A Solitary Battle第4話
「幾つか聞きたいんだが良いか?」
「僕の事? まぁ答えられる範囲でなら良いよ」
と言う訳でセバクターはイレインに質問をし出した。
「単刀直入に聞くが、ヴァーンイレスの騎士団に居たのか?」
その問い掛けには、ほぼ間髪入れずにイレインが首を縦に振って答えた。
「そうだよ。まぁさっきも言ったけど国が滅亡したら他の仕事を探すしか
無いよね。僕は戦う事でしかお金の稼ぎ方を知らない人間だったから、こうして
細々と傭兵家業を続けているんだけど」
若干自嘲する様に、その騎士団に居たと言う事実を認めるイレイン。
そんなイレインを見ながらセバクターは次の質問をする。
「それから……今のこっちの情勢とかは大丈夫なのか? 戦争が終わったとは言え、
まだその残党がくすぶっていたりとかそう言う事は無いのか?」
その質問にはイレインもあごに手を当てて考える。
「あー……そうだなぁ、戦争が終わって実を言えばまだ3ヶ月位だから、くすぶっていると
言えばくすぶっている。だけどそこまで心配する程でも無いさ。それにさっき僕と手合わせ
した時に見せてくれた君位のテクニックがあれば大丈夫だと思うよ」
次の質問はこれだ。
「あんたの武器はその短剣の様だが、騎士団に居たと言う事は他にも武器が使えるのか?」
そう問われて、イレインは自分の腰に取り付けられている短剣を一瞥(いちべつ)してから
こくりと小さく頷いた。
「大体何処の騎士団でもそうだとは思うんだけど、ヴァーンイレスの騎士団でも同じだったよ。
基本的には短剣だけじゃなくて普通のロングソードもそうだし、ロングボウにショートボウ、槍に
斧にハルバード、そして体術も勉強する。その中で僕は1番剣術の成績が良かったからこうして
短剣を使っているのさ。それから一定以上の魔力がある者は魔術のクラスもあるからね」
そう言って、今度はイレインが逆に問いかける。
「逆に聞くけど、君は何が使えるのかな?」
セバクターはその問い掛けにこう答えた。
「俺はロングソードが1番使い易いけど、あんたと同じ様に槍とか弓の特訓もした事はある。
だけど俺の家では1番使い易い武器の特訓を重点的にさせる方針だったから、ロングソードの
特訓を集中的にさせられた。それと武器が無くなった時の為に体術の特訓も結構した」
「そうなんだ。僕とは似てる様でかなり違うね」
「まぁ、そんな所だな」
そしてセバクターからイレインへの最後の質問はこれだった。
「これで最後だが、今あんたはフリーなのか?」
「それって、僕を傭兵として雇いたいって事?」
ほぼ確信した様に問いかけるイレインに、セバクターは先程のイレインと同じ様に
間髪入れるか入れないか位のタイミングで首を縦に振る。
「ああ」
そんなセバクターにイレインが出した答えとは……。
「成る程、そっちの言い分は分かった」
そこで一旦言葉を切ったイレインは、次の瞬間両手を胸の前でクロスさせる。
「……が、答えはNOだ。あいにく僕は今暇じゃないんだよ。他の依頼主との約束があるからね。
まぁこれも傭兵のルール。誰につくかは条件次第って所だよ」
「そう、か……」
自分も傭兵だからその辺りのルールは分からないでも無いので、素直にここは退く事にする。
「ならここであんたと俺はお別れだな」
「そうだね。こっちの地方も色々と楽しいからたっぷり楽しむと良い。元気でやれよ」
お互いにギュッと握手をして別れる事で、セバクターはこの地方での活動をこれから本格的に
スタートさせる事になるのであった。