A Solitary Battle第9話


「う……」

うめき声を上げつつ、そしてまだ続く頭の痛みを堪えつつセバクターが目を覚ますと

周りを15人程の武装した男女に囲まれていた。

周りを見てみれば木造の何処かの建物の中の様であり、やけに広くて色々な棚や

酒瓶や樽、それから何かが入っている様に積み上げられている多くの木箱やその

周辺に散らばっているゴミ等がいっぺんに目に入って来た。

「これはこれは。わざわざ俺達の手の中に飛び込んで来てくれるとは感謝するぜ」

「んぁ……!?」

自分はややふかふかの椅子に座らされており、机を挟んだ向かい側にはあの大斧の男が

革張りの赤黒い椅子にふんぞり返って座っていた。どうやら自分は縛られては

居ない様だが、この人数相手では縛って無くても良いだろうと言う考えだろうか。


だが腰のロングソードは何時の間にか無くなっている。

「お前の剣ならこれだろ?」

「あっ……」

見せ付けるかの様にセバクターの愛用しているロングソードを彼の前に男はちらつかせる。

「これが俺の部下の血を吸ったんだからな。たっぷりとその礼もさせて貰わなければ。

だがその前に、お前はあの家の男から何処までの話を聞いた?」

「……はぁ?」

恐らくは自分達にまつわるあの話の事だろうが、あえてとぼけた振りをする事でこの男と

その周りの部下達は諦めてくれるかもしれない。


そう考えたセバクターだったが、やはり世の中そう甘くなかった様だ。

「とぼけんな! あの男とお前が俺達の事を話していたのは知っているんだよ。

事前に家の外で聞き耳を立てていれば嫌でも聞こえるんだ。さぁ、何処まで

俺達の事を聞いた?」

(やっぱりこの男達がスパイだったのか……)

激昂する男を見ながらセバクターはそう考えつつ、全く関係の無いセリフを吐き出す。

「……取り引きだ」

「は?」


まさかの回答に男は素っ頓狂な声を上げたが、構わずセバクターは続ける。

「取り引きだ。俺をここからこのまま出してくれたら、命だけは助けてやる」

そのセバクターの要求に一瞬場が静まり返った後、どっと場が沸き立って笑い声が響く。

「ぎゃーははははははっはははっ!! はっはっ、はははははははははっ!! お、おい

聞いたかよ!? 命だけは助けてやる、だってよ!! はははははっーあーはははっ!!

こいつは傑作だぜ!! 俺、今年1番笑ったかも知れねぇよ!!」

机をバンバン叩いてセバクターを指差して笑う男だが、指を指されているセバクターの

表情は至って真面目にキリッとしている。


「ひぃひひひ、ひーひひひっ、ははははは……全く、とんでも無く面白い奴だな、お前は。

俺等がそんな取り引きに応じるとでも思うのかよ? 残念だがここで、お前は天に召される

運命にあるんだよ!! ひゃはははっは、あはははははははっ!! さぁて、こっちに来ても」

男がセリフを言い終わらない内に、セバクターは椅子ごと後ろにひっくり返りつつ机を思いっ切り

反動で蹴り飛ばした。

そのまま転がってから立ち上がったセバクターは、まずは椅子を抱えて手近な男を椅子で

殴りつけてぶっ飛ばし、更に反対側に居た男に椅子を投げつけてそのまま椅子の下敷きにする。

そして机の上に置かれていた自分のロングソードを取り戻すと素早く鞘から引き抜き、一気に

反撃を開始するのであった!!


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