A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第59話


ロシェルのそのセリフに、コラードはハッと鼻で笑った。

「私が真犯人? ああ、そうか……ばれてしまった様だな」

「そこまで素直に認める奴も珍しいな。クリスピン団長と一緒に色々調べ回ったんだよ。あんたが

ギルドから依頼を持って来た時に色々と「ここはおかしいな」と思う所があったからな。

けど、俺を救ってくれた命の恩人であるからこそそれを口に出す事が出来なかった」

でも、とそこで一旦言葉を切ってからロシェルは続ける。

「俺を助けたのは、最初からあの爆発事件の時に利用する為だったのか?」

そうじゃ無かったら良いな、との少しの期待も込めてロシェルは聞いてみる。


「最初は違ったけど、君が異世界人だと言う話を聞いてから利用しようと思った。

金も無いし家も無いし身分も無い。そう言う人間は利用価値が大いにあるからな」

「……ああ、そうかい」

「私は表のギルドでの信頼がある。だから口封じに部下や利用した人間を殺したって、

その実態を知った人間が密告しても信頼の前には信用されないのだよ」

「だから好き放題やれている……って事だよな? 孤児院の子供を含む人間達や、部下の命なんて

何とも思っていない。利用するだけ利用した後は、口封じの為に部下を殺すのも日常茶飯事なのかよ」

「ああ。傭兵なんてどんな立場につこうと問題無いのでね」


昨日の味方は今日の敵だ、といけしゃあしゃあと言い放つコラードは、更に衝撃の事実を述べる。

「君が城から追い出される切っ掛けになった、あの貴族の書名も私が進言してやって貰ったのだ」

「へーなるほどね。貴族にも顔が利く程に、無駄に人脈だけは広くないって事か」

コラードはロシェルのセリフに、口の端に薄笑いを浮かべて頷いた。

「ああそうだ。今は上の方で私の信頼出来るギルドの仲間達と、君の仲間の騎士団員達が戦っているだろう。

騎士団が動いていると言う情報を受け取っていたのでね。今頃はあちこちで奇襲されているだろうな。

ここには私と君だけだ」

「……そう言えば全然誰もここまで来ないと思ってたら、あんたは騎士団が手分けして遺跡を探索する事まで

読んでいたなんて……!!」

コラードが仲間を連れていると言う情報はあったが、まさかそこまで読んでいたなんて……とロシェルは驚きの表情を浮かべる。


そんなロシェルを見て、コラードは愛用の斧を背中から取り出した。

「むしろそう読まない方が不思議だと思うがな。そして今回も私が勝たせて貰う。さぁ……始めようか!!」

これで2度目のバトルとなるこの組み合わせ。しかし今回は手合わせでは無く、本気の殺し合いである。

ギルドの連中……もとい、ギルドの繋がりで募集されたコラードの部下達は、遺跡の各地でクリスピンとその配下の

騎士団員達が相手してくれている。

なのでロシェルは集中してコラードとバトルする事が出来るのは、この状況では大きかった。

「うおおおあああああ!!」

「はあぁっ!!」

雄叫びを上げながらロシェルとコラードはお互いに駆け寄り、一旦相手の目の前で立ち止まって間合いを

確認するかの様に睨み合う。


「ふっ!」

まずはけん制とばかりにコラードが斧では無くミドルキックを繰り出すが、ロシェルもしっかりガードしてバトルの

火蓋が切って落とされる。

そこから身体を反時計回りに回転させて肘をコラードの顔面に入れようとするも、コラードは斧を握っていない

フリーの左手でガード。そのガードした勢いでバックステップをして一旦ロシェルと距離を取り、改めて斧で戦い始める。

ロシェルはロシェルで、コラードが斧の間合いで戦う事が出来ない様に何とか接近戦に持ち込もうとするがやはり

そこはベテラン傭兵だけあって、なかなか距離を詰めさせてくれそうに無い。

「ちっ!」

斧の軌道をリング上で相手から繰り出されるパンチの動きに見立てて、首の動きと身体の捻りを駆使してギリギリでかわす。

最初の噴水の手合わせ、それからクリスピンとの手合わせ、最後にあの3人の騎士団員との手合わせと言う様に、

武器を持っている相手との手合わせをして来たからなのかようやく身体がついて来てくれているらしい。


「しゅっ!」

ギリギリの所で突き出される斧をかわして、ロシェルは再びコラードの懐に飛び込む事に成功。

「らぁ!」

飛び込んですぐにコラードの首を掴み、膝蹴りを彼のみぞおちに1発。

そしてクリスピンの時の反省を生かして、今度は首相撲では無く肘をコラードの頭に2発ずつ左右から叩き込んで衝撃を与える。

「ぐぅ、うあ!」

頭への衝撃に一瞬ふらつくコラードだが、更に肘をロシェルが振り被って来た所で一旦斧を手から離した。

「ぬん!」

「うお!?」


そのままロシェルの身体を両手で抱き上げ、後ろにゴロッと転がりながら投げ飛ばす。

「うおあ!?」

これで間合いを広げる事が出来、手から離れた斧を再度掴んでそれを振り回して襲い掛かって来るコラード。

ロシェルはムエタイと軍隊格闘術と、そしてこの荒れた遺跡だからこそ地面に落ちている色々な大きさの石や岩を武器にして戦う。

蹴られる位の大きさの岩があればコラードに蹴飛ばし、投げられる位の大きさの石があればコラードに投げつけ、

細かい砂を投げつけての目潰し等も駆使して戦う。

だが斧の方がリーチが長いので、徐々にロシェルは追い詰められて行く。

(まずいな!)

この遺跡にやって来るまでに体力も結構使って来ているので、出来る事ならばすぐに決着をつけたい所だ。


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