A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第51話


翌朝。ロシェルはクリスピンと共に、騎士団の詰め所の食堂に朝食を摂りに向かう。

そこで話し合うのはこれからの予定だった。

「今日はまずこの町のギルドに向かう。そこで情報収集をした後、次の町へと向かうぞ」

「分かりました。でもこの町のギルドって酒場に併設されていたりしないんですか?」

ペルドロッグではギルドが酒場に併設されていたので、情報収集もはかどりそうだったがどうやらこの町は違うらしい。

そのロシェルの質問に、クリスピンは口に入れたばかりのサラダをきちんと飲み込んでから返答する。

「ああ……ペルドロッグはそうだが、他の町だとここみたいに別の場所に1つの建物として設置されている所も

あるし、ペルドロッグと同じ様に酒場に併設されている所もあるから町によって違う」

「他の国でも?」

「そうだ。お前が他国のギルドに行く予定があれば、色々見て回ると良いだろう」


酒場にギルドのカウンターが併設されているのは、ギルドから騎士団宛の雑用を依頼を城で自分にして来ていた

騎士団員達が、「酒場とギルドが一緒なのは楽だな」と依頼を受ける時に話していたからロシェルは知っていた。

だからこのやって来た町でもてっきりそうなのかと思いきや、違う所もあると言う事実をクリスピンの口から聞いて改めて認識した。

(この世界を俺はまだ全然知らないからな。もっと色々世間を知る必要があるよな)

堂々とエスヴァリーク帝国に行ける様になれば、少しは寄り道をしてこのエンヴィルーク・アンフェレイアと言う異世界を

見て回っても良いかも知れないとロシェルは思い始めていた。


その為には、しっかり自分の容疑を晴らす事が大切だろう。

(まだ……まだ俺は犯人だって決まった訳じゃねぇ。この先で容疑を晴らす為には、自分から動いて行くしかねえな!!)

固く決意したロシェルは朝食をハイペースで平らげ、その様子が変わった事に気がついて表情と食事の動作が止まっているクリスピンを促す。

「食べたらすぐにでも行きましょう。まだ犯人が遠くに行ったとは限らないですよ、団長!!」

「あっ、ああ……」

今の会話の中で、一体何処にこんなに雰囲気が変わる要素がこの男にはあったのか?

流石に人間の心までは読めない公国騎士団長は、その疑問を問う事も出来ずに目の前の料理を自分も平らげ始めた。


そして朝食を食べ終え、町のギルドにやって来た2人は早速聞き込みを開始。

ムエタイで負けっ放しだった筈のロシェルは、今はクリスピンよりも積極的に聞き込みをして行く。

そしてその聞き込みへの熱意が運(ツキ)を引き込んだのか、2人はとんでもない情報を手に入れた。

「……古代の遺跡?」

その情報は、まだ公国が知り得ない事であった。

どうやら、今2人が向かっている南のレフォールの町を越えて更に西の方に向かって3日程歩いた山の中で、古代の遺跡らしき

建物が見つかったそうなのだ。

ギルドにやって来ていた冒険者達に話を聞いていたロシェルとクリスピンを、その遺跡の話を聞き付けた騎士団の調査と勘違いした

冒険者達がこうして情報をくれたのである。

「行ってみるか?」

ギルドの外に出たクリスピンは、自分に続いてギルドを出て来たロシェルにそう訪ねる。


しかし、ロシェルは若干尻込み気味だ。

「そりゃー気になりますよ。でも、もしかしたら魔物とかが居るかもしれないですね」

「確かにその可能性はあるな」

放置された状態で山の中から見つかったとされる様な遺跡ならば、野生の魔物の住み処になっていたとしても何ら不思議では無いだろう。

そう考えたクリスピンは馬車を待たせている場所に向かって歩きながら何かを考え込んでいたが、ふと顔を上げて1つ頷いた。

「良し……なら、レフォールの町で人員を集めて行こう」

「人員ですか?」


いきなり何を言い出すのかとロシェルは疑問に思ったが、クリスピンはその疑問の答えをすぐに話し始める。

「魔物が居るかも知れない遺跡に、我々2人で向かうのは余りにも危険過ぎるだろう。しかも、お前は意味の分からない超常現象に

よって武器が使えないから、剣も弓も槍も持てない状況なら尚更だろうしな」

「そう言われてみればそうですね。けど、人員だったらここでも別に集められるんじゃないですか?」

次のロシェルのその問い掛けにクリスピンは首を横に振る。

「お前もこの町の詰め所が小さい事は実際に見て、そして中で一晩明かしたから分かる筈だ。ここにはあいにく遺跡調査に

赴けるだけの人材が確保出来ないし、何よりお前と斧で手合わせをする予定だったがここにはその斧も無かった」

これは私も予想外だったがな……と最後にそう告げて、後は自分で考えろと言わんばかりにクリスピンは口を閉ざしてしまった。

「あー成る程。そのレフォールの町だったらこの町よりずっと大きいから人員に余裕も出来ているし、ここには無かった斧で手合わせも

出来る。そしてレフォールの詰め所には武器も沢山あるから斧使いとか槍使いとか弓使いとかの様々な武器の使い手を一緒に

連れて行けるから、もし魔物が居て襲い掛かって来たとしても、素手でしか戦えない俺と一緒に行くよりは戦闘も格段に

楽になるって事ですね!?」

物凄い長いセリフを何回も息継ぎして、所々で噛みそうになりながらも言い終わったロシェルに、クリスピンは顔を向ける事無く1つ頷いた。


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