A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第60話(最終話)


(まだ……まだ、ここで負ける訳にはいかねえんだよ!!)

素手なら素手なりの戦い方がある。

斧の刺突と振り下ろし、それからなぎ払いをスウェー、バックステップ、そして横移動で

かわしながらもう1度距離を詰め、今度はコラードに前蹴りをお見舞いしようと足を突き出す。

「はっ!」

「ふん!」

お互いの息遣いがクロスし、ロシェルの右足がコラードの片手にガッチリガードされて掴まれてしまった。


だがロシェルは咄嗟に機転を利かせて、もう片方の足のバネを使って垂直に飛び上がりつつ身体を

横向きに倒し、左足をコラードの側頭部にぶち当てた。

「がへ!?」

予想外の、そして頭と言う急所の塊の場所への攻撃にコラードも足がふらつき倒れてしまう。

「やあああああっ!」

そこに雄叫びを上げつつ、ロシェルはダッシュからの膝蹴りを起き上がりかけているコラードの顔面に叩き込む。

「ぐご……」

再び地面に倒れ込んだコラードの首を掴んで、お得意の首相撲に持ち込んだ。


クリスピンの時と違って、ノックアウト寸前のコラードは抵抗するだけのパワーを出す事が出来ない。

首相撲はムエタイ使いであれば確実に修得していなければならない技であるし、達人が首相撲を仕掛ければ

なかなか抜け出す事は相手もムエタイの達人で無い限り簡単では無い。

それはコラードも同じで、がっちりロシェルに首をロックされてしまった。

「うら、やぁ、どあ、らっ、だぁぁ、よっ、らっ、やっ、あっ、らああああ!!」

まず12発を最初に、そこからジャンプしつつ空中で3発、そしておまけにもう1発の合計で16発の

膝蹴りをコラードの腹に叩き込む。

「あが……」


意識が朦朧としているコラード目掛けて、ロシェルは斧を彼の手からチョップで叩き落としてから彼の両腕を

それぞれ片方の手で掴み、アゴ目掛けて頭を両膝で勢い良く蹴り上げてコラードの首の骨をへし折った。

「ぐごがっ……」

奇妙なうめき声を上げてコラードは地面に背中から倒れ込み、息絶える。

「はぁ……はぁ、はぁっ……はぁ……っ!!」

この瞬間、あの噴水の時の手合わせのリベンジを達成したと同時に、全ては終わった。

この事件の真犯人の死亡と言う結果により、爆発事件のロシェルの容疑が晴れたのである。



「うむ、2人とも良くやったぞ」

「あ、ありがとうございます!」

「勿体無き御言葉です」

その後、定期的にクリスピンから鷹を使って連絡を受けていた大公がレフォールの町にわざわざやって来た。

しかも1つ目の町に辿り着いた頃にペルドロッグを出発していたらしく、その理由が「私も事件の結末を見届けたい」と

言うものだったのだ。

それを聞いたロシェルとクリスピンは呆れてしまったが、無事にこの事件が解決した事を喜んでいる熱血な大公の姿に

何も言う事が出来なかった。


この世界に来てからおよそ1ヶ月半。

時間にしてみれば大した事が無い様な長さだが、ロシェルにとってはこれ程中身の濃い1ヶ月半は無かったと言えるだろう。

そして、大公から激動の言葉を2人が貰ったその翌日。

「国の事は私に任せておけ。団長はその男を頼んだぞ」

「はっ、行って参ります」

「本当にお世話になりました。ありがとうございました!」

「ああ、君も気を付けてな」

今度は地球に戻る為の手助けと、他国の情勢を探る為に大公はクリスピンにこう命令を下した。

「この異世界人が地球に帰るまでの手助けを頼むぞ。犯人逮捕に大いに貢献してくれたのだ。それから他国の情勢も探って来ると良い」

この一言が切っ掛けで、ロシェルのこれからの旅にクリスピンが同行する事になるのであった。

色々と予想外の出来事が続いたが、まずはやっと容疑が晴れた事に安堵しているロシェルと大公から

重要任務を請け負ったクリスピンの2人が公国の外へ飛び出していく。


異世界人の物語は、サードステージへと続いて行く。



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