A Solitary Battle第2部第15話


セバクターは逃げて行くルクレスに何とか何とか着いて行きながらも、結局

最後は屋上までやって来てしまった。

「傭兵って言うのは金で動く人種だとは思っていたけど、幾ら積まれたんだい?」

穏やかな口調で、しかし凄く傭兵を馬鹿にした口調でルクレスがそう

言って来るのにセバクターは無表情で答える。

「そんな事どうでも良いだろう。俺の依頼主はあんたじゃなくて下で戦っている

奴だ。そしてこれもその依頼主からの命令なんでな。大人しく投降すれば良いが、

抵抗すると言うのであればそれなりの対応は取らせて貰うぞ」


そう言われたルクレスは黙って腰から自分の武器として使っているサーベルを

引き抜いて構える。

「そっちがその気なら……」

セバクターもロングソードをゆっくりと目前で構えつつ、相手の出方を探る。

そうして何時もの如く、先に動いたのはルクレスの方であった。

「ふっ!」

サーベルとロングソードの打ち合いが始まるが、サーベルはロングソードと見た目こそ

似ている物もあれど、ルクレスが使うのは刀身が大きく湾曲している……つまり

曲がっているサーベルであり、これこそがサーベルの大きな特徴なのだ。


だからこそ下手に当ててしまえばサーベルの方が曲がっているのでロングソードの刃が

滑りやすく、それによって体勢も一緒に崩れてしまいやすい。実際にサーベル使いを

相手にするのはセバクターも初めてと言う訳では無いのだが、今の相手は帝国騎士

団員であるが為に全く油断が出来ない相手だ。

「しゃっ!」

しかもルクレスはサーベルの他にもハイキックや回し蹴り等の蹴り技も結構豊富で、

なかなか身軽な戦い方をするので、自分の方も傭兵として騎士団の剣術とは

また違った剣術スタイルを持つセバクターでもやりにくい相手である。


そうして下段回し蹴りをルクレスが放ち、それをセバクターはジャンプで回避したが

ルクレスはその下段回し蹴りの勢いを利用してそのまま上段回し蹴りへと繋げて来た。

その上段回し蹴りはセバクターの側頭部にクリーンヒット。

「うご!?」

頭に強い衝撃を受けたセバクターはそれによってふらついて倒れ、その間にルクレスは

指笛を思いっ切り吹いた。

すると空からバサバサと何かがはためく音がセバクターの耳にも聞こえて来た。

(あ、あれは……)


空から現れたのはくすんだ白い身体をしている小さめのワイバーン。そのワイバーンの

身体にはロープが巻きついており、それが丁度ルクレスの手の届く位置にあった。

「さらばだ、勇敢な傭兵よ!!」

そう言い残してルクレスはロープを掴んで上へと上って行き、そのままもう1度指笛を

吹いてワイバーンに出発の指示を出す。

だがここまで来たら絶対に逃がす訳には行かないので、頭の痛みを抑えながらも

セバクターはロングソードを投げ捨てて走り出し、飛び去ろうとしている彼のワイバーンに

巻きついているロープの端に飛びついた!!

(ここまで来たら絶対に逃がすか!! 地の果てまでも追いかける!!)

だがセバクターはロープに引きずられつつ、ある物を目の前に発見した!!


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