A Solitary Battle第2部第16話(最終話)


発見した物とは屋上に設置されている転落防止用の柵。セバクターは

その柵にある事をする為に何とか立ち上がり、猛スピードでダッシュする。

(あそこにこれを……!!)

そうしてワイバーンのスピードがまだ遅い内に先に柵まで辿り着いた

セバクターは、そのロープの端をグルグルと柵に縛り付ける。幾らワイバーンとは

言えども柵まで一緒に持って行ける程のパワーは無い。

そしてロープは意外ともろいものであり、ワイバーンがその柵に括り付けられた

ロープを力任せに引っ張ろうとしても屋根に埋め込まれている柵がそれをさせない。

それにそんな事をしよう物なら……。


次の瞬間ブチッと言う嫌な音と共にワイバーンの身体側からロープが切れてしまい、

ワイバーンの背中では無くまだロープにぶら下がったままのルクレスは重力に従って

そのまま落下して行く。

「な……っ!?」

しかもルクレスが落下したポイントは運悪く、屋根の上で無く鋭利な先端が特徴的な、

邸宅への侵入者を防止する為の鉄柵の真上だった……。

「ぬああああ……げはっ!?」


空中で回転して仰向けに落下したルクレスはそのまま鉄柵に突き刺さり、胸と腹を

串刺しに貫かれてそのまま息絶えたのであった。

そんなルクレスをセバクターは屋根の上から見下ろしながら、胸につけたままであった

勲章を取って彼の上に投げ捨てる。

「これは返すぜ」

それだけ言い残してセバクターは屋上から邸宅の中へと戻り、残党の始末の為に

加勢しに向かうのであった。


結果的に主犯格2人がどちらも死亡と言う結果になり、他の手下達も逮捕されたり

死亡したりと言う事になったものの無事に事件は解決で幕を閉じた。

「良くやってくれた、腐った騎士団員を全て退治出来て助かったぞ」

「こちらこそ」

セバクターとクローディルはがっちりと握手を交わしたが、クローディルはセバクターに

持ち掛けたい話があった。

「ところで、次の仕事は決まっているのか?」

「ん? ああ、まだ傭兵家業を続けたいと思っているが」


クローディルが持ち掛けたいその話とは……。

「今回は帝国騎士団を敵に回した事件だったんだが、もし良ければこのエスヴァリーク

帝国騎士団に永久就職しないか?」

「へっ?」

まさかの提案にセバクターは素っ頓狂な声を上げたが、それに構わずクローディルは続ける。

「あんたの活躍はなかなかの物だ。今回の事件でもそれを実感したし、手合わせの時だって

俺と互角以上に戦うだけの強さを見せた。もしあんたが良ければ、だが」

「ふむ……」


セバクターはあごに手を当てて考え、1つの結論に辿り着いた。

「俺も何時までも根無し草と言う訳には行かない……傭兵家業もそろそろ潮時かな。

こんな俺の腕を買ってくれると言うのであれば、頑張って勤めさせて貰おう」

「そうか、仲間になるか!! あんたみたいな腕の立つ奴が入ってくれればこっちも歓迎する。

この腐った奴等は抜けてしまったから、そいつ等の代わりにしっかり働いてくれよ」

「ああ、そうだな」

ここにこの瞬間、また1人のエスヴァリーク帝国騎士団員が誕生した瞬間だった。



第2部 



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