事が多少の安心感をジェイヴァスにもたらす。

でも油断は禁物だと、あくまで警戒心を保ったままで入り口横の壁に背中を向けてぴったりと張り付いた。

複数の、と言っても2つや3つと言うレベルでは無い。

人間か、もしくはそれ以外の生物の気配かは今の所では分からないが少なくとも10以上はあるとジェイヴァスは感じていた。

(一体何が出て来るんだ?)

あいにく、拳銃等の武器は今自分の手元に無い状況なので余計に緊張感が嫌でも高まって行く。

だからこそ、限界まで相手の正体を探る為に神経を集中させる事が今のジェイヴァスに出来る最善の方法だった。


そして気配が段々近づいて来る。しかし相手の姿はここからではまだ見えない。

果たしてこの気配の正体は人間か、それとも……?

別に歴戦の勇士と言う訳では無いにせよ、これでも腕に覚えのある1人の軍人のジェイヴァスはゴクリと唾を飲み込んだ。

(……ん?)

気配が近づいて来るに連れて、ジェイヴァスはある事に気がついた。

人間の話し声が聞こえて来るのだ。

(人の声がするぞ……)

どうやら人間の気配があるらしいが、かと言って気配の全てが人間であるとは限らないので

ジェイヴァスの警戒心は緩もうとはしなかった。

(足音が複数だから、人間以外の生き物が混じってるかどうかが分かんねえな……)

もうこうなったら、その気配の正体がギリギリ見える距離まで待つしか無いとジェイヴァスは判断して、

そのまま最大限まで緊張感を高めたままの状態を維持する。


軍服の襟が緊張の汗で濡れる様な気がしたその時、遂に目に見える位置の曲がり角を曲がって

気配の正体の先頭が姿を見せた。

(男……だな?)

薄暗いものの、この建物の朽ち果てている部分から射し込む太陽の光が歩いて来るその男の顔を照らし出す。

その男の後ろにはゾロゾロと付き添いか部下か、はたまた家族か分からないがとにかく15人位の仲間と思われる

人間の姿がジェイヴァスの居る場所から見て取れる。

多いな……とその団体を見ながらジェイヴァスが思っていると、突然先頭の男がピタリと足を止めた。

「……待て!!」

男はバッと横に左手を伸ばして後ろの団体を制止させる。

そして右手を伸ばした腰から、片手で持てる大きさの斧を取り出した。


その男の様子がハッキリと見えたジェイヴァスは、一体あいつは何を仕出かすのだろうかと緊張感が

限界を突破しそうに……いや、すでに突破しながら思っていた。

(もしあいつが何かやって来ようもんなら、俺だってそれなりの対応は必要になるかも知れねえな)

元々好戦的な性格のジェイヴァスはそう考えたが、もっと良く考えてみると自分の方が圧倒的に不利な状況であるのも分かる。

(……けど、あいつ等全員敵に回すとなれば俺の方が不利だな。多勢に無勢。テレビゲームじゃねーしな)

テレビゲームだったら何かの必殺技があって、一気に衝撃波を出して敵を一掃出来たり便利なアイテムが

あってそれで危機を乗り越えたり魔法を使って敵を足止めできたりワープして逃げる事が出来るだろう。

しかし、あいにくそう言う冒険的なテレビゲームの類いを全くと言って良い程やらないジェイヴァスは、その辺りの事情には疎かった。

(俺がやるって言ったら格闘ゲームくれーだしな……)


今更ながら、何か武器になりそうな物が無いかどうかをこの部屋の中を見渡して確認してみる。

目に入るのは不思議な模様が描かれた壁画に、崩れた壁や床、そして変なスイッチのついている台座位の物しか無かった。

「ちっ……」

舌打ち1つ、ジェイヴァスはそのスイッチがついている台座がある部屋の奥まで走って行く。

「あっ おいお前!?」

後ろからあの男の声が聞こえて来るが、ジェイヴァスはそんな事お構い無しにそのスイッチに向かってダッシュ。

「ふん!!」

気合いを表す声を出し、黒の革手袋に包まれた右手を思いっ切りスイッチに振り下ろす。

その瞬間だった。

「うおわ!?」

後ろの男のビックリする声と共に、物凄い振動がジェイヴァスの身体を襲う。

地震か!? と思ったがどうやらそうでは無い様だ。

(……あっ、えっ!?)

別の意味でジェイヴァスをビックリさせるには、そのスイッチの効果は十分だった様なのだが。


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