A Solitary Battle第2部第10話
「俺達は騎士団の不正を暴いたり不穏分子を排除する為に帝国から
送り込まれている特殊部隊の人間でな。俺が隊長のフォン・クローディルだ」
フルネームを名乗りつつ、クローディルはガサゴソとズボンのポケットから
身分証明書を取り出した。
「それが証拠だ。それでももしまだ俺達を疑っているんだったら騎士団の
本部に連れて行っても良いんだがな」
「……いや、結構」
ここまでされてしまったらセバクターも信じるしか無くなってしまったので、騎士団に
連れて行くと言うその申し出を丁寧に断る。
「それで、俺に協力して貰いたい事はこの書類やら手帳やらに書かれている
奴等を捕まえる事だって言う訳か」
依頼内容を予測していたセバクターがそう言うと、クローディルは大きくうなずく。
「ああ、腐った騎士団員を全て排除する為に俺達が送り込まれたんだ。今目星を
つけている団員がしているのは麻薬の取り引きなんだが、この前のこいつがしていた
取り引きは囮だったんだ。それをあんたに見られてしまって取り引き相手があんたを
殺す為に動き出したから仕方なくこのニーヴァスも動いたと言う訳だ。そしてその後に
騎士団の連中に捕まった訳だが、脱走して来た……そうだろう、ニーヴァス?」
話を振られたニーヴァスもクローディルと同じ様に大きくうなずいた。
「ああ。しかし……貴様の実力は大した物だ。まさか僕が気絶させられるとはな。
だけど土地勘は無さそうに見える。この帝国に来たのはつい最近だろう?」
「帝国に来たのはこの間、帝都に来たのは数日前だ」
その発言にニーヴァスは納得した様に腕を組んだ。
「やはりな。何処と無く土地勘が無さそうな雰囲気がする。実はそっちの方が
都合が良い。特にこう言った隠密行動の任務では余り顔が知られていると逆に
行動しにくいからな。だから貴様に頼もうと思ったのだ。今まで受けた任務も
こちらで調べさせて貰ったが、もしこの任務を達成出来た暁にはそれ等の
依頼とは比べ物にならない位の金額を出させて貰おう」
ニーヴァスのその提案に、セバクターは金とはまた別の感情が自分の中から
ふつふつと湧き出ているのに気が付いた。
「金は当分の間生活していけるだけで良い。だがそれよりも、俺はそんな
奴等から勲章を貰っていたのかと思うと吐き気がする。だったらそいつ等を
徹底的に潰す。それだけが俺の今の望みだ」
「交渉成立だな」
セバクターはクローディルが差し出した手をがっちりと掴んで握手を交わし、自分の
武器であるロングソードも返して貰った。
「で、あんた等はそいつ等を一網打尽にする様な作戦とかは考えているのか?」
そう聞いたセバクターに対してニーヴァスが肯定の返事をした。
「当然だ。次が最後のチャンスだと考えて僕達は行動している。今回は貴様にも
協力して貰うから失敗は許されない。じっくりとその内容を頭の中に叩き込んで貰うぞ」
真剣な眼差しでニーヴァスにそう言われたセバクターも自然と引き締まった表情になり、
その作戦の内容をここに居るメンバー達から聞かせて貰う事になるのであった。