A Solitary Battle第3部第2話
事前に情報を流していたと言うその神殿がギリギリ見えるか見えないか
位にある場所で、セバクターはその神殿を見張りながら小さなテントを
張って野営をしていた。術を組んでから設計して貰った望遠鏡のおかげで、
夜でも暗視スコープの様に人影を感知出来る様に待機している。これで
何時怪しい人影が神殿に入っても安心だ。
(本当に来るかどうかは分からんが)
見張りの為野営の焚き火もせずにその望遠鏡を構えつつパンを頬張るセバクター
だったが、そのパンが2個目の半分まで来た時に望遠鏡の先で何かが動いた。
(ん?)
望遠鏡をズームアップする為にクルクルと回すと、神殿に幾つかの人影が素早い
動きで入って行くのが目に見えた。
(あれは……?)
明らかにこんな夜中に神殿に、しかもあんなに素早い動きで入って行くなんて
どう見ても観光客でも何でも無さそうだ。セバクターはそのままパンを半ば強引に
口の中へと押し込んで噛み砕きながらロングソードを携えて神殿へと早足で向かった。
口の中のパンを全て飲み込んだ時にはセバクターは神殿の入り口に立っており、
中からは確かに人の気配がする。
(油断大敵、多勢に無勢だ)
腰のロングソードを引き抜いてなるべく音を立てない様にして、神殿の中へと
入って行くセバクターだったが薄暗くて中が良く見えない。
仕方が無いので持って来て置いたランプに火を点してそのまま進んで行くと、何やら
奥の方から話し声が聞こえて来る。
(……?)
恐らくはさっきの人影の正体であろう人物達の話し声だろう。そしてこんな奥にまで
来ていると言う事は十中八九、古代兵器や魔石を盗み出す計画らしいのが
ありありと分かる。
セバクターはロングソードの感触を確かめてギュッと柄を握り、その話し声が聞こえる
部屋の中へと足を踏み入れる。
「……誰だ!?」
驚きの声が話し声が中断されて上がる。中に居るのは全部で4人だ。
声を上げたのは紫の跳ね気味の髪の毛に長い斧を持っている男。それからその男より
若干背が高くて胸の辺りまで伸びた黒髪が特徴的なハルバードを手に持つ男。
更に背中にはロングボウ、手にはクロスボウを持っている、メンバーの中では1番
背が低い水色の髪の毛の目つきが若干悪い男に、背中に大きな筒状の
武器らしき物を背負い、手にはこれまたセバクターが見た事の無い武器らしき物を
持っているオレンジ色の髪の毛をしている男の4人だった。
「何だぁ、あんたは?」
ハルバードの男がそう問い掛けて来たので、セバクターは事前に作り上げたシナリオ通り
傭兵として彼等に接する事を決めた。