A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第57話
そんな例外的な馬の扱い方の経験もあるので、いざ出発してしまえば意外とロシェルは
クリスピンの乗馬に安心感を覚えていた。
(騎士団長ってだけあって、戦いだけじゃ無くて馬の扱いも超一流って訳か)
心の中でそう感心しながら、クリスピンと馬に自分の身を預けていよいよレフォールの町へと
ロシェルは向かうのであった。
そうしてクリスピンの馬に揺られる……と言うよりも、ほぼトップスピードに近い状態で走り続けていたので
正確には揺さぶられ、休憩も挟んで3つ目の町から移動する事4日後。
ついに2人は、このルリスウェン公国最大の都市として知られているレフォールの町へと辿り着いたのだ。
「おおおおおっ!! こりゃあスゲーや!!」
ロシェルがそう声を上げてしまうのも無理は無かった。流石に「公国最大」の肩書きを持つ訳では無い。
ルリスウェン公国の都のペルドロッグよりも大きいと言われるだけあって、まずはペルドロッグよりも
町を囲っている城門が大きい。
そして城門の大きさに比例する様に町の入り口も大きければ、そこに向かって入って行く、あるいは出て来る
人間の数もペルドロッグよりも明らかに多いのだ。
「これなら確かに、犯罪者が身を隠すにはうってつけだと思うんですけど、町へ入るならやっぱり検査がありますよね?」
「そうだ。だが私達の検査なら心配無い。私は大公閣下よりこれを預かってある」
そう言いつつガサゴソとクリスピンが懐から取り出した物は、綺麗にしたためられた1通の上質な
素材の紙に書かれた手紙だった。
「何ですかそれ?」
「大公閣下が直々にしたためられた、このルリスウェンは元より世界中の検問所を通り抜ける事の出来る通行証だ」
「えっ……え?」
世界中の検問所が、その手紙1つで何処でも通り抜けられる?
何でロシェルはクリスピンがそんな物を持っているのか、いや何故あの大公がそんな絶大な権力を誇る通行証を
わざわざ書いてくれたのか不思議で仕方が無い。このレフォールの町の通行証で出来る事が精一杯だった筈なのでは無いか?
そんなロシェルの表情を察したのか、大公が何故こんなものを用意したのかと言う理由をクリスピンは告げる。
「熱血と言われるだけあって、大公の執務室であの爆発事件の犯人を追うと進言したらこの書状を通行証として
持って行くが良い、とその場でお書きになられたのだ」
しかし、とクリスピンは一旦言葉を切って、その丸められたままの書状のヒモを外してクルクルと広げながら続ける。
「この書状をそう言う理由で渡されると言う事。つまりそれは一体どう言う事だと思う?」
「え……っと……」
ロシェルはうーんと数秒考えて、そして答えを導き出した。
「つまり、絶対にその犯人を見つけ出して来いって事ですよね」
「そうだ。だから、この町で何としてでも犯人の行方を掴まなければならないのだ」
確固たる決意を胸にして、ロシェルとクリスピンは書いて貰った書状で検問所を通り抜けた。
「さて……まずはどうするか。この人の多さでは何処から手をつけましょうかね?」
レフォールの町の中も相変わらずの人の多さである。むやみやたらに聞きまわっていては時間を浪費してしまうだけだろう。
そこでピンポイントに場所を絞って回る事にしたのだが、この広いレフォールの町でお互いにはぐれてしまったら何かと
面倒では無いか? との疑問が2人に浮かんで来る。
ロシェルは勿論レフォールの町に来たのは初めてだから尚更だし、迷ってお互いを探し回る様な事になったら情報を
集める所では無くなってしまうだろう。
なので、ここではコンビで一緒に聞いて回った方が効率を考えた上で良いとの結論に達し、情報が集まりそうな場所を
クリスピンが見当付けて回ってくれる事になった。
「本当は図書館とかも行ってみたかったんですけどね」
「犯人を捕まえたら幾らでも連れて行ってやる。今は我慢するのだな」
あれがそうだ、とクリスピンが指差す先にはその図書館がある。
灰色に塗られた建物はコンサートホールの様な感じで、広さで言えばそれこそちょっとしたスタジアム並だろうか?
とにかく大きい。 やはりありとあらゆる書物を取り揃えているからであろう。
(ここなら地球に帰る為のヒントもあるかも知れねーな。今の状況で行けないのが非常に惜しいけど、まぁしょうがないか)
名残惜しそうにロシェルはその図書館を横目で見つめつつ、今は情報収集優先だと思い直してクリスピンの向かう先に一緒について行く。
しかし、その情報収集の前にクリスピンにはやらなければならない事が1つあった。
「……ああ、情報収集の前に騎士団の詰め所に向かう」
「詰め所? あーもしかして遺跡関係のですか?」
「そうだ。先に調査部隊の人選を進めておいた方が良いだろう」
ロシェルは以前にも聞いていた通り、このレフォールの町に駐屯している騎士団の部隊ならば人員に余裕があるとの話だったので、
そのクリスピンの申し出には納得した。
遺跡の調査に当たって、そこに魔物等が住み着いている場合にはその討伐も騎士団の仕事としている為に、以前話していた通り
このレフォールの町で人手を騎士団から集める事にした。
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