A Solitary Battle第3部第11話


取り引き現場の前に先に辿り着いていたシーディトとカヴィルドは、

中の様子を窺おうとしていたがそれはどうやら無理そうだった。

「なかなか守りが堅いな」

「ああ……迂闊に近づけないぜ」

「あれじゃルディスがどうなってるのかすら分からないな」

建物自体は大きめだが普通の山小屋みたいな所だ。しかしその周りには

不釣合いかと思う位の厳つい男と女がウロウロしているのが分かる。


取り引き現場の前、と言っても今の遠目に見える位の距離で見ていなければ

周りの人間に見つかってしまう可能性が大きいのである。

「かと言って、このまま突撃する訳にも行かないし」

「ライウンに止められてなくても、あれじゃ突撃するのは無理だよ」

どうしようかと頭を悩ませていた2人だったが、その時とんでも無い光景が

2人の目の前で繰り広げられる事になるのであった。


突然何処からか空気を切り裂く様な音が聞こえて来たかと思うと、

次の瞬間にはその山小屋の目の前がいきなり爆発した。

「うおっ!?」

「な、何だぁ!?」

突然の自体に2人とも状況を飲み込めないのだが、爆発の煙が収まると

山小屋その物は無事でその周りを取り囲んでいた男女が殆ど地面に伏していた。

「何があったんだ?」

「……こんな芸当が出来る奴は、あいつしか居ない」


どうやらカヴィルドには心当たりがある様だ。そうして遠目で山小屋の様子を

窺いながら徐々にそこに向かって近づいて行く2人の目の前に、今度はオレンジの

マントが飛び込んで来た。

「あれは!」

「あの騎士団員か……!」

先に乗り込むなと自分達に言っておきながら自分達が先走っているじゃないか、と

胸中で毒づきながらも山小屋へと駆け出す2人の目の前に見慣れた男が現れる。

「陽動はこれで完了だ、後は任せるよ!」

「ら、ライウン!!」

「やっぱりさっきの爆発はお前だな、その背中に背負ってる……」

「ああ、そうさ!」


ライウンが背中に背負っている筒状の物体。それはこの世界では見慣れない武器の1つで、

魔術のテクノロジーと今出来る最高の科学テクノロジーを駆使して生み出された持ち運びが

可能な大きさのロケットランチャーだった。

それを山小屋に打ち込んで爆発を引き起こし、陽動をした上で今度はセバクターが腰から

ロングソードを引き抜きつつ山小屋に向かって駆け出す。

そうしてセバクターはそのままの勢いで山小屋の窓にドロップキックをかまして、勢いづいたまま

ドロップキックの姿勢で中に飛び込んで行った!!


「派手にやったな!」

「しかしこんな事をしてルディスは大丈夫なのか?」

思わず呟くシーディトと心配になるカヴィルドと一緒にライウンは走り、今度は

懐からこれまた魔術と科学を融合させて生み出されたハンドガンを取り出して

自分も戦いに加勢する為に準備を始めるのであった。

(ルディス君、待っててね。僕達が必ず助け出すよ!!)

その為にも絶対にこの戦いは勝たなくてはいけない、と気を引き締めて盗賊団の

3人も山小屋の目の前へと辿り着くのであった。


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