A Solitary Battle第2部第8話


あの白髪の男を今度は取り逃がしてしまった事で何処か悔しい思いを

しながらセバクターは冒険者ギルドへとやって来て、再び帝都の中での

依頼を物色していた。

(今日は配達系じゃない奴をやってみるとするか)

何にしようかな、と依頼の紙を見ながら回っているセバクターだったが、

そんな彼に1人の男が話し掛けて来た。

「おい、ちょっと良いか?」

「ん?」


声が掛かって来た方に振り向いてみると、そこには無造作に跳ねさせた

金の髪の毛が特徴的な、若干自分より背が低い男の姿が。

そして背中には大きな剣を携えているので、これが彼の武器になっているのであろう。

「あんた、セバクターとか言う傭兵だな?」

「ああそうだが……あんたは?」

自分の名前が帝都でも知られる様になってきたのだろうか? とセバクターは

考えながらその男に問いかける。


すると男は自分の事をこう名乗った。

「俺はクローディルって言うんだが、あんたの腕を見込んで頼みたい事がある。ギルドにも

まだ出していない極秘の依頼なんだ。この帝都でしか出来ない事でもあるからな。

引き受けてくれるのなら俺の家でもっと詳しい事を話したいんだが、どうする?」

クローディルと名乗った男の顔と目を見る限り、何か企んでいる様には見えない様だ。

「……依頼の内容にもよるがな……俺にしか出来ない様な依頼なのか?それは」

「ああ、そうだ」

間髪入れずにそう言い切ったクローディルに、セバクターは依頼の内容を確認してから

受けるかどうかを決めるとの条件をつけて彼の家へと向かう事にした。


そうしてトコトコとクローディルの後についてその彼の家へと向かっていたのだが、

何だか大通りから離れた場所で、しかも路地をどんどん奥へと入って行く。

「この先なのか、あんたの家は?」

「ああそうだ。俺は騒がしいのはどうも苦手でね」

しれっとそう言うクローディルだったが、そんな彼の後姿を見ながらセバクターはどんどん

不安感が大きくなって行く。

(何か、凄く嫌な予感がする……)

その気持ちがどんどん強くなって来たセバクターはクローディルに気が付かれない様に

歩みを少しずつ遅めて行き、ある程度距離が開いたら一目散にダッシュで

逃げ出そうと言う作戦だった。


だが、そうは問屋が卸してくれなかった様だ。

歩みを遅めて行って少し距離が開いた所で逃げ出そうと足に力を込めつつ後ろを

振り返ったのであったが、迂闊にも後ろにも人影があった事にセバクターは全く

気が付いて無かったのである。

更にその後ろに居た人影と言うのが、セバクターにとっては驚愕の人物であった。

「何処に行くつもりだ?」

その人影は何と昨日自分がここと同じ様な路地で戦った相手であり、そして

ギルドへ向かう前に回し蹴りをかわされたあの白髪の男であったのだ!!


その男は逃げ出そうとしたセバクターに、昨日のお返しの意味も

込められているかの様に槍の先端をセバクターの喉元へと突きつけている。

そんな状況になってしまったセバクターの後ろから、全く雰囲気の違う

クローディルの声が掛かった。

「妙な真似をしないで大人しく俺達に着いて来るんだな。さもなくば……殺す」

大剣をセバクターの背中に突きつけながらそう言うクローディルに、セバクターは

成す術も無く身動きも取れずに指示通り大人しく着いて行くしか無かった。


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