A Solitary Battle第3部第14話


セバクターが男に回り込みを予測されてフェイントを掛けられた

挙句にキックを食らっている頃、カヴィルドとナイフの男は山小屋の

外で勝負をしていた。

カヴィルドはハルバードのリーチを活かしてなるべく男を近づけない様に

しているが、ナイフの男はその攻撃を何とか掻い潜ってカヴィルドにナイフを

突き立てるんだと心に決めているのでどちらも必死である。


ハルバードは長くてリーチがあるが、その分やはりナイフと比べてしまうと

どうしても取り回しが利かないのが欠点である。その上相手の男は

それなりにスピードを持っている様で、何とか今の時点では互角に戦えて

いる物のその均衡が何時崩れてどちらかが倒れるのかと言うのはそう

遠くない事であると言うのがお互いに分かっているバトルだ。

だったら、その均衡を自分から有利になる様に崩しに行けば良いと

言うのもお互いに分かっている。お互いに盗賊団として活動して来た

中で実戦経験はそれなりに積んで来ている者同士、何とか自分が

有利になる様にバトルを進めて行きたい考えが一致していた。


(こいつ、弾きが上手いぜ!!)

カヴィルドは相手の男のナイフテクニックに心の中で驚きを隠せなかった。

自分が持っているハルバードはリーチもパワーも合って武器としてはこっちが

有利な筈なのに、上手くそのハルバードの攻撃と軌道を見切って攻撃を

受け流すだけで無くまるで蛇の様に独特な動きをしながら、隙あらば何時でも

懐に飛び込んでやるぞと言わんばかりの男の気迫に負けそうになる。

(だが、こっちだって大切なメンバーを誘拐されてるんだから絶対に負ける訳には

行かないんだよ。少なくともお前にはな!!)


そのまま打ち合いを続ける2人だったが、体力の消耗は大きな武器の

ハルバードを振るっている分カヴィルドの方が消耗が激しい。

(くそ、このままじゃやばい。あんまりのんびりしている暇は無い。今の内に勝負を

かけて行かないと絶対にまずい!!)

そう考えたカヴィルドはどうやって相手を仕留めるかと言う事を考え、そして思い付いた

作戦があった。

(危険だがやるしか無いだろう……)


まずは一旦バックステップで男から距離を取り、それに追いすがって近づいて来る男

目掛けて下段の薙ぎ払いを繰り出す。当然男はそれを易々と食らう筈も無く大きく

ジャンプして避けたが、そこに今度はその薙ぎ払いの勢いでもう1度回転した

カヴィルドのハルバードが頭目掛けてナイフの男の側頭部に直撃した。

「がっ!?」

そう、これはカヴィルドが仕掛けたフェイントだったのである。


そのまま倒れ込んだ男目掛け、今度は彼の股間に強烈な踏み付けを叩き込む。

「おがああああっ!?」

男として大事な所を思いっ切り踏み潰されて余りの痛さに悶え苦しむ男の喉に、

寸分の狂いも無くカヴィルドのハルバードの槍の部分が吸い込まれて行った。

「ぐえ……」

そうして息絶えた男からカヴィルドはハルバードを引き抜いて、一言こう呟くのであった。

「俺達を舐めるな!! 当然、個人の実力もな!!」


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