A Solitary Battle第6話
こうしてセバクターの初ミッションが幕を開けた。
配達のルートは町の中から町の中までで、馬を使ったりする程遠くは無いので
散歩がてら配達をする事に。別に急ぎの荷物でも無いのでのんびりと行きたい所だ。
(王都が陥落しているとは言え、ある程度の賑わいはある様だな)
そう、都が陥落してしまったので占領でもされているのかと思いきや、一見するとそうでも
無さそうなのである。何とも不思議な町だ。
町自体は別にそこまで広いとも言えないが、造り自体はそこそこしっかりしていると言っても
良いだろう。行政区画も支部があるし石畳の地面もしっかりしている。所々には木々も
立ち並んでいるし、商店や先程の様に酒場やギルドだって存在している。民家だって
結構立ち並んでいるのが分かるし、大きな通りに入ってみれば人通りだってそこそこある
方だと言えるのだ。
だけどやっぱり都だった所と比べてみるとどうしても田舎町、と言うイメージがあるらしい。
実際にこれはセバクターが配達先までのルートを聞いてみた人が、ルートを聞き終えた後の
雑談でポツリとそう漏らしていたのであった。
都だった所はこの町と比べてしまうと5倍程の広さがあると言う事だったし、町の規模としても
この田舎町と比べてしまうと全然大きな物だったと言う事であった。
(と、言われた所ですでに王都は滅亡してしまっているから俺にはそれを確認する術は
全く無いのだがな……あくまでイメージするだけと言う所か)
苦笑を漏らしながらそう考えて歩くセバクターに、今度は別の光景が彼の目に飛び込んで来た。
(ん? あれは……)
鎖で繋がれている何匹もの小さなワイバーン、それから同じく小さめのサイズのドラゴン、そして
荷馬車等が勢揃いしている区画にどうやら自分は入った様だとセバクターはその光景を見ながら
感じ取っていた。その光景こそが、恐らくイレインの言っていた輸送用や騎乗用のワイバーンや
ドラゴンの事であるのだろう、とそのイレインとの会話を思い出しながら考えるセバクター。
(確か帝都に向かうにはあれを利用すれば良い、とか言ってたっけ)
ある程度纏まった金が出来たらそれを使わせて貰おうか、と考えながらセバクターは横目でその区画を
見つつ通り過ぎる。
だったら利用させて貰う物は最大限に利用させて貰うべきだろうと彼は思っていたのだ。
その為にもまずは少しずつでもミッションをこなして行く事が今は最善の近道である、と彼は信じて
疑っていなかった。
(目的地まではこの辺りでまだ半分位かな……)
土地勘が全く無いのは当たり前だが、傭兵生活でセバクターもある程度の距離を予測する事は出来る。
そうして歩き続け、途中何度か道に迷って通行人に道を聞きながらようやく配達先に到着。
(ここだな)
番地を確認して間違いが無い事を確かめる。別にこれと言って何の変哲も無い、青い屋根の普通の
平屋の一軒家だ。
木製のドアに取り付けられているドアノッカーをセバクターは叩くと、10秒位してからドアが開いた。
「傭兵ギルドからの届け物だ」
ドアの向こうから現れたオールバックの金髪の男に荷物を手渡し、依頼が完了した事を示す為に
確認のサインを依頼書に貰う。このサイン済みの依頼書をギルドの受付に出す事で依頼が
完了となるシステムになっている。
だがセバクターはこの後、その男から気になる話を聞く事になるのであった!!