A Solitary Battle第3部第9話


「……ん?」

「どうした?」

「あんた、俺と何処かで会った事無いか?」

いきなりそう言われてもセバクターには心当たりが無かった。

「いや……初対面の筈だが。まぁその前に1度ここで会っているからあんたが

言っているのはその時の事じゃ無いのか?」

だがセバクターにそう言われてもカヴィルドは納得した表情を見せない。

「やっぱ、何処かで会った気がするんだけどなぁ……」


そう言いながら自分の馬に乗ろうと、セバクターに対して後ろを

振り向いて背を向けたカヴィルド。だが彼のその背中を見た瞬間、

今度はセバクターがある事を思い出す事になった。

「あっ……」

「ん?」

「あんた、もしかしてあの時路地裏から飛び出して来て俺とぶつかった人か?」

「路地裏……ああ、そうか……あの時か!!」


帝都のユディソスに来たばかりで、帝都に入る為の審査を終えて馬を預けてから

1番近い冒険者ギルドへと向かっていた時に、何者かが路地裏から争う様な音を

聞いた直後に路地裏からいきなり飛び出して来て自分とぶつかった。その自分と

ぶつかった人物と言うのがこのカヴィルドだったのを水色の髪の毛とカヴィルドの

記憶による証言で思い出した。

「あの時は済まなかったな、俺も急いでたから」

「急いでた? 何か争う様な音がしていたんだが違うのか?」

「ああ、それは魔石絡みだ。魔石を巡って手を出して来る奴が最近は多いから、

そんな奴等にあの路地裏で絡まれて、適当にあしらって逃げた所であんたにぶつかった」

「魔石、か……」


クローディルからの命令もあった魔石と言う物は自分でも見た事が無い。クローディル曰く

魔石は黒光りしている小さな石らしいが、1個でもとんでも無い魔力が含まれているらしい。

「その魔石と引き換えにされているんだよな、ルディスは……」

「まるで物扱いだな。だけど俺のメンバーにまで手を出して来るなんてこっちも黙ってられない」

憤る盗賊団のリーダーと副リーダーを見ながら、その仲間の武器商人がこんな提案を。

「とにかくその誘拐犯を闇雲に探し回っても何も進展なんて無い筈だ。僕は武器商人の

溜まり場があるからそこで同業者伝いにそんな奴等を見かけなかったかを情報収集してみる」


その提案にはセバクターも手を挙げた。

「俺はあんたを1人で行かせる訳にはいかないからあんたに着いて行く。それからその

武器商人達の集う場所だけで無く冒険者ギルドも回ってみるとしよう」

「ああ分かった。そっちは2人でその地図に書いてある取り引き場所の様子を探って来てくれ。

けど、ルディス君を助けられそうとかって言う話になっても先走っちゃ駄目だよ。無闇に突っ込んで

失敗したら僕等の計画が全ておじゃんになっちゃうんだから」

「分かってるさ……」

先走りそうな2人に釘を刺したライウンはセバクターと共に、帝都での聞き込みをする事になった。


一方のシーディトとカヴィルドも、手紙に書かれていた地図に従ってその取り引き場所と

思われるアジトへと向かう為に自分達のアジトへ戻って準備をしていた。

「本当にそいつ等、取り引きに応じてくれるんだろうか?」

「応じてくれなかったら全員ぶっ潰す、それだけだ。だが……今回は何時もの様に

なるべく面倒な事にならない様には出来ないかもしれない。気を引き締めよう」

カヴィルドの不安そうな問いかけに淡々と準備をしながらシーディトが答え、残りの

2人よりも一足先に取り引き場所へと馬を走らせるのであった。


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