A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第52話
南のレフォールの町から更に西の方に遺跡があると言う情報を、ギルドの連中から
キャッチする事に成功したロシェルとクリスピンだったが、まだ情報が不足しているのは否めなかった。
馬車を使えば大体2週間程でレフォールの町までペルドロッグから辿り着けると言われ、1つ目の
町を出発して更に数日後。2つ目の町に到着した。
ここでクリスピンともう1回手合わせをさせて貰おうと思ったロシェルだったが、クリスピンからは
ちょっと変わった手合わせの仕方を提案された。
「団体相手ですか?」
「そうだ。と言っても3人までだがな。ペルドロッグの時には路地裏で囲まれた時に逃げ回る事の
出来る場所や道があったから何とか私とあの傭兵が駆けつけるまで時間を稼げたのだろう」
そこで一旦セリフを切って、だがな……とクリスピンは続ける。
「お前も戦闘訓練を受けて来たのなら、必ずしもそうならない状況があるのは分かるだろう?」
「確かにそうですね」
多勢に無勢の状況下では、映画のアクションシーンの様に上手く行く訳では勿論無い。
実際にこの世界にやって来てから、ペルドロッグの路地裏であの青い髪の毛の女に杖で空中ジャンプを
突き落とされた時のフラッシュバックが、今の提案を聞いていたロシェルの記憶にやって来た。
「だから今度は3人が相手だ。私は今回はあの傭兵との手合わせの時と同じく審判をさせて貰う」
持っている武器も全員違うからな、と最後に付け加えられてからロシェルは騎士団の詰め所にある
簡易鍛練場までやって来た。
そこにはロングソードを持っている中肉中背の茶髪の男、ロングスピアを片手に握る長身の金髪の男、
最後に2本のナイフを両方の手に握った黒髪の女の3人の騎士団員が居た。
「話は通してある。まずは1人ずつと戦って貰う。そしてその後に3人をいっぺんに相手にして貰おう」
だが、ロシェルは腕を組んで首を捻った。
「うーん……」
「どうした? 何か不都合な事があるのか?」
「ま、まぁやっても良いですけど……あんまり期待しないで下さいよ?」
正直な話をさせて貰えば、はっきり言って俺に勝ち目は無いに等しいだろうとロシェルは思わざるを得なかった。
何故なら1人相手でその相手が武器を持っているだけでもかなり素手だと厳しいものなのに、この手合わせでは
最終的に3人を同時に相手をさせられる事が決まっているのだから更に勝ち目は無くなってしまうだろうと言うのは
容易に想像がついた。
そんな不安で一杯になっているロシェルの頭の中をクリスピンは見抜いたのか、ここでロシェルに聞こえる様にボソッと呟いた。
「地球に帰りたいと言う割には、試練を目の当たりにしたら諦めるタイプの人間か……」
「……!!」
そのクリスピンの呟きで、ロシェルの中で何かが切れてしまった。
「だったら最初から全力で行ってやろうじゃないですか。おら、誰からでも良いから1人ずつかかって来いよ!!」
地球に帰りたいと言うその願いを思い出す様に、上手くクリスピンにそそのかされたロシェルは、3人を挑発して手合わせのスタートを促す。
クリスピンはそのスタートの合図をせずに、3人に勝負の出方を任せる事にして危なくなったらストップをかけると言う約束だ。
最初に動いたのはロングソードを持っている茶髪の男だった。
ロングソードを鞘から抜いて斬りかかって来るが、そんな茶髪の男の振り下ろしをロシェルは両手で茶髪の男の手を押さえて
ブロックしてから、下段回し蹴りと腹への前蹴りを使って怯ませる。
「ぐっ……」
それでも茶髪の男は素手の左手も併用してまた斬りかかって来るので、ムエタイと軍隊格闘術で鍛えた反射神経と
動体視力と身体能力をフル活用してブロックし、弾き、そして蹴り返す。
「ぐおあ!」
ロシェルのミドルキックを腹に食らって倒れ込んだ茶髪の男だったが、今度はその茶髪の男に気を取られていたロシェルに
黒髪の女が思いっ切り全力ダッシュからドロップキックを食らわせる。
「うごぉ!」
倒れ込んだロシェルを強引に髪の毛を掴んで起こし、懐から短剣を取り出して今度は黒髪の女がロシェルの相手になった。
短剣を振り回すのが結構上手い黒髪の女にロシェルは苦戦しつつも、茶髪の男の時とはまた違い最小限の動きで短剣での
攻撃をブロックし、かわす。
だが連続してバトルするのは結構疲れるので、その疲れで一瞬ロシェルがぐらついた所で黒髪の女はロシェルの襟首を掴んで、
そのまま壁に向かってロシェルを投げ飛ばして背中からぶつける事に成功。
「ぐあっ!」
だけど、ここでギブアップしてしまったら絶対に地球に帰る事なんて出来やしないだろう。
(いっぺんに3人相手なら厳しいけど、ここで少しでも1人ずつの体力を減らす事が出来りゃあ俺にだってチャンスがある筈だ!!)
それにこの先、こんな展開が待ち受けていないとも限らないからクリスピンがこう言う手合わせの機会を設けてくれたのだろう……と
ロシェルは思い直して手と足に力を込めて立ち上がった。
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