A Solitary Battle第8話


セバクターは冒険者ギルドの近くまでやって来て、妙な違和感を覚えた。

(ん〜? あれは……)

よく見てみると、入り口に向かって来ている男の姿が1つ。その男は先程自分を

殺そうとしていた集団のリーダー格である大斧を背負った男では無いか!!

(まずい……!!)

咄嗟にセバクターは冒険者ギルドの近くの建物の陰へと身を隠し、男の行く先の

様子を窺う。

(あいつも傭兵なのか……?)


何と男が向かって行った場所は、自分もまさに向かおうとしていた冒険者ギルドの

中ではないか。こうなってしまうともうどうしようも無いので、今は大人しく身を退いた方が

良いだろうとセバクターは考える。

今うかつに冒険者ギルドの中に入ってしまえばそれだけで一触即発、いや間違い無く

殺し合いが勃発してしまう事になるだろう。それを避ける為にもセバクターはひとまず

冒険者ギルドから離れて、何処かで時間を潰す事にした。

しかしこのままただ時間を潰すのももったいないので、さっきの男の話をもう1度整理

してみる事に。


(確かあの配達先の男が言っていた事は……)

ある程度の話は聞いていたが、全てを聞く前に先程の男のグループの襲撃を受けたので

途中までしか聞けていない。それでも聞けた分だけを頭の中で整理する。

オールバックの男が話していた情報によると、ヴァーンイレス王国が隣のエスヴァリーク

帝国に負けてしまった理由は決定的な事があったらしい。

何でも、そのエスヴァリーク帝国に雇われたスパイが居るらしいのだ。そのスパイが

王国の戦略等の情報を流す事によってエスヴァリーク帝国はただでさえ強大な戦力を

巧みに駆使してあっと言う間にヴァーンイレス王国を滅ぼす事に成功したのだとか。


(となれば先程襲って来た男とその仲間はそのスパイである可能性が高い。そして

その話を聞いてしまった俺は命を狙われる可能性が更に高い……)

あー、ますます面倒な事になったと頭を抱えるセバクターだったが、ここでこうしてうだうだ

していても始まらない。だったら考えられる選択肢は2つしか無かった。

(1つはこのままあいつ等に追い掛けられながら過ごす。そしてもう1つはその追い掛けられる

可能性を早めに潰しておく。この2つしか無い。この腕1本でこれから食って行く為には

そうした困難は常に付きまとうと言っても良いだろう。だったらそうした困難の種を今の内に

少しでも摘み取って置く事は、安全な傭兵生活にも繋がるんじゃないのかな……)


そう考えたセバクターは、壁に寄り掛かっていた背中をパンパンと払って力強く歩き出す。

(行くしか無い。ここでこのまま悩んでいてもしょうがない。困難が現れたならそれをぶち破る。

俺にはそれしか出来ない!!)

歩き出したセバクターが向かうのは勿論冒険者ギルドだ。そうは言っても大勢の仲間が

あの男の周りに居る可能性も否定出来ない、と言うか確率が高いのでまずは冒険者ギルドの

近くから様子を窺う。

(近くは大丈夫だ。中はどうだ?)

酒場にもなっているギルドの窓からそっと中を窺うセバクターだったが、次の瞬間背後に人の気配が

したかと思うと、それとほぼ同時に頭に強い衝撃を受けて彼は意識を失ってしまうのであった。


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