A Solitary Battle第2部第9話


完全にはめられる形になってしまったセバクターがクローディルと

白髪の男に連れて来られたのは、路地を抜けた先にある廃墟の

様にボロボロな建物の2階だった。こう言う場所を見ると、セバクターの

脳裏にあのイクバルトの町で気絶させられて連れて行かれたあの

倉庫の様な場所が脳裏にフラッシュバックして来た。

腰のロングソードは白髪の男に没収されてしまい、今は完全に丸腰である。

更に手も後ろ手に縛られて足も座らされた椅子の足にロープで固定されて

しまったので身動きが取れない状況になっているのであった。


「何故俺をここに連れて来た? 復讐か?」

取り引きを御釈迦にされてしまった事で復讐しようと企んだのか? とその本人が

自分をここまで連れて来た男2人に問いただす。見た所、クローディルと

白髪の男の他には数人の仲間が居る様だ。

だが、クローディルはセバクターにとっては凄く意外な事を言い出した。

「復讐? 俺らが企んでいる事はそんなもんじゃない。俺等が復讐したいのは

あんたの胸にぶら下がっているその勲章を授けた相手さ」

「は?」


この勲章を自分に授けた相手……となればまさか、とセバクターは目を見開く。

「騎士団の……」

「そうだ!! あんたは何も知らないくせに、俺等の計画を邪魔してくれたんだよ。

だからその計画の手伝いをして貰うぜ」

「計画だと?」

そう聞き返すと、クローディルは指をパチンと鳴らして部下達に大量の書類や手帳を

持って来させる。

「これは?」

テーブルの上にドサドサと置かれたそれ等を見て訝しげにセバクターが尋ねると、

クローディルは白髪の男に命じる。

「ニーヴァス、こいつの手と足を解け」


白髪の男の名前はニーヴァスと言うらしく、そのニーヴァスがセバクターの手と足のロープを

ナイフで解いてようやく自由になれた。

「話すよりこれ等を読んで貰った方が早い。全部読めとは言わないけど、少し読んだだけでも

この国の中身がどれだけ腐っているのかと言う事位は分かって貰える筈だ」

ニーヴァスがナイフを懐にしまいながらセバクターにそう言い、言われたセバクターは疑いの眼差しを

抑え切れないながらもそのテーブルの上に置かれた大量の書類の1つに目を通し始めた。

そしてその書類を皮切りにして次々と手帳や別の書類を読み進めて行くセバクターの顔に、

見る見る驚きの表情が浮かび上がって来るのにさほど時間は掛からなかった。

「これは本当か?」


まだ心の何処かで疑いの気持ちが残っているセバクターだったが、妄想や想像だけでこんなに

細かく日時や場所、そして取り引きしている物の詳細まで書くのは難しいと言う位の事実が

目を通した書類や手帳に記載されていたのだ。

「ああ、だからこの依頼をギルドに出す訳には行かなかった。いや、出せる訳が無かったんだ。

俺等がこんな事をしているなんてこの国の騎士団に知られたら最後、俺等の居場所どころか

命まで無くなってしまう事になるからな。だから傭兵として活動していて、そしてこの国に来た

ばかりであろうあんたにこの依頼を頼みたかったのさ」

そしてクローディルは真剣な眼差しで、手荒な真似をしてまで自分がここまでセバクターを

連れて来たその理由を話し始めた。


A Solitary Battle第2部第10話へ

HPGサイドへ戻る