A Solitary Battle第3部第3話


……の筈だったのだが自分は傭兵である事、それからこの神殿に

来たのは自分も同じ目的である事、そして良ければ一緒に手を

組まないかと持ちかけたセバクターに、見慣れない武器らしき物を

持っている男が飄々とした口調で驚きの言葉を口にする。

「嘘はいけないよ、君」

「……何?」

「君さぁ、帝国騎士団の人間でしょ? 僕はその辺りの事情には精通

してるんだよ。特に君は傭兵として帝都で有名になったばかりじゃないか。

そっちは僕の事を知らないみたいだけど、この前の邸宅で腐った騎士団員を

一掃したメンバーの中に君も居たって話だって僕は知っているんだ」


何だこいつは、とセバクターは思わずその表情が顔に出てしまう。自分の

正体をすっぱりと言い当てられただけで無く、この前の事件……自分が帝国

騎士団へと入団する切っ掛けになったあの邸宅での事件の事までずばっとこの男は

自信たっぷりに言い放ったのである。

「これでもまだ僕達に協力するの? 本当はそうやって傭兵じゃ無くなったのに傭兵だと

言い張って僕達に接近して、そしてあわよくば捕まえる気だったんでしょ? そんな体裁に

僕は騙されないよ。いけないなぁ……姑息な手段を使おうなんてさ」


そこまで言われて黙っていられるセバクターでも無い。自分の正体を知られたからには

神殿への不法侵入としてこの4人を捕まえたい所だ。

「……あんた達を全員逮捕する。抵抗するのであれば容赦はしない」

ロングソードの切っ先を4人に向けるが、そんなセバクターの言葉にも全く動じる様子が

4人には無い。

「だってさ、どうするよ?」

「だったらやるべき事は1つ!! せーのっ!!」

ハルバードの男に4人組のリーダーらしい男が問いかけられ、その男が何らかの号令を出す。

その反応にセバクターは思わず身構えたが……。


「うっしゃ、逃げろっ!!」

一目散に走り出した4人組にセバクターは一瞬反応が遅れてしまうが、それでもギリギリで

ロングボウとクロスボウを手に持っている背が低い男の襟首を掴んで引き寄せる事に成功した。

「うおわっ!?」

引き寄せられた男も咄嗟に振り向くとパンチやキックを繰り出して来るが、どうやら接近戦は

苦手の様でそのどれもが大振りだ。

(隙だらけだ)

心の中でそう思える位の余裕がある男の攻撃をヒョイヒョイとかわし、大降りのパンチをしゃがんで

かわしてそこから足払いをかけて男を転倒させた。

「ぬあ!」


転倒した事により男の懐から小さな麻袋が飛び出して、それを素早くセバクターが

拾い上げる。その拾い上げた袋にセバクターが注目している間に男はすぐに

立ち上がって逃げて行ってしまったが、セバクターはその袋の中身を確認する事が先決だった。

……のだが、セバクターはその袋の中身を見て愕然とした表情になる。

(これは……)

その中身はこの神殿の中から盗み出されようとしていた小物ばかりであり、お目当ての魔石では

無かった。魔石はものの見事に神殿から無くなってしまっており、セバクターは急いで神殿の外へと

さっきの4人組を追いかける為に走り出して行った。


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