A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第56話


「じゃあ次だ。その配達人は容疑者として捕まった後にどうなった?」

「ええと……取り調べをかなり厳しく受けた後に、そのまま城の中で生活しているって話だぞ」

「それも合ってる。では……今の配達人の様子は?」

この質問で囚人の男の様子が変わった。

「んー……確か、禁書庫に本を盗みに入って捕まったって話だったけど……って、これってその

団長さんの方が知ってるんじゃないのか?」

「え?」

ロシェルとクリスピンは顔を見合わせて頷いた。

「その話、誰から聞いた?」


クリスピンに冷たい声で問いかけられたが、男はふっと鼻で笑う。

「信頼出来る情報筋さ。だから俺の罪を軽くしてくれるんだったら、この情報を教えてくれた人物の名前を教えてやるって」

「ふぅん……じゃあこれも質問しようと思ってたんだけどよ、その禁書庫の事件の前でも後でも良いから、

何か城の中で変わった事は無かったか?」

「そうだな……ああ、そう言えば配達人と誰かが手合わせしてたって言ってたな」

ロシェルはその囚人の答えを聞いて確信した。クリスピンも同じの様である。

「ああそう……だったらもう犯人の目星はついた」

「はっ?」

囚人のきょとんとする顔付きを見て、クリスピンが横から呆れ気味にこう呟いた。

「今の質問とその答えを聞いて、犯人の特定が出来ない方がどうかしていると思うがな……」

「って、おい、おーい!? 俺の減刑はどうなるんだよーっ!?」

男の空しい叫び声を背中に受け止めつつ、地球の軍人と公国騎士団長は取調室を後にする。


上手く誘導尋問……になったかどうかは分からないが、口の軽い男で良かったとロシェルとクリスピンは

思いながら3つ目の町を出る計画を立てる。

「後はその爆発事件の犯人の足取りを追いかけるだけだ。この町で聞き込みをして、レフォールの町でも

同じく徹底的に聞き込みをするぞ」

「分かりました!」

聞き込みは迅速に、しかし確実に。余り時間をかけ過ぎるとその犯人がどんどん遠くに逃げてしまうかも

知れないけど、だからと言って適当な聞き込みでは手がかりを上手く掴めないだろう。


その辺りのバランスを考えて、まずはこの3つ目の町で2人は聞きこみ調査をスタートした。 町自体がペルドロッグを

除く今までの町と比べて広い為に、情報を求めて時間がかかってしまうのは仕方無いので、一先ずはその日の

日没をタイムリミットと決めて行動する。

詰め所を出発したのは陽が高く昇る前の、地球で言えば午後0時前位だろうと言う頃だった。

だから昼食をやや早めに摂り終えてから行動したクリスピンとロシェルは、かなり有益な情報を結果的に日没時に手に入れる事が出来た。

「どうやら、既に犯人はレフォールに向かったらしいですね」

「ああ。レフォールは国内最大の町だからな。一体何を仕出かすつもりかは分からんが、とにかく急いでそこに向かった方が良さそうだ」

レフォールは人も物も集まる集中型の都市だからこそ、身を隠すにもうってつけと言えるだろう。

だから行方をくらませられる前にそこで追い付きたい所だ。

しかも町の人間の情報によれば犯人は馬で移動をしていると言う話だったので、このまま馬車での移動となると追い付けない

可能性が出て来た。


だったらこっちも馬で移動をした方が良いと判断した2人だったが、ここで問題が発生する。

「馬は乗れるか?」

ロシェルにそう聞いてみたクリスピンだが、趣味ですら乗馬の経験が無いロシェルは当然乗った事が無かった。

「いや全然、乗った事も無いです」

「そうか……馬が無いとなれば一体どうやってそちらの世界では徒歩以外で移動をしているのだ?」

「まぁ、色々ですよ。それはまた何時か話します。けど弱ったなぁ……」

今の地球で馬に乗る機会があるなら、それは趣味で乗馬をしている人間か競馬の騎手か、はたまたモンゴル辺りの

移動部族位のものだろう。


3分位悩んだ末、やむを得ないとの判断でクリスピンの馬にロシェルが一緒に乗る事になった。

が、その同乗姿勢にロシェルは不満を漏らす。

「って、これじゃ俺子供みたいじゃないですか!」

「レフォールの町まで休憩を挟みながら飛ばすから、落ちたらお前も私も困るだろう。文句を言うな」

ロシェルはまるで子供の様にクリスピンに片手で腰を抱き抱えられ、クリスピンと馬のうなじに挟まれるスタイルで

2人乗りをさせられるはめになった。

当然ながら、クリスピンを始めとした男に抱きつかれる様な趣味はロシェルは持っていない。

けれども、今の状況ではこれも致し方無いとすっぱりロシェルは諦めてクリスピンの乗馬に身を任せる。

クリスピンはクリスピンで、この状態でも馬のコントロールが出来るギリギリの長さに手綱の感触を調整し、馬を出発させる。

短すぎても長すぎても馬はコントロール出来ないし、コントロール出来なくなったら最悪の事態に繋がりかねないからだ。

後でロシェルがクリスピンに聞いた所によれば、以前に迷子の子供をこうして今のロシェルと同じく馬に乗せて

抱え込んだ事があったらしい。

それに馬車を呼ぶ程では無いにしろ、背負いきれない量の荷物を運んで欲しいと言われた時も同じ様に手綱の長さを

調整して馬を操った過去があったので、全く初めての経験では無いと言う事だった。


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