A Solitary Battle第3部第16話(最終話)


ロングボウの男と遠距離射撃合戦を繰り広げていた武器商人の

ライウンは、お互いに木の陰に隠れて相手の様子を窺いながら

射撃を繰り返す。とは言えどもお互いに持ち弾には限度があるので

そこだけ気をつけるべく、様子を窺って確実に行ける所までなるべく

弾の無駄遣いをしない様にしていたのだ。

山小屋の裏には林があり、そこでこうして射撃合戦を繰り広げている

2人だったが何時までもこうしていても埒が明かないのは分かっていた。


(ならば……)

ライウンは今自分が手に持っているハンドガンの発射速度が弓よりも

断然速い事を利用して勝負に出る。

相手の男が矢を放って来た所でそれをしっかりと避け、そのまま相手が

隠れる前に自分の身体を相手の視界へさらけ出す。

そうして弓使いの男が隠れ切る前に素早く相手の足目掛けてその

ハンドガンのトリガーを引き絞った。

「ぐあ!」

足を撃たれて悶絶する男に続いて2発、3発と撃ち込んだライウンは

最後に弓使いの頭目掛けてトリガーを引き、止めを刺すのであった。

「ふぅ、これで終わりだな……」

ライウンは額の汗を拭い、眉間に銃弾を受けて息絶えた弓使いを見下ろした。


そうしてバトルにそれぞれが勝った約5分後位に、騎士団から応援がやって来た。

ライウンと共にこの山小屋へと向かう前に騎士団の人間に応援を要請する様に

セバクターが頼んでおいたのだ。

「これで俺等は牢屋行きか」

それぞれが生き残って無事にルディスも助け出されたのだったが、この後の展開を

考えて自分達がどうなるのか予想がついていたシーディトはそう呟いた。


「牢屋? そうか……せっかく魔石を取り戻したんだからあんたの力で何とか

なるんじゃないかと思ったんだがな……」

残念そうにそう呟くライウンにセバクターは一言だけ返す。

「上手く話しておく」

「なら助かる。色々とありがとう」

セバクターとシーディトはがっちりと握手を交わし、騎士団の応援の方へと5人

全員で力強く歩いて行った。


そしてセバクターは自分なりに上手く話したものの、結局と言うべきかやはり

窃盗団の4人は牢屋の中へと入れられる事になった。

しかし古代兵器のエネルギーに悪用される前に魔石を取り戻してくれたので、

その罪は幾らか減刑されることになったとセバクターは後からクローディルと

ニーヴァスの証言で知る事になったのであった。

また、山小屋でそれぞれが戦ったのは帝国内でも名の知れ渡って来ていた

盗賊団であり、その行いは残虐非道である事もその2人から告げられた。


ちなみにセバクターに山小屋でハイキックをかまし、ライウンと戦ったのが遠距離

攻撃担当のサクエル。神殿でシーディトと一緒に戦い、山小屋でもシーディトと

戦った槍使いの男はシェサルド。同じく神殿で襲い掛かって来た男で、カヴィルドの

ハルバードに突き殺されたナイフ使いの男がロクフォン。そしてセバクターと戦った

筋肉質な大剣使いの男がその盗賊団のリーダーであるラルセンだと言う事だった。

更にセバクターは残りの魔石を回収すべく、これから1年間は帝国内各地を

遠征に回って貰う部隊を編成してその隊長を務める事になった。それだけの大役を

任せられたセバクターは3日後、その旅へと19人の部下を率いて総勢20人で出発した。


こうしてまた1つ、帝国内で起きた事件が解決する事になったのである。



第3部 



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