A Solitary Battle第3話


最初に動いたのは手合わせを持ち掛けて来た言いだしっぺのイレインだった。

(やはりそうか……)

ある程度予想がついていたが、この男はやはりスピードタイプらしい。

身軽さ重視の短剣の利点を上手く活かした戦い方。リーチだけ見るのであれば

ロングソードのセバクターが有利である事は絶対なのだが。懐に飛び込まれると

逆に厄介である。懐に飛び込まれてしまえばロングソードのリーチは利点では無く、

それどころか大きなウィークポイントになってしまう。


(下手に飛び込まれると厄介だな)

なのでなるべく距離を取る様にして、ロングソードなりの戦い方をしようとセバクターは

間合いに注意してイレインを迎え撃つ。

イレインもイレインでただ単に突いたり薙ぎ払ったりと言う様な直線的な攻撃では無く、

自分の身体をクルクルと回転させてその軌道上で短剣を振るう。

だからセバクターも間合いを取りつつ短剣を受け流し、時にはロングソードのみならず

ミドルキックやハイキック等も織り交ぜた戦い方をしなければならない。

「ふっ、ほっ!」

スタイルの違う2人のバトルは1人のギャラリーも居ないが、もしギャラリーが居るので

あればそのギャラリーが息を呑む様な攻防が続く。


(剣の使いに関してはそれなりの腕があるみたいだな。僕は軽めにやっているつもり

だけど、それでもなかなかやるじゃないか)

イレインは武器を交えてセバクターのテクニックをそう判断した。

(本気で戦えばどれ位になるんだ? こいつの腕は)

セバクターの方はイレインの本気を何時か見てみたいと思う様になっていた。

そうしてある程度武器を交え、お互いの息が上がって来た所で手合わせは終了となった。

「はぁ、はぁ、はぁ……成る程ね、流石に他の地方からやって来るだけあってなかなかの物だよ。

傭兵生活はどれ位になるの?」

「5年だ」

「ああそう、結構長いね」


セバクターはそんなイレインに逆に問いかける。

「あんたは?」

「僕? 僕は今年で2年目」

「そうなのか?」

てっきり自分より傭兵経験があるものだと思っていたセバクターは若干驚いたのだが、更に、

衝撃の事実がイレインの口から漏れ出した。

「僕は2年前にヴァーンイレス王国が滅んでから傭兵になったんだ。だからまだ駆け出し」


その告白にセバクターの顔がまた驚きの表情になる。

「……騎士だったのか?」

「そう言う事だ」

何とこのイレインと言う男は只者では無さそうである。

ヴァーンイレス王国の元騎士と言うだけあって、今の手合わせの腕も納得出来るのだが

他にもイレインと同じ様に騎士から傭兵になった人物とかが居るのだろうか? そしてそれ以外にも

イレインに色々聞きたい事が出来たセバクターは質問を幾つかしてみる事にした。


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