A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第55話


寝不足の状況ではあるが、馬車に乗ってしまえばそのまま眠ってしまえたので

ロシェルは数日後には体力も気力も寝不足から回復し、ようやく3つ目の町に辿り着く事が出来た。

そのレフォールと言う国内最大の町に近いからなのか、1つ目の町や2つ目の町と比べて

少し大きいとロシェルは感じる。

(レフォールの町に近づくに連れて、段々町の規模が大きくなって来てんじゃねーか?)

やっぱり人の出入りが多い町の近くの町だからなんだろーなーと言う考えを持ちながら、3つ目の町の

詰め所の部屋に荷物を置いた。

ここでもやる事に関しては、1つ目の町と特に変わらず情報収集である。


そしてこの町では騎士団の詰め所が今までの町と比べて大きいのが特徴なのだが、町が大きくなれば

やる事も事件も増える。 その為に詰め所に鍛練場は設置されておらず、その代わり取調室と牢屋が

多く設置されていた。

「……この町って結構物騒なんですか?」

その詰め所の造りを見たロシェルが率直な疑問を口に出した。

「物騒かと聞かれれば、今までの町よりは人が多い分物騒だろうな。やはり人が多くなれば、おのずと

こう言った設備は必要になるだろう」

自分の横を歩くロシェルに、クリスピンは何でも無いと言った感じで答えた。


そして、こう言った物騒な場所がある町だからこそ裏社会の情報も手に入りやすいと言える。

騎士団長の自分の立場を活かして、クリスピンはこの詰め所のトップの騎士団員を始めとした職員達や

収監されている囚人達に話を聞いて行く。

(こう言う時に自分の立場を使わず、何時使うと言うのだ)

そんな考えで行動したクリスピンとロシェルは、とある噂をこの詰め所に収監されている囚人の1人の男から

聞き出す事が出来た。


「俺、すげえネタ知ってるんだけどよ」

「ネタ?」

「ペルドロッグで起こった爆発事件の犯人についての情報さ。表向きの噂じゃあギルドの配達人が

やったって話だがな、本当は違うぜ。俺はその犯人に加担してたんだからよ」

「なっ、何だとっ!?」

「そりゃー本当か!?」

クリスピンとロシェルは揃って大声を上げ、その男に取調室の机越しに詰め寄った。

予想以上の大声に囚人の男は顔をしかめたが、すぐにニヤリと嫌らしい笑みをその顔に浮かべる。

「知りたいか?」

「当たり前だ!!」

「私も気になる。一体それは誰だ!?」


だが、どうやらタダでとはいかないらしい。

「どーすっかなー。この事が周りにバレたら俺やべーもん」

「な、何を言っている?」

まさか……と思うクリスピンの考えは当たりの様だ。

「早い話が司法取引だよ。俺の罪を少しでも軽くしてくれるんなら教えてやんねー事もねーけどよー」

「貴様……」

バカバカしいと思い、こうなれば実力行使もやむを得ないだろうとクリスピンが男に詰め寄りかけたその時、

意外な人物が動き出すのだった。

「俺は良いと思いますけどね」

「何だと?」

「おっ、そっちの相棒は話が分かるじゃねーの」


クリスピンと囚人のやり取りに口を出したのはロシェルだった。 しかし、クリスピンは当然納得しない。

「貴様も口を挟むな。貴様はそもそも騎士団とは関係無い部外者だろう」

「え? いやちょっと待って下さいよ。俺は大いに関係者だと思いますけど」

「事件に関しては確かにそうだ。だが、この男が言う情報が本当かどうかの信憑性があると言い切れるのか?」

クリスピンの言い分も最もではあるが、ロシェルだって負けない。

「そこは俺も分かりません。俺も人の心まで読む事なんて出来ませんよ。でも、それだったら良い考えがありますよ」

「何だ? 言ってみろ」

「この男に質問をするんですよ」


ロシェルはその場で、今度は男に爆発事件の事を聞いてみる。

「良いか? 俺も独自に爆発事件の調査をしているんだけどよぉ。俺の持っている情報とあんたの記憶を照らし合わせて、

それが全部合っていたら信憑性があるって事になるんじゃねえの?」

「おっ? お、おう……」

意外な質問に戸惑う男だったが、今ここに居る3人と見張りの騎士団員数名の中でロシェルとクリスピンしか

知らない事をこの男が知っていれば、確かに信憑性はあるかも知れない。

と言う訳で、この後の旅の展開に大きく関わって来るであろう質疑応答が取調室でデスクをはさんで向かい合った

囚人の男とロシェルとの間でスタートする。

クリスピンはデスクの横の壁に腕を組んで寄りかかり、その動向を見張りの騎士団員と一緒に見守る事にした。


「それじゃあ最初の質問。この事件が起きた時、何処が爆発したんだ?」

「ペルドロッグの町の外れにある孤児院に使われている館だ」

「正解。それじゃあその事件の犯人は表向きには誰と言われている?」

「ギルドの依頼を請け負っていた配達人だって話だ。配達物の中に爆発物が混ざっていたって」

「当たりだ。そしてその屋敷と配達人はどうなった?」

「屋敷は全焼して中の住民は全員焼け死んだ。配達人は騎士団に容疑者として連行されたって聞いてる」

ここまでは今の所順調の滑り出し。しかし、今の段階では表に出ている情報ばかり質問して正解している為、

まだこの男の取り引きに応じる訳にはいかない。

ロシェルは次にいよいよ、自分とクリスピンしか知りえない筈の答えがある質問を3つしてみる事にした。


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